胃がんの検診と検査方法-40歳からは年に1回受診しよう

患者さんの苦痛を軽減する検査法の開発が進んでいる

胃がんの死亡者数は年々減少傾向にあるとはいえ、今もなお日本人に多いがんです。予防と早期発見が決め手。

胃がんの現状

 胃がんは、胃の内側の粘膜から発生する悪性腫瘍で、世界的にみて日本人に非常に多いがんです。そのことにより日本の胃がん研究が進み、診断レベルと治療成績の向上は大変進んでいるといえます。
 国立がん研究センターがん対策情報センターの「最新がん統計」によると、わが国での生涯で胃がんにかかるリスク(2005年データ)は、男性で9人に1人、女性で18人に1人、胃がんで死亡するリスク(2009年データ)は、男性で24人に1人、女性で51人に1人と発表されています。
 早期診断と治療法の進歩により、胃がんによる死亡数は年々減少していますが、部位別死亡数では男女とも肺がんに次いで第2位。今もなお、死亡者数の多いがんです。

胃がんの危険因子

 胃がんを発症する危険因子として、胃粘膜を荒らすヘリコバクターピロリ菌の感染や塩分の取りすぎ、胃粘膜のがん化を促進するたばこがわかっています。
 ヘリコバクターピロリ菌については、幼児期にヘリコバクターピロリ菌に感染した人が持続感染し、高齢になって胃がんを発症すると考えられています。実際に発症する確率は1%以下と少ないのですが、胃がんになった人をみると、ほとんどの人がヘリコバクターピロリ菌に感染していることがわかっています。下の写真右側のようにピロリ菌に感染し、胃炎を起こしていても症状がほとんどありませんので注意してください。
 ヘリコバクターピロリ菌の除菌や生活習慣の改善が胃がん予防につながります。

胃がん検診と主な検査

 初期の胃がんには、特有の症状はありません。定期的に胃がん検診を受けて、早期発見に努めることが大切です。一般的には、男女ともに40歳以上は年に1回、胃がん検診を受けることがすすめられています。
 胃の主な検査方法には、「胃X線検査」「胃内視鏡検査」がありますが、最近は胃がんのリスクを調べる検査として「ペプシノゲン検査」「ヘリコバクターピロリ抗体検査」があります。

●胃X線検査(二重造影法)
 造影剤(バリウム)と発泡剤を飲んで、胃粘膜にコントラストをつけ、粘膜面の異常を見つけるX線撮影検査です。早期胃がんの発見と診断に有用です。

●胃内視鏡検査
 胃粘膜の様子を鮮明に直接観察できるので、小さな病変も発見可能で、その形態や広がり方などを具体的に観察することができます。そのため早期胃がんが見つかりやすくなります。
 また、胃の中を観察するだけでなく、病巣から組織を採取し、顕微鏡で詳しく検査する生検を行うことができます。ヘリコバクターピロリ菌の感染の有無も調べられます。
 ただし、一般的な胃内視鏡検査は、口から内視鏡を挿入する「経口内視鏡検査」であり、嘔吐(おうと)反射が起きやすく、苦手な人も少なくありません。

●経鼻内視鏡検査
 最近では、「経鼻内視鏡検査」が行われることが増えています。経口内視鏡検査に比べ、内視鏡の管が約半分の太さであること、さらに鼻から入るので、舌に触れないため嘔吐反応が起こらず、患者さんの苦痛を軽減できます。
 「経口内視鏡検査」と同様に、胃の中を観察するだけでなく、病巣から組織を採取し、顕微鏡で詳しく検査する生検を行うことができます。
 患者さんは検査中も医師と会話することができるので、モニター画面を見ながら、食道や胃、十二指腸の様子を確認し、質問することも可能です。

●カプセル内視鏡検査
 少し大きめの薬剤のような形のカプセル内視鏡を飲み込むと、消化管内をぜん動運動によって進みながら、1秒間に2枚以上の画像を撮影し、専用のデータレコーダに画像を転送します。約8時間撮影を続けたカプセル内視鏡は、排便時に排出されます(使い捨て)。
 これまで難しいといわれた小腸内部の撮影が可能になり、見つかりにくかった小腸のポリープや潰瘍などの発見が期待されています。
 患者さんの苦痛は軽減できますが、特定の位置の観察は困難で、観察と同時に生検を行うこともできません。ただし、未だ日本では病気が疑われる場合においても、カプセル内視鏡検査が保険適用となっているのは小腸の検査のみで、食道、胃、大腸は適用外です。

●ペプシノゲン検査
 胃がんの発生と関係の深い萎縮性胃炎の有無を調べる血液検査です。ペプシノゲンという消化酵素の量を血液検査によって調べます。ペプシノゲン検査(萎縮性胃炎)の陽性判定の場合は、胃がんになる可能性があるので、定期的な胃がん検診を受けましょう。

●ヘリコバクターピロリ抗体検査
 胃がんの発生と関係の深いヘリコバクターピロリ菌感染の有無を調べる血液・尿検査です。へリコバクターピロリ菌に対して、体内で作られる抗体の量を血液・尿検査によって調べ、基準値に照らし合わせてピロリ菌に感染しているかどうかを調べます。

●血液検査で胃がんのリスク判定―ABC検診
 最近では、胃がんのリスク判定ができるABC検診が進められています。ABC検診とは、「ペプシノゲン検査」と、「ヘリコバクターピロリ抗体検査」を組み合わせたものです。
 この検査でリスクが高いと判断された場合は、内視鏡検査をすすめられます。

(編集・制作 (株)法研)

【監修】
河合 隆先生


東京医科大学教授
東京医科大学病院 内視鏡センター部長
1988年東京医科大学大学院卒業。99年東京医科大学講師、2005年同大学助教授、08年同大学教授に就任。東京医科大学病院内視鏡センター部長を兼務。専門は、食道がん・胃がんの診断と治療。ヘリコバクターピロリ感染症の診断と治療。日本消化器内視鏡学会評議員、日本消化器病学会評議員、日本ヘリコバクター学会評議員、日本胃癌学会評議員、日本消化器内視鏡学会附置経鼻内視鏡研究会世話人など要職兼務。主な著書に『経鼻内視鏡検査導入の手引き』『上部消化管内視鏡挿入・観察のポイント』『鼻から胃カメラde健康チェック―もう痛くない』などがある。

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