大腸がんの検診と検査
食生活の欧米化、運動不足、肥満、喫煙などが影響
男女ともに患者数・死亡者数の多い大腸がん。女性では死亡者数第1位、患者数第2位
(2011年12月06日)
大腸がんの現状
大腸は肛門に近い約20cmの部分を直腸、それ以外を結腸といいます。がんの発生した部位により、結腸がんと直腸がんに分けられます。
国立がん研究センターがん対策情報センターの「最新がん統計」によると、わが国での生涯で大腸がんにかかるリスク(2005年データ)は、男性で12人に1人(臓器別では、結腸と直腸を合わせた大腸がんは、肺がんと並んで2位)、女性で15人に1人(臓器別では、結腸と直腸を合わせた大腸がんは、第2位)。大腸がんで死亡するリスク(2009年データ)は、男性で35人に1人(臓器別では、結腸と直腸を合わせた大腸がんは、第3位)、女性で44人に1人(臓器別では、結腸と直腸を合わせた大腸がんは、第1位)と発表されています。
罹患率をみると、男性では40歳代から、女性では50歳代から急に増えている傾向がみられ、男女ともに増えています。
大腸がんの危険因子
大腸がんは、罹患率・死亡率ともに戦後からずっと増加傾向にありましたが、1990年代をピークに最近では横ばい傾向にあります。戦後の一貫した増加の背景には、食生活の欧米化があると考えられています。
国内外の研究結果などから、現在、大腸がんの危険因子(リスクファクター)として、以下のようなことが挙げられます。
・親やきょうだいなど直系の家族に大腸がんの人がいる
(家族性大腸腺腫症(*1)、遺伝性非ポリポーシス性大腸がん(*2)と呼ばれる大腸がん)
・肥満(特に男性の結腸がんリスクが高まる)
・大量飲酒習慣
・喫煙習慣
・ベーコン・ハム・ソーセージ・サラミなどの加工肉の過剰摂取
・運動不足
(*1)大腸全域に100個以上のポリープ(腺腫)が発生する遺伝性の疾患。放置すれば、がん化すると考えられている
(*2)消化管ポリープをともなわない家族性のがん
大腸がん検診(一次検診)の主な検査
「国民生活基礎調査」によると2010年の大腸がん検診受診率平均は27.4%。前回調査の2007年の27.5%に比べると、ほぼ横ばいです。国の目標である50%にはまだまだ届いていません。
定期検診(集団検診)としての「大腸がん検診」は、40歳以上が対象となり、一般的に便潜血検査が行われます。
●便潜血検査
便に血液が混在していないかを調べることで、大腸や小腸など出血をともなう病変(悪性・良性)の有無を調べる検査です。現在、大腸がんのスクリーニング(一次検診)として、広く用いられています。
大腸がんによる出血は持続するとは限らないので、2日間分採便する「2日法」を用いることが多くなっています。
日常生活でも、便の自己チェックは役立ちます。便に鮮血が付着しているときは、S状結腸(大腸下部)や直腸のがん、あるいは痔(ぢ)などが疑われます。赤黒い血が混じっているときは、大腸でも口側(小腸に近い部分)のがん、黒いタール状の便では食道や胃といった上部消化管のがんなどが疑われます。
精密検査(二次検診)の主な検査
大腸がん検診(一次検診)で大腸がんの可能性が疑われると、精密検査(二次検診)が必要になり、主に下記のような内視鏡検査や画像検査で、出血の箇所を特定します。
【内視鏡検査】
●大腸内視鏡検査
大腸の内部を観察する検査です。ライトのついた内視鏡という細い管(ファイバースコープともいう)を、肛門から大腸に挿入して観察します。
大腸内をきれいにするため、事前に専用の下剤を服用し、腸内の便を排出しておきます。患者さんの苦痛や不安を解消する目的で、全身麻酔下で行われることもあります。

【病理検査】
●大腸内視鏡検査における生検
大腸内視鏡検査では、観察だけでなく、がん(腫瘍)やポリープが見つかった場合には、そこから直接細胞を採取(生検)し、顕微鏡で詳しく調べます。
【画像検査】
下記のような画像検査を行って出血や異常の起きている箇所を確定したり、臨床病期(がんの進行状態、拡がり具合)などを総合的に判断します。
●注腸造影検査(下部消化管X線検査)
注腸造影検査はバリウムを大腸内に注入し、X線撮影を行う検査です。現在では、大腸内視鏡検査が主流で、注腸造影検査はあまり行われませんが、腹部に癒着があって内視鏡が盲腸まで届かないなど、大腸内視鏡検査が困難な場合に行われることもあります。
●腹部超音波検査(腹部エコー検査)
プローブという装置を直接腹部体表に当て、超音波を当てて体内の臓器などから反射してきた超音波を検出して映像化する検査です。
とくに、大腸がんが転移しやすい肝臓などに転移がないかを調べる検査です。
●CT検査
コンピューター断層撮影検査ともいいます。X線を身体の外周から照射して、組織のX線吸収量をコンピューターで体内の断層像(輪切り像)として描き出す検査です。
主に、大腸がんの肝転移や肺転移、骨盤内の浸潤程度を調べるときに用います。
●MRI検査
磁気共鳴画像検査ともいいます。体に強い電磁波を作用させて、電子が共鳴して放出したエネルギーをコンピューターで画像化する検査です。
主に、大腸の近くにある膀胱や子宮、仙骨などにがん転移していないかを調べるときに用います。頭部あるいは骨への転移の有無を調べるときにも用います。
●骨シンチグラム検査(アイソトープ検査)
骨への転移の有無を調べる検査法です。ごく微量のアイソトープ(放射性同位元素)を血液内に注入し、それが組織に集積する様子をガンマ線カメラで撮影します。骨折や炎症、がんの転移などで、骨の再生が活発に起きている箇所にアイソトープが集積します。
最近では、下記のPET/CT検査が増えてきたことから、骨シンチグラム検査が行われるケースは少なくなっています。
●PET/CT検査
PETとは、がん細胞が増殖する際に糖の分解(代謝)が活発になることを利用した検査です。がんの存在、リンパ節転移の有無などの診断に用いられます。これに、CTの画像を同時に合わせると、より精度の高い画像が得られます。
また、デジタルデータ化されるので、さまざまな角度の断面を描出することが可能で、目的に応じた画面を観察することができます。
渡邊昌彦先生
北里大学医学部外科学 教授
1979年慶應義塾大学医学部卒業後、慶應義塾大学病院、国立がん研究センター、東京電力病院、米国ワシントン州立大学勤務を経て、1992年慶應義塾大学医学部助手、2000年同講師に就任。03年北里大学医学部外科教授就任、07年からは北里研究所付属病院内視鏡手術センター長併任。大腸疾患の中でも大腸がんの診断・治療、特に内視鏡外科手術を専門としている。日本外科学会指導医・専門医、日本消化器外科学会指導医・専門医、日本大腸肛門病学会指導医・専門医、日本内視鏡外科学会技術認定医の他、主要学会要職を兼務。

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