子宮頸がんの基礎知識 主な検査方法|原因や予防ワクチンについて

20歳代・30歳代に急増している子宮頸がん。予防が決め手

原因はHPV感染。予防ワクチンの接種と定期的な子宮頸がんの検診で確実な予防が可能に

子宮頸がんの現状と子宮頸がんの原因

 多くのがんが40歳代頃から患者数が増えるのに比べ、子宮頸がんは20歳代後半から急増するのが特徴で、30歳代後半でピークを迎えます。

 国立がん研究センターがん対策情報センターの「最新がん統計」によると、日本では1年間に約16,000人の女性が子宮頸がんにかかり、1年間で3,500人の女性が子宮頸がんで亡くなっていると推測されています。
 また、生涯で子宮頸がんにかかるリスクは、女性94人に1人。子宮頸がんで死亡するリスクは、女性344人に1人と発表されています。

 子宮頸がんは、ハイリスク型HPV(ヒト・パピローマ・ウイルス)の持続感染が原因であることが明らかになっています。ハイリスク型HPV(HPV)は、「いぼ」をつくる一般的なウイルスで、性交により女性の約80%はHPVに一時的に感染するといわれています。しかし、感染してもそのうち約90%は、ヒトの自己免疫の働きで消滅してしまい、ごく一部が感染したまま病変が進行し、5年以上かけてがん化すると考えられています。喫煙は病変を進めます。

子宮頸がんの予防ワクチン

 子宮頸がんは、がんの中でも、ワクチンの接種によって予防が可能な唯一のがんです。日本では2009年に、15種類あるハイリスク型HPVのうちHPV16型と18型に対応する予防ワクチンが承認され、医療機関での接種が始まりました。2011年には良性腫瘍であるコンジローマの原因となるHPV6型・11型の感染予防ワクチンを加えた4価ワクチンも承認されました。

 これらのワクチンは治療ワクチンではなく、HPV感染を予防するワクチンであるため、性交を経験する前にワクチンを接種するほうが効果的です。そのため、日本産婦人科医会や日本産科婦人科学会などは11~14歳の女子への優先的な接種を勧めてきました。承認当初の2009年には、接種を希望する人の全額自己負担でしたが、その後費用を助成する自治体が増え、2011年には国と自治体の全額費用負担により、接種を希望する中学1年生から高校1年生の女子に無料接種が行われています。
 もちろん、ワクチン接種の推奨年齢を超えても子宮頸がん予防効果はあり、10歳代は約70%、20歳代は約60~65%、30歳代は約50%の予防効果があるといわれています。

子宮頸がん検診(一次検診)の主な検査

 子宮頸がんをより確実に予防するには、ワクチン接種に加えて定期的な子宮頸がん検診(子宮がん検診)を受けることが大切です。定期的に検診を繰り返し受ければ85%の確率で前がん病変(高度異形成、上皮内がん:CIN3)」を見つけることができます。
 現在、厚生労働省は「20歳以上の女性を対象に、2年に1回の定期検診」を勧めています。検診には住民検診、職域検診、人間ドック検診があります。住民検診は各自治体が主体となって行い、検診料の約75%を補助してくれるため、自己負担は平均1500円程度で受けることができます。さらに、20、25、30、35、40歳には、無料クーポン券が配布されています。この無料クーポン券を多くの若年者が利用しています。
 子宮がん検診では問診の後、産婦人科医による内診、細胞診が行われます。

●問診・内診
 問診では子宮体がんの症状でもある不正出血の有無などを聞きます。また、性交未経験者は子宮頸がん検診を受ける必要は原則としてありません。また月経中でも検診は可能ですが、細胞診上判定困難な場合がありますので、できるだけ避けたほうが賢明です。
 内診では、肉眼的に子宮頸がんやその他の疾患の有無を視診後、子宮、卵巣などを診察します。最近の内診台は、被検者が所定の位置に座わるだけで、後の開脚動作や台の高低調節が自動的に行える電動式のものが増えていて便利です。

●細胞診
 産婦人科医が、子宮頸がんが発生しやすい子宮の入り口を、柔らかいブラシ状の器具で軽くこすって細胞を採取し、細胞検査士が標本を作って顕微鏡でその細胞を観察します。痛みなどはありません。顕微鏡検査は資格のある細胞検査士が一個一個の細胞を丁寧に観察し、異常があれば細胞診専門医が精密検査の必要性の有無を最終判定します。
 異常細胞の中には、がん細胞だけでなく、前がん病変の細胞も見つけることができます。

現在検討中!細胞診とHPV‐DNA検査併用による子宮頸がん検診

 「HPV‐DNA検査」とはHPVの感染を調べる検査で、子宮頸部から採取した細胞からDNAを抽出して判定します。ハイリスク型HPVへの感染の有無を一括して調べるスクリーニング検査と、どの型に感染しているかを調べるタイピング検査があり、どちらも細胞診の残り材料で検査できます。

 一次検診には一括検査が用いられ、細胞診とHPV‐DNA検査を併用することにより前がん病変をより早い段階で、しかも見落としなく、一回で発見できることが期待できます。がんになる前の段階で発見されて治療すれば自然妊娠・分娩は可能で、治療法も早産・流産のリスクが極めて低い低侵襲の治療で済みます。

 細胞診とHPV‐DNA検査がともに陰性の場合は、子宮頸がん検診の間隔を3年あるいは5年にしてもよいとする報告もあり、受診者の安心が得られるとともに、行政の費用対効果の面でも有効と考えられています。すでに島根県など一部の自治体の住民検診や、任意検診である人間ドックなどで導入されています。任意検診は、全額自己負担です。

精密検査(二次検診)の主な検査

 子宮がん検診(一次検診)で前がん病変や子宮頸がんが疑われた場合、精密検査(二次検診)が必要になります。
 精密検査は産婦人科医療機関で保険診療として受けることができます。

【コルポスコピー、病理診断】
●コルポスコピー
 まずコルポスコピー(コルポ診)を行います。コルポ診は、コルポスコープという器具を用いて子宮頸部のがんの好発部位を、約10倍に拡大して観察するもので、前がん病変やがんの発生部位を同定できます。
 コルポ診で異常があれば、その部位の組織をごく少量採取(生検)し、病理医はその組織を前がん病変か浸潤がんであるかの診断をします。
 最終的には、産婦人科医が細胞診、コルポ診、組織診をもとに総合的に判断し、経過観察、円錐切除(検査と治療を兼ねる)または根治手術が必要かを判定します。
 最近、組織診により軽度・中等度異形成であった場合、前述のHPV‐DNAタイピング検査の結果により、受診間隔を延ばすことも可能になってきました。

●円錐切除(病理診断)
 精密検査の結果が高度異形成や上皮内がんであった場合、検査と治療を兼ねて円錐切除をします。まず検査として病変部の広がりを判定し、根治手術の必要性の有無を診断します。
 病変が上皮内がん以内でしかも取り切れていれば治療完了となります。
 円錐切除の方法は、一般的には局所麻酔下にレーザーなどにより子宮頸部を円錐形に切除します。多くの医療機関では1~2泊の入院を必要としていますが、日帰り手術も可能です。
 円錐切除した標本は12等分して、病理医が病変部を顕微鏡で詳細に観察し、最終病理組織診断を行います。

【画像検査】
 がんが確定した場合、下記のような画像検査を行って、臨床進行期(がんの進行状態、拡がり具合)などを総合的に判断します。子宮は、体の内部にあって骨や他の臓器に囲まれているため、経腟超音波検査、CT検査、MRI検査は有効な手段です。

●経腟超音波検査
 プローブという細い棒状の装置を腟内に挿入し、超音波を体内の臓器などに発射し、反射してきた超音波を検出して映像化する検査です。子宮頸部や体部の状態や、卵巣の状態を知ることができます。日常的に行われる検査で、体への侵襲はありません。

●CT検査
 コンピューター断層撮影検査ともいいます。X線を体の外周から照射し、組織に吸収されたX線量をコンピューターで処理し、体内の断層像(輪切り像)を描き出す画像検査です。リンパ節や肝臓、肺への転移の有無を調べます。

●MRI検査
 磁気共鳴画像検査ともいいます。細胞の中の水素原子が磁気に反応する原理を応用し、体に強い電磁波を作用させることで、電子が共鳴して放出したエネルギーをコンピューターで処理し、画像化する検査です。放射線を使わない非常に精度の高い検査法です。子宮頸がんの浸潤程度を判断するのに有効です。

(編集・制作 (株)法研)

【監修】
岩成 治先生


島根県立中央病院母性小児診療部長
1976年鳥取大学医学部卒業後、島根医科大学産科婦人科入局。1991年同大学産科婦人科助教授、1994年島根県立中央病院産婦人科部長、島根医科大学臨床教授を経て、2004年島根県立中央病院母性小児診療部長に。2008年より同病院医療局次長、地域連携室長を兼任。日本産科婦人科学会専門医、日本婦人科腫瘍学会専門医、日本臨床細胞学会細胞診専門医、母体保護法指定医。日本婦人科腫瘍学会評議員、日本臨床細胞学会評議員・前島根県支部長、日本婦人科検診学会理事、日本産婦人科医会がん対策委員会委員長、子宮頸がん征服をめざす専門家会議委員など多くの要職を務める。

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