食道がんの検査

喫煙や大量飲酒の習慣のある人、熱い飲食物を好む人は要注意

食道がんは初期症状に乏しく、検診や人間ドックで発見されることも少なくありません。定期検診で早期発見を
(2012年06月26日)

食道がんの現状

 国立がん研究センターがん対策情報センターの「最新がん統計」によると、わが国で1年間に新しく食道がんにかかる人は約17,496人(2005年データ)、1年間に食道がんで亡くなる人は11,713人(2009年データ)と発表されています。年次推移では、罹患率は1980年代から男性で徐々に増加、女性では徐々に減少しています。死亡率では男性で横ばい、女性では1970年代から減少傾向にあります。
 生涯で食道がんにかかるリスク(2005年データ)を見ると、男性で52人に1人、女性で246人に1人とされています。食道がんで死亡するリスク(2009年データ)は、男性で84人に1人、女性で485人に1人とされています。

 年代別の罹患率をみると、男性では40歳代後半から増え始め、50歳代で急増し、70歳代にピークがあります。女性では40歳代後半から徐々に増え始め、高齢になるほど緩やかに増加します。また、年代別の死亡率をみると、男性は40歳代後半から徐々に増え始め、高齢になるほど増加しています。女性では50歳代から緩やかに増えて高齢になるほど増加しています。罹患率・死亡率ともに、女性より男性のほうが5~6倍高くなっています。

食道がんの危険因子

 食道がんの直接の原因は不明ですが、食道がんの多くを占める扁平上皮がん(食道の内膜を覆っている粘膜に発生するがん)では、食道粘膜を刺激し、炎症を起こすような生活習慣を持つ人は、食道がんのリスクが高いとされます。確立した危険因子として、喫煙と大量飲酒が指摘されています。両方の習慣がある人では、相乗的にリスクが高まることもわかっています。また、熱い飲み物や食べ物を好む習慣も、リスクを高める要因です。

 遺伝子との関係では、アルコール代謝酵素の働きが弱いタイプの遺伝子をもつ人の場合(お酒を飲んで、顔がすぐに赤くなるような人)は、飲酒により食道がんになりやすいという報告もあります。
 欧米人に多く日本人に少ない食道腺がん(食道の腺細胞に発生するがん)は、胃食道逆流症(逆流性食道炎)に加え、肥満が確実なリスク要因とされています。胃食道逆流症が長く続くと起こりやすいBarrett(バレット)食道は、食道腺がんの前がん状態と考えられています。
 その他、食道がんは男性に多く好発年齢は60〜70歳なので、下記のリスク要因のある高齢男性も要注意といえます。

【食道がんのリスク要因】
●扁平上皮がん
・喫煙習慣
・大量飲酒の習慣
・高齢男性

●腺がん
・胃食道逆流症(逆流性食道炎)
・バレット食道
・肥満

食道がんの主な検査

 食道がんの初期には、食物がわずかにしみる、食べ物がのどを通りにくい、胸骨(左右の肋骨の間にある骨)後部の異常感などを覚える人もいますが、ほとんどの場合自覚症状がなく、症状を自覚したときには進行していることも少なくありません。そのため、定期検診で早期発見することが大切です。
 食道がんは、厚生労働省のガイドラインによる「がん検診」の対象にはなっていないので「食道がん検診」としては行われませんが、胃がんの定期検診として行われる「上部消化管のX線検査」や「内視鏡検査」で発見されやすいがんです。
 胃がんの定期検診を受けることに加え、特に喫煙や大量飲酒の習慣のある人、飲酒ですぐに顔が赤くなる人など食道がんのリスクの高い人は、食道がん専門の検査を受けることをおすすめします。

【画像検査】
 食道がんが疑われると、精密検査として一般に食道造影X線検査と内視鏡検査が行われます。食道がんと診断されると、がんの進行などを知るために超音波内視鏡検査や超音波検査、CT検査、MRI検査などが行われます。

●食道造影X線検査
 バリウムを飲んで、それが食道を通過するときの様子をX線で撮影し、陰影欠損や食道壁の不整などから、がんの位置や大きさ、食道内腔の狭さなど全体像を確認します。
 小さながん病巣や組織表面のわずかな病変の診断には、二重造影による精密X線検査が必要です。

●内視鏡検査
 内視鏡を食道に挿入し、食道粘膜や病変の様子を観察します。病変の位置や大きさ、数、広がり方、表面の色や形状などを詳しく調べます。粘膜がんや1cm以下の微小がんなど、がんの早期発見に有効です。また、進行したがんで内視鏡を病変部の中まで進めることができない場合も、その直前の部分でのがんの広がり具合などの診断に使用されます。
 食道がんが疑われた場合は、この内視鏡検査時に、ヨード(ヨウ素)液で、病巣を染める検査も同時に行われます。正常な粘膜上皮細胞では黒っぽく染まりますが、がん細胞では染まらず、白ないしは黄色っぽく見えます。
 また、内視鏡で組織を採取し、顕微鏡で詳しく観察する生検(病理検査)も同時に行い、確定診断されます。

●NBI(Narrow Band Imaging)
 狭帯域光観察ともいう内視鏡診断法の1つです。がん細胞が増殖する際、栄養を補給するために病変の近くの粘膜には多くの血管が集まります。狭帯域光観察は、血液中のヘモグロビンが吸収しやすい特殊な光を当て、デジタル画像にするものです。毛細血管の集まりやそのパターンなどがより鮮明に表示され、通常の光による観察では発見できにくかった数ミリの小さながんが発見できるようになり、がんの早期発見に高い有用性が期待されています。患者さんの体への負担がないことも利点です。

●超音波内視鏡検査
 内視鏡の先端についた超音波装置を用いて、食道粘膜の下や、食道壁の外、周囲の臓器への浸潤の有無や広がり方、周辺のリンパ節への転移などをとらえることができます。
 食道がんの深さを知る「深達度診断」では、この超音波内視鏡が使用されます。

●CT検査(造影CT検査)
 コンピューター断層撮影検査ともいいます。X線を体の外周から照射し、組織に吸収されたX線量をコンピューターで処理し、体内の断層像(輪切り像)を描き出す画像検査です。頸部やリンパ節、他の臓器への転移の有無を把握することができます。特に周辺臓器である大動脈や気管・気管支への浸潤と近くのリンパ節への転移の有無を調べます。

●MRI検査
 磁気共鳴画像検査ともいいます。体に強い電磁波を作用させることで、電子が共鳴して放出したエネルギーをコンピューターで処理し、画像化する検査です。CT検査同様に周辺臓器への転移・浸潤の有無を把握します。

●骨シンチグラム検査(アイソトープ検査)
 ごく微量のアイソトープ(放射性同位元素)を血液内に注入し、それが組織に集積する様子をガンマ線カメラで撮影します。骨折や炎症、がんの転移などで、骨の再生が活発に起きている箇所にアイソトープが集積します。その部分は黒く写り、一度に全身の骨のチェックが可能です。

●PET/CT検査
 PETとはがん細胞で糖の分解(代謝)が活発になることを利用した検査で、がんがあるかどうか、他の臓器や骨、リンパ節などに転移があるかどうかなどの診断に用いられます。これに、CTの画像を同時に合わせることで、より精度の高い画像が得られます。
 デジタルデータ化されるので、さまざまな角度の断面を表示することが可能で、目的に応じた画面を観察することができます。

【血液検査】
●腫瘍マーカー
 腫瘍マーカーとは、体内にがんが存在すると血液中に大量に増える物質をいいます。食道がんのマーカーは、扁平上皮がんでは「SCC」と「CEA」、腺がんでは「CEA」です。がんがあっても異常値を示さないこともあり、腫瘍マーカーは、診断の一つの参考とされます。



(編集・制作 (株)法研)


コラム
がん
ジャンル
検診と検査
【監修】
河合 隆先生

東京医科大学教授
東京医科大学病院 内視鏡センター部長
1988年東京医科大学大学院卒業。99年東京医科大学講師、2005年同大学助教授、08年同大学教授に就任。東京医科大学病院内視鏡センター部長を兼務。専門は、食道がん・胃がんの診断と治療。ヘリコバクターピロリ感染症の診断と治療。日本消化器内視鏡学会評議員、日本消化器病学会評議員、日本ヘリコバクター学会評議員、日本胃癌学会評議員、日本消化器内視鏡学会附置経鼻内視鏡研究会世話人など要職兼務。主な著書に『経鼻内視鏡検査導入の手引き』『上部消化管内視鏡挿入・観察のポイント』『鼻から胃カメラde健康チェック―もう痛くない』などがある。

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