喉頭がんの基礎知識 病気の特徴とがんが発生する3つの部位|検査方法

主に声帯に発生するがん。早期発見で声を失わずに治癒できる

高齢の男性で喫煙と飲酒歴の長い人はハイリスク。声がれやのどの違和感が続くときは一度検査を

喉頭がんの現状

 「喉頭」とは、舌のつけ根(舌根)から気管までをつなぐ部位をいいます。
 喉頭は、「声を出す(発声機能)」、「空気の通り道(気道)を確保する」、「食べ物を気管に通さないようにする(誤嚥防止)」という大変重要な役割をしています。

 国立がん研究センターがん対策情報センターの「最新がん統計」によれば、わが国で1年間に喉頭がんと診断される人は男性3,903人、女性214人(2005年データ)、1年間に喉頭がんで亡くなる人は、男性903人、女性79人です(2009年データ)。罹患、死亡ともに、男性は女性の10倍以上多くなっています。
 喉頭がんはすべてのがんの中では発生率は多くありませんが、男性では特に50歳代から80歳代で急激に罹患率が増えており、高齢化とともに増えるがんといえます。

喉頭がんの特徴

 喉頭は、発声や呼吸、飲み込み(嚥下)に関する働きをしているため、喉頭がんが進行するにつれて嗄声(させい:声がれ)や息苦しさなどの呼吸困難、食べ物や飲み物でむせる(飲み込みにくい)などの障害が起こります。進行すると喉頭の全摘手術が必要になることがあり、音声を失い、命は助かってもQOL(生活の質)が大きく低下することにつながります。

 喉頭は声帯のある声門、声門より上の声門上、声門より下の声門下に分けられ、がんのできる部位によって以下の3つに区別されます。

●声門がん
 声帯のある声門にできるがんで、喉頭がんの約65%を占めます。初期の主な症状は、声帯の滑らかさや柔らかさが失われるためにがらがらした感じの声がれが起こってきます。がんの進行につれて声帯の動きも障害され声がれはひどくなり、声門が狭くなることにより息苦しさなども現れます。痰に血液が混じることもあります。
 声門がんは初期症状に気づきやすいため早期発見、早期治療が可能で治癒率は高くなっています。早期発見によって声帯を残した治療が可能で、声を残すことができます。

●声門上がん
 声門より上の、舌の付け根に近いところにできるがんで、喉頭がんの約35%を占めています。初期には声帯が損傷されないので声がれは起こらず、自覚症状があまりありません。初めはのどに異物感やいがらっぽさなどがあったり、食物を飲み込んだときに痛みを感じる程度ですが、次第に強くなり、耳にまで痛みが走るようになることがあります。がんが声帯に広がると声がれが、さらに進行すると呼吸困難などの症状が現れます。
 声門上がんでは初発症状として頸部リンパ節への転移が見られることも多く、首のしこりや腫れで発見されることがあります。声門がんに比べて治癒率は低くなっています。

●声門下がん
 声門より下の気道に近いところにでき、喉頭がん全体の5%未満と大変まれながんです。初期には症状がなく、のどの違和感で受診したときにはリンパへの浸潤などがんが進行していることが少なくありません。声門がんに比べて治癒率は低くなっています。

【喉頭がんの危険因子】
 喉頭がんのリスク要因には、「喫煙」と「飲酒」があり、喫煙者が飲酒をすると相乗的にリスクが高まります。
 また、アスベストなどの被曝や、胃食道逆流症の影響も指摘されています。

喉頭がんの主な検査

 喉頭がん全体の治癒率は約70%と頭頸部のがんの中でも治癒しやすいがんとされ、さらに早期発見により声を失わずに治癒することができます。そこで自治体によっては、独自に「喉頭がん検診」を行っているところもあります。また、1カ月以上続く声がれやのどの違和感(つかえ)、せきなどの症状がある場合は、頭頸部外科や 耳鼻咽喉科での検査をおすすめします。

 喉頭がんは、のどの奥の見えにくい部分にできるがんです。検査では、まず声がれ、のどの違和感、のどの不快感などの自覚症状を問診によって確認していきます。
 その後、視診や喉頭内視鏡検査を行い、疑わしい場合には生検で確定診断をします。そして、頸部エコー検査やCT、MRIなどの画像検査も行って治療方針を決めていきます。
 声がれやのどの違和感などは、甲状腺や肺、食道、気管支などの別の病気で起こっている場合もあります。このため、画像検査はこれら別の病気を発見するためにも役立ちます。

●問診・触診
 喉頭がんの問診では、発声、呼吸、飲み込みの状態など自覚症状を確認します。
 同時に、喉頭がんでは首のリンパ節への浸潤・転移が考えられるため、首周り(頸部)の触診も行い、リンパ節転移があるか、あればその部位、大きさ、数、可動性の有無などを診察します。

●音声分析
 喉頭がん検診として、一部の自治体などでも行われている検査です。被検者の声を録音したデータを解析して、喉頭がん、声帯結節、声帯ポリープなどのどの疾患のスクリーニングを行います。

●視診(間接喉頭鏡)
 喉頭鏡(棒の先に小さな鏡がついた器具)を口の中に入れて「えーっ」「いーっ」などの声を出しながら喉頭を小さな鏡に映して観察し、腫瘍などができていないかを調べます。

●喉頭内視鏡(ファイバースコープや電子スコープ)検査
 喉頭鏡で「ゲッ」となる咽頭反射が強い場合や、のどの奥まで観察する場合は、鼻から入れる直径数ミリの細いファイバースコープや電子スコープ(先に小さなライトがついた内視鏡)で検査します。鼻腔を局所麻酔したうえで、鼻から軟性のファイバースコープを挿入し、喉頭内を直接あるいはモニターで細かく観察してがん病変の有無などを観察します。1ミリ程度の小さながんまで発見することが可能です。

●喉頭ストロボスコープ検査
 喉頭がんの早期発見には声帯振動の異常を発見することが有用ですが、声帯の振動はあまりに高速で目には見えません。そこで役立つのが観察光源にストロボ発光を使った喉頭ストロボスコープ検査です。この検査では、ストロボ発光を行いながら喉頭の状態をスローモーションで観察することで、声帯振動の異常などが起きているかどうかを確認することができます。ほかにも、喉頭がんで起こる声帯粘膜の硬化や、声帯ポリープ、一見ポリープとまぎらわしい声帯嚢胞の診断などにも役立ちます。

【病理検査】
 視診や内視鏡検査により、がんの疑いがあるときには、病変のある部分から組織を採取して顕微鏡で観察し、がん細胞があるかないか、がん細胞のタイプ(種類)、悪性度などを判定します。

●生検
 のどを局所麻酔して太めのファイバースコープを挿入して観察し、病変部分の組織をごく少量鉗子(かんし)で採取し、顕微鏡で観察してがんかどうかの確定診断(病理組織診断)をします。

【画像検査】
 頸部エコーやCT、MRIなどでがんの周囲への浸潤やリンパ節転移の有無を調べます。また、リスク要因が共通する食道がん、肺がん、胃がんなどの重複がないかも確認します。

●超音波検査(エコー検査)
 プローブという装置を直接、患部の体表に当て、超音波を体内の臓器に向けて発射し、反射してきた超音波を検出して映像化する検査です。
 喉頭がんでは、頸部リンパ節の大きさや内部の状態を調べ、リンパ節への転移がないかを確認します。また、甲状腺がんや食道がんなどの鑑別診断も行います。

●コンピューター断層撮影(CT)
 X線を体の外側から照射し、組織に吸収されたX線量をコンピューターで処理し、体内の断層像(輪切り像)を描き出す画像検査です。
 喉頭がんではがんの広がりや、周辺臓器への浸潤や転移がないか、また肺や食道の病気がないか確認します。

●MRI検査
 磁気共鳴画像検査ともいいます。体に強い電磁波を作用させることで、電子が共鳴して放出したエネルギーをコンピューターで処理し、画像化する検査です。喉頭がんでは、がんの広がりや、周辺臓器への浸潤や転移がないかを確認します。

(編集・制作 (株)法研)



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【監修】
岸本 誠司先生


東京医科歯科大学頭頸部外科教授
1973年京都大学医学部卒業。京都大学医学部附属病院、天理よろず相談所病院耳鼻咽喉科に勤務の後、チューリヒ大学に留学。帰国後は京都大学医学部附属病院助手、静岡県立総合病院耳鼻咽喉科医長を経て、85年高知医科大学耳鼻咽喉科講師、89年同大学手術部助教授、97年 国立がんセンター東病院頭頸科医長、98年同病院手術部長。99年より現職。日本頭頸部癌学会理事(前理事長)、日本頭頸部外科学会理事など多数の要職を兼務。

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