「ストレスで太る」は本当だった! ストレス過食の恐いメカニズム

ダイエットにはストレスケアを取り入れて

ポジティブな発想でストレスを減らし、肥満を解消しよう

小さなストレスが肥満をつくっている

 「やけ食い」「やけ酒」のように、食べたり飲んだりして、腹の立つことや思いどおりにならないことを忘れようとするのは、あまり珍しいことではありません。こういう場合の多くは、自分が食べたり飲んだりすることで気を紛らわそうとしていることを自覚しています。そのため、食べすぎたり飲みすぎたりしたことを反省し、食事の量をコントロールすることができます。
 ところが、無意識に食べたり飲んだりしてイライラを解消していると、食べすぎ・飲みすぎに気づかず、肥満を招いてしまいます。実は、肥満症の治療を受けている患者さんの多くが、何らかのストレスを抱えていて、それが肥満を招く原因の一つになっていることがわかっています。

 ストレスといっても大小さまざまです。身近な人を突然亡くしたり、災害などで家や財産をすべて失ったりしたら、食事ものどを通りません。
 このような非常に大きなストレスとは違って、イライラしたりムカついたりする程度の小さなストレスだと、食べたり飲んだりすることによって、それを解消しようとします。会社で上司に注意された、友人と意見が合わずに気まずい雰囲気になった、休日に夫がゴロゴロしていて何も手伝ってくれない。このようなとき、食べたり飲んだりして気を紛らわしたという覚えは、誰でもあるのではないでしょうか。

 こうした仕事や人間関係での日常的なストレスは、一つひとつはあまり大きくはありません。しかし、たとえ小さいストレスでも、それを解消するために食べたり飲んだりすることを続けていると、確実に肥満につながります。肥満を招くストレスという意味で、「肥満ストレス」と呼ぶことができます。

ストレスの原因を探ることがダイエットの第一歩

 ストレスを解消するために食べる「ストレス食い」が肥満をつくることは、ネズミを使った実験で明らかになっています。
 脳の中には、興奮を抑える「セロトニン」という神経伝達物質があります。実験では、このセロトニンは、ストレスによって減少し、甘いものを食べると元の量に回復することがわかりました。つまり、ストレスがかかると、セロトニンが減少するためイライラし、甘いものを食べると、セロトニンの働きで興奮が治まり、穏やかな気持ちになるのです。
 人間も同じだとすると、食べたり飲んだりして小さなストレスを解消し、心を安定させていると言えるでしょう。その積み重ねが肥満をつくっているのです。

 そのことに気づかずにダイエットを始めると、たいていは長続きせず、一時的にダイエットできたとしてもリバウンドしやすいのです。なぜなら、食事を制限することも、新たなストレスになるからです。そのため、ストレス状態はさらに悪化し、結局は食べたり飲んだりすることでストレスを解消するという行動に走ってしまいます。

 ダイエットを成功させ、リバウンドを防ぐには、ストレスの原因を見つけることが大事です。嫁姑問題、介護・看病の疲れ、夫や子どものこと、自分や家族の健康、将来に対する不安、仕事上の人間関係、異性との関係、近所の付き合い、借金・ローンの負担など、悩んでいることや不安に感じていることを書き出してみましょう。自分が抱えているストレスの原因を見つけることが、ダイエットの第一歩です。

ネガティブからポジティブへ発想の転換を図り、ストレスを減らす

 ストレスの原因が見つかったら、次はそれをどうするか、ストレス対策が大切です。ストレスの原因だからといって、それを完全に消したり避けたりすることは不可能です。仮にそれができたとして、また別のストレスが発生します。
 おすすめしたいことは、ストレスの原因になっていたものに対する考え方を180度変えることです。ネガティブな考え方からポジティブな発想法に変え、ストレスに感じていたことが気にならなくなればよいのです。

 例えば、上司から注意されたとき、「自分はダメな人間だ。評価が下がる」と考えるのではなく、「自分のことをいつも見ていてくれるんだ。ここを直せば、ステップアップできる」と前向きにとらえたらどうでしょう。要するに、「ものは考えよう」です。自分に都合よく考えて、あまりくよくよしないことです。
 また、相手の立場になって考えると、「ああいう態度をとるのも無理はないな」「○○さんも、苦労が多いんだ」というように、ストレスを感じずに済むかもしれません。
 さらに、イヤなこと、頭にくることがあったときは、少し時間をおくのも一つの方法です。そのことだけに捕らわれていると、ますますイライラがつのります。いったんその場を離れたりして一呼吸おくと、あまり大きな問題ではなかったと思えることが少なくないものです。

 こうしたポジティブ思考への転換とともに、食べること以外にストレス解消法を見つけることも大切です。散歩やスポーツ、趣味に打ち込むなど、気分転換する方法を見つけることをおすすめします。
 また、心が癒されることもストレス解消に役立ちます。ぬるめのお湯でゆっくり入浴する、マッサージを受ける、ペットと遊ぶなどもよいですが、何より効果的なのは「人とのコミュニケーションによる癒し」です。友達や恋人、家族などに話を聞いてもらうだけでも、ストレスが解消されることは少なくないはずです。

(編集・制作 (株)法研)

【監修】
吉田 俊秀先生


京都市立病院 糖尿病代謝内科部長
昭和47年京都府立医科大学卒業、米国UCLA内分泌内科留学、京都府立医科大学助教授・病院教授を経て、平成16年より現職。日本糖尿病学会評議員・専門医・指導医、日本肥満学会評議員、日本内分泌学会評議員・専門医。現在までに5,000名を超える肥満症患者の治療にあたり、減量の動機付け、ストレスマネージメント、肥満遺伝子診断に基づくテーラーメイド型食事指導を駆使し、93%の減量成功率を達成している。

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