お年寄りが元気でいられるためのチェックリスト-生活不活発病とは

「動きにくい」、「動かない」から「動けなくなる」を防ごう

高齢者は「動かない」と心身の機能が低下しやすい。一旦低下すると回復しにくいため、予防と早期発見が大事

生活が不活発になると、高齢者は心身の機能が低下しがち

 「生活不活発病」は、体を動かさない状態が続くことで心身の機能が低下していくもの。特に高齢者や持病のある人に起こりやすく、一旦起こると治りにくく寝たきりの原因にもなるため、本人だけでなく、周りの人が十分気をつける必要があります。

 生活不活発病は医学的には「廃用症候群」といいます。「廃用」は使わないことを意味し、使わない機能は衰えます。若い人でも、病気やけがで数日間入院したりベッドで過ごしたあと、起きて動くのがだるかったり、骨折してギプスをはめていた脚や腕の筋肉が落ちて細くなってしまったといったことはよくあります。
 体を動かさないでいると、特に筋肉の持久力が低下してしまいます。速く強く動かす筋肉の力は、加齢に伴って低下していきますから、高齢者が安静にしていると、持久力も速く強く動かす筋肉の力も両方が低下することになります。高齢者では機能低下の範囲もより大きく、より早く進行します。心肺機能も低下し、起立性低血圧や息切れなども起こりやすくなります。筋肉も心肺機能も低下すると、回復には相当の時間が必要になります。さらに、うつ状態や知的活動の低下がみられるようになるなど、心身のほとんどの機能が低下します。

 災害時には避難所で暮らす高齢者だけでなく、在宅の高齢者も、環境の変化や遠慮などから生活が不活発になりやすく、生活不活発病が多発します。2004年の新潟県中越地震では、65歳以上の被災高齢者(要介護認定を受けていない)のうち、約3割が歩行困難になり、地震発生から半年経っても約1割の人は回復していなかったと報告されています。

 3月11日の東日本大震災で被災した高齢者も、避難所生活、在宅生活を問わず不自由な生活から生活不活発病になる恐れがあるとして、厚生労働省や日本理学療法士協会などでは、生活不活発病の予防方法を示したポスターやちらしなどを公開して注意を呼びかけています。また、日本リハビリテーション医学会、日本理学療法士協会、日本介護福祉士会など医療・介護・福祉分野の16の団体・学会は、4月はじめに「生活機能対応専門職チーム」を結成し、避難所で暮らす高齢者に対して、生活不活発病の予防・改善活動を行っています。

生活不活発病を予防するためにはどうしたらいいか

 生活不活発病が起きると、歩くのが難しくなったり、疲れやすくなってますます動きにくくなり、さらに生活不活発病が進むという悪循環に陥ってしまいます。一旦起こってしまうと回復には時間がかかり治りにくいことから、治療より予防が有効といわれています。

 生活不活発病の予防は、生活を活発化すること。具体的な予防のポイントを、厚生労働省「生活不活発病予防パンフレット(在宅用)」からみてみましょう。

<予防のポイント>
○ 毎日の生活の中で活発に動くようにしましょう。
○ 家庭・地域・社会で、楽しみや役割をもちましょう。
 (遠慮せずに、気分転換を兼ねて散歩やスポーツや趣味も)
○ 歩きにくくなっても、杖や伝い歩きなどの工夫を。
 (すぐに車いすを使うのではなく)
○ 身の回りのことや家事などがやりにくくなったら、早めに相談を。
 (練習や工夫で上手になります。「仕方ない」と思わずに)
○ 「無理は禁物」「安静第一」と思いこまないで。
 (疲れやすいときは、少しずつ回数多く。病気のときは、どの程度動いてよいか相談を。)
※ 以上のことに、ご家族や周囲の方も一緒に工夫を。


 また、同パンフレット(避難所用)では、ボランティアなど支援にあたる人に対して、必要以上の手助けはしないように呼びかけています。

早めに気づいて対処するためにチェックを

 生活不活発病は予防とともに、早めに気づくことが大事です。早めに気づけば、積極的に体を動かすことで機能の改善・回復が可能だからです。

 前述の「生活不活発病予防パンフレット」には、生活不活発病に気づくための「生活不活発病チェックリスト」がついています。

 このチェックリストでは、
(1)屋外歩行
(2)自宅内歩行
(3)身の回りの行為(入浴、洗面、トイレ、食事など)
(4)車いすの使用
(5)外出の回数
(6)日中の活動

などの項目について、震災前と現在の活動状態を比較できるようになっています。そして、各項目ごとにあげられた3~5つの状態の中から当てはまるものをチェックします。

(1)屋外歩行の場合なら、
□遠くへも1人で歩く
□近くなら1人で歩く
□誰かと一緒なら歩く
□ほとんど歩いていない
□外は歩けない
の5つの中から震災前と現在の状態を選びます。上から2番目以降(一番よい状態ではない)にチェックがつく場合は注意する必要があり、特に震災前より現在のチェックが1段階でも低下しているときは、保健師や行政の担当者、医療機関の医師などに相談することがすすめられます。

 地震の影響で生活の中の役割が減った、体を動かす機会が減った、以前できていたことができにくくなったと感じている方は、ぜひ「生活不活発病チェックリスト」を利用して、状態をチェックしてみてください。
 本人も周囲の人も、高齢者は生活不活発病を起こしやすいことを知って、予防と早めの対処をこころがけましょう。

<参考>
(社)日本理学療法士協会「生活不活発病予防リーフレット」
(独)国立長寿医療研究センター「生活機能低下予防マニュアル~生活不活発病を防ごう~」

(編集・制作 (株)法研)

【監修】
竹井 仁先生


首都大学東京健康福祉学部理学療法学科 准教授
昭和62年に理学療法士となる。平成9年3月に筑波大学大学院リハビリテーション修士、平成14年10月に東邦大学大学院医学研究科にて医学博士授与。東京都理学療法士会副会長。専門は、徒手療法、神経筋骨関節疾患、運動学。著書に『たるみリセット』、『不調リセット』(いずれもヴィレッジブックス)、ほかに理学療法学関係の専門書多数。テレビ出演や雑誌掲載も多数。

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