日本人にはカルシウムが足りない? カルシウムの効果的なとり方

カルシウム不足は骨粗しょう症だけでなく動脈硬化の原因にも

日本人は性別、年代を問わずカルシウム不足が続いている。カルシウムを効率よくとるには

カルシウム不足が続くと、骨粗しょう症だけでなく動脈硬化を引き起こす恐れが

 「飽食の時代」と言われるようになって久しい日本ですが、長年「カルシウム不足」が指摘され続けています。日本人のカルシウム摂取量は、1970年代からほとんど増えていないばかりか、近年少しずつ減ってきていることが国の調査でわかりました。
 カルシウム不足というと、骨がスカスカになる骨粗しょう症を思い浮かべる方が多いでしょう。しかし、カルシウム不足の影響は骨だけにとどまりません。

 人の体に存在するカルシウム量は体重の1~2%といわれ、成人なら1kgにものぼります。その99%は骨と歯に蓄えられていますが、残り1%は血液中や細胞に存在し、ホルモンの分泌や血液の凝固、筋肉の収縮、神経の伝達といった体の重要な機能を維持・調節する働きをしています。
 そのため、血液中のカルシウム濃度は常に一定に保たれ、不足しそうになると骨を溶かしてカルシウムを血液中に放出し、不足分を補充しようとします。カルシウム不足が慢性的に続くと、常に骨からカルシウムが溶け出すことになり、骨がもろくなって「骨粗しょう症」になりやすくなります。

 さらに、血液中に放出されたカルシウムが血管壁に付着し、動脈硬化を引き起こす原因にもなることがわかってきました。

働き盛りも若い世代も、カルシウム不足は深刻

 日本人のカルシウム摂取量がどれくらい不足しているかというと、年齢、性別によって異なりますが、たとえば次のようになります。

 ・30~40代男性  推奨量 650 摂取量 約440 不足分 約210(単位mg/日)
 ・50~60代男性  推奨量 700 摂取量 約530 不足分 約170

 ・30~40代女性  推奨量 650 摂取量 約440 不足分 約210
 ・50~60代女性  推奨量 650 摂取量 約530 不足分 約120

(「日本人の食事摂取基準(2010年版)」、「平成23年国民健康・栄養調査」より)


 これより若い世代では、「推奨量」と「摂取量」の対象年齢が異なるため単純に比較することはできませんが、「18~29歳の推奨量」が男性で1日あたり800 mg、女性で650mgのところ、「20~29歳の摂取量」は男性約450 mg、女性約400mgで、不足分は男性約350 mg、女性約250 mgにものぼります。

 人の骨量は20~30代でピークを迎え、その後徐々に減っていき、特に女性は閉経後急激に減ります。そのため、若いうちにカルシウムをしっかり蓄え、それ以降もカルシウムを十分補充して骨量の低下をなるべく抑えることが大切なのです。しかし、日本人のどの年代もカルシウムが不足している人が多いと予想されることから、近い将来骨粗しょう症になる人が増えることが心配されます。

 骨粗しょう症になるとちょっと転んだだけで骨折しやすくなり、QOL(生活の質)の低下や寝たきりの原因になります。またカルシウム不足によって誘発される動脈硬化は、脳卒中や心筋梗塞といった重大な病気につながる恐れがあります。これらを予防するためにも、カルシウムを十分にとることが大切です。

カルシウムはさまざまな食品からとるのがポイント

 カルシウムは体内で作ることができないため、毎日の食事から摂取しなくてはなりません。カルシウムを多く含む食品には「牛乳・乳製品」、「小魚」のほか、「大豆・大豆製品」、「緑黄色野菜」、「海藻類」などがあります。牛乳・乳製品ばかりでなく、これら多くの食品からカルシウムをとるようにすると、栄養バランスもよくなります。

●カルシウムを多く含む食品
 牛乳・乳製品:牛乳、スキムミルク、チーズ、ヨーグルト など
 小魚:いわし丸干し、わかさぎ、ししゃも、桜えび、しらす干し など
 大豆・大豆製品:大豆、豆腐、がんもどき、高野豆腐、納豆 など
 緑黄色野菜:小松菜、春菊、チンゲン菜、モロヘイヤ、大根の葉 など
 海藻類:ひじき、わかめ、昆布 など

 たとえばカルシウムの不足分が250mgとして、これを補うために、普段の食事に何を追加すればよいか1例をあげておきましょう。
 ・朝食にプレーンヨーグルト100g(カルシウム120mg)追加
 ・昼食で定食に木綿豆腐の冷ややっこ1/4丁75g(90mg)追加
 ・夕食にしらす干し大さじ2杯10g(52mg)追加
これでカルシウム262mgを追加することができます。

 また、カルシウムを効率よくとるためには、ビタミンDやビタミンKを一緒にとるとよいことがわかっています。ビタミンDはカルシウムの吸収や利用率を高める効果があり、ビタミンKは、カルシウムが骨から溶け出すのを防いで骨折しにくい骨をつくるのに役立ちます。

●ビタミンDを多く含む食品
鮭、しらす干し、うなぎ蒲焼き、まぐろ、いわし、さば、きくらげ、干ししいたけ、卵 など

●ビタミンKを多く含む食品
納豆、モロヘイヤ、ほうれん草、春菊 など

運動、日光浴にもカルシウムの吸収・定着を促す効果が

 食事以外では、運動や日光浴などにカルシウムの吸収や定着を促す効果が認められています。

●運動や家事で積極的に体を動かす
 体を動かして骨に重力がかかると、カルシウムの骨への定着が促されます。ウオーキングなど骨に負荷がかかるものが効果的で、特別ハードな運動をする必要はありません。散歩や家事でもよいので、毎日積極的に体を動かしましょう。

●日焼けしない程度に日光浴を
 カルシウムの吸収を高めるビタミンDは、日光(紫外線)に当たることによって皮膚でも作られます。日中の外出などで顔や手首から先が1日15~30分程度日光に当たっていれば十分効果があるといわれます。紫外線の強い季節には帽子や日傘などで日よけして、日焼けしない程度に日光浴を心がけましょう。

●喫煙、過度の飲酒は避ける
 喫煙は胃の働きを低下させるため、カルシウムの吸収を妨げて血液中のカルシウム濃度を低下させ、カルシウムの骨からの溶け出しにつながります。また、飲酒は適量なら問題ありませんが、飲みすぎるとカルシウムの吸収が妨げられます。また、アルコールの利尿作用で、尿と一緒にカルシウムも体外へ排泄されてしまいます。

(編集・制作 (株)法研)

【監修】
上西 一弘先生


女子栄養大学栄養学部栄養生理学研究室教授
1984年徳島大学医学部栄養学科卒業。86年同大大学院栄養学研究科修士課程修了。雪印乳業株式会社生物科学研究所を経て、91年より女子栄養大学に勤務。2000年専任講師、02年助教授、06年より現職。専門分野は栄養生理学、ミネラル代謝、骨代謝、スポーツ栄養など。日本栄養・食糧学会、日本動脈硬化学会、日本骨代謝学会、日本体力医学会、日本脂質栄養学会、日本骨粗鬆症学会、アメリカ骨代謝学会、国際骨代謝学会など、国内外の所属学会多数。著書に『ビタミン総合事典』(共著、朝倉書店)、『栄養素の通になる―食品成分最新ガイド(第3版)』(女子栄養大学出版部)など。

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