泣くとすっきりするのはなぜ?

解明されてきた「涙の癒し効果」

泣いて涙を流すと、ストレスが解消され免疫力が高まるなど、健康にいいことがいっぱい

泣けばストレスが解消、エンドルフィン増加ですっきり感も

 ここ数年、泣ける映画やドラマ、本の人気が続いています。火つけ役ともいえる『世界の中心で、愛をさけぶ』は本、映画、ドラマともに大ヒット。2004年の流行語大賞で「セカチュー」がトップ10に入賞するなど、「セカチュー現象」を巻き起こしたことを覚えている人も多いでしょう。

 思いっきり泣いたあと、気分がすっきりした経験をもつ人は多いと思います。この涙のカタルシス効果は昔から経験的に知られていましたが、最近の研究で、涙には心にも体にも「癒し効果」があることがわかってきました。

 まず涙のストレス解消効果です。ストレスとの関係が深い自律神経は、呼吸や血液循環といった体の大切な働きを意思とはかかわりなくコントロールしていて、緊張や興奮を促す交感神経と、リラックスや安静を促す副交感神経があります。泣いて涙が出るという状態は、交感神経が優位な状態から、副交感神経が優位な状態に切り替わることによって起こっています。だから涙を流して泣くときには、ストレス状態が解消され、リラックスした状態になります。逆に、涙をこらえるのは緊張状態を長引かせ、ストレスをためることになって、健康によくないというのです。

   また泣いた後には、脳内ホルモンの一つでモルヒネ様物質として知られる「エンドルフィン」が増加することがわかっています。エンドルフィンには強い鎮静作用があり、適度な運動の後などにはこの物質が増加して、ストレス解消とすっきり感をもたらすことが知られています。泣くとすっきりするのは、こういうわけだったのです。

笑うことと同様、泣くことは免疫力を高める

 笑うことが免疫力を高めることは既に明らかになっています。免疫力とは細菌やウイルスが体内に入ってきたときに、それを異物として排除しようとする仕組みのこと。このとき大事な働きをするのが白血球ですが、 その中でウイルスなどの異物を食べてしまう「マクロファージ」と、ウイルスなどに感染した細胞を殺す「ナチュラルキラー細胞」などの働きが、笑った後には活性化していることがわかっています。同様のことが、泣いた後にも確認されています。

 過剰なストレスが免疫力を低下させることはよく知られていますが、笑ったり泣いたりすることでストレスを解消することは、免疫力を高めることにつながるのです。

マンガンを流し出すことでうつ病も予防?

 ところで、玉ねぎを切ったときや目にゴミが入ったときにも涙は出ますが、そのときの涙の成分と、感情の高まりから泣くときに流れる涙の成分は同じなのでしょうか? 涙の成分には、水、カリウム、マンガン、塩分、脂肪、たんぱく質などが含まれますが、実験によると、泣くときに出る涙のほうが、単なる刺激を受けたときに出る涙よりも成分が濃いということがわかっています。

 泣くときに出る涙には、うつ病と関係があるといわれるマンガンが血液中の30倍も含まれるそうです。これはまだ仮説の段階ですが、血液中のマンガンの量が一定以上になるとうつ病になる危険性が高まり、涙を流してマンガンを体外に排出することで、うつ病を回避できるという説があります。また、ストレスによって分泌され血液中にたまった物質も、涙によって排出されるとか。涙には、体にとって余計なものを排出し、体の働きを正常に整える働きがあるようです。

 泣ける映画や小説を「お涙頂戴」なんてばかにしていた方も、こんなに健康にいい涙なら流してみるのもよいのでは? せめて泣きたくなったときは、我慢しないで思いっきり泣きましょう!

(「健康のひろば」法研より)

【監修】
柏瀬宏隆先生


松見病院 院長補佐
1947年神奈川県生まれ。慶應義塾大学医学部卒業。1979年アメリカ留学後、慶應義塾大学大学院博士課程修了。防衛医科大学精神科助教授を経て、2001年長谷川病院院長、2007年7月より現職。専門は臨床精神医学、精神病理学。診療のかたわら著作、講演、雑誌執筆などを行う。著書に『涙の治癒力―人は泣くとなぜスッキリ、健康になるのか』、『うつ・躁うつの「自己診断」』(以上、リヨン社)など多数。

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