ウォーキングとカテキンで予防-メタボと隠れ肥満

肥満増加の原因は、エネルギー摂取の低下以上に減った運動量

食事制限だけでは、筋肉が減って脂肪が残る“隠れ肥満”に。ウオーキングで筋肉を保ちながら脂肪を減らそう

肥満者は座っている時間が長く、立ったり歩いたりする時間が短い

 厚生労働省『平成16年国民健康・栄養調査』によると、男性では20歳以上の肥満者(BMI 25以上)の割合が、ここ20年間で増え続けています。とくに30~60歳代では平成16年の肥満者は30%前後に達しており、現代の中高年男性はまさにメタボ世代といえます。
 * BMIは体格指数ともいい、体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で求めます。

 このデータだけ見れば、現代は「飽食の時代」のようですが、同調査をさかのぼってみると、日本人のエネルギー摂取量は昭和50年ごろをピークに減り続けており、現在の平均的なエネルギー摂取量は、なんと戦争直後の昭和21年とほぼ同じなのです。炭水化物の摂取量も昭和30年ごろをピークに減り続けています。

 エネルギー摂取量が減っているにもかかわらず、肥満者は増加していることについて、同志社大学の石井好二郎教授は「エネルギー摂取量の減少分以上に、消費エネルギー量、すなわち運動量が減り、エネルギーがだぶついて肥満を増やした」と分析しています。英国のデータでは、「自家用車の保有台数」や「テレビ視聴時間」の増加といった運動不足の要因が増えてくるのとほぼ同時に、肥満者も増えてきたことが明らかになっています。

 肥満者と非肥満者の身体活動を比較した研究では、肥満者は座っている時間が長く、立ったり、歩いている時間が短いことがわかりました。「立っている」というような、運動とはいえないものの確実にエネルギー消費を増やす身体活動のことをニート(NEAT:Non Exercise Activity Thermogenesis)といいますが、立っているだけで、座っているより20%もエネルギー消費量が増えるのです。また、公共交通が整備された大都市圏ほど1日の歩行数(=運動量)が多く、肥満化率が低いことも明らかになっています(平成20年版『食育白書』)。

若い女性の5人に1人は、「正常体重」なのに体脂肪率が高い“隠れ肥満”

 運動不足は肥満にとどまらず、メタボやさまざまな生活習慣病と密接につながっています。高血糖や糖尿病はその代表的なものであり、食べ物からとり入れた糖分(ブドウ糖)がエネルギーとして各器官に十分に取り込まれずに、血液中にだぶつく病気です。血液中のブドウ糖(血糖)の最大の取り込み器官は筋肉であり、運動不足で筋肉を使うことが少ないと筋肉量が減ってしまい、血糖が十分に使われず高血糖からメタボ、糖尿病を起こすことにもなります。
 さらにこれらは動脈硬化から心臓病などの命にかかわる病気の危険性も高めます。デンマークでの中高年を対象にした調査によれば、通常、体の中で筋肉量が最も多い太ももの太さ(周囲の長さ)が細いほど、心筋梗塞などの心臓病になりやすいことがわかっています。これは日本人にも当てはまると考えられています。運動習慣で十分な筋肉量を保つことは、心臓病やその先の死亡危険度も下げることに役立つのです。

 ところで日本人の男性には肥満者やメタボ該当者が多い一方で、女性は20~40歳代で「やせ」(BMI=18.5未満)が増加し、20歳代の約2割が「やせ」でした(『平成16年国民健康・栄養調査』)。さらに、石井教授が平均年齢20歳の女性を対象に行った調査研究では、5人に1人が“隠れ肥満”(BMI 25未満の正常体重なのに、体脂肪率30%以上)だったのです。
 「体重を減らすばかりで、肝心な脂肪が減っていない。減ったのは筋肉で、やせた体に残っているのは脂肪だらけ、というケースもあり得るのです」と石井教授は警告しています。食事制限で炭水化物(糖分)を減らし過ぎると、体はその分のエネルギーをたんぱく質、すなわち筋肉からつくるようになります。その結果、筋肉が減って脂肪はそのまま残り、体重は減っても体脂肪率が高い隠れ肥満になるのです。

歩いて筋肉を使って血糖を取り込む、歩数が増えればHDL増も

 “筋肉を使う”というと、歯を食いしばって行う筋トレを想像しがちですが、健康づくりや健康的なダイエットに必要な筋肉運動は、通常のウオーキングでも十分です。1日30分以上、1週間に3日以上を目安にサッサッと歩きましょう。階段や坂道を歩けば、筋肉による血糖の取り込み効果はさらに高まります。例えば体重56kgの人が階段を3階(高さ10m)まで上ると、2kgのダンベルを持ち、ひじの曲げ伸ばしを700回行った場合の運動量に匹敵するのです。

 ウオーキングを習慣にして1日の歩数を増やせば、HDLコレステロールを増やすことも可能です。HDLコレステロールは余分なコレステロールを血管壁から回収して動脈硬化予防に役立つため、善玉コレステロールとも呼ばれます。石井教授の研究では、歩数が1日1,000歩増えるごとにHDLコレステロールが約0.75mg/dlずつ増加しました。1,000歩は約10分間のウオーキングにあたります。歩数計をつけて、今よりまず1日1,000歩多く歩きましょう。
 さらに石井教授らは、緑茶の主要成分であるカテキンを十分にとると、体重や脂肪が減りやすいことも明らかにしています。十分なカテキン量(1日)は、緑茶5杯に含まれる量が目安になります。

 日常生活のひと工夫で歩数を増やして筋肉をしっかり使い、肥満や隠れ肥満を防ぎ、メタボや心臓病を予防しましょう。

(編集・制作 (株)法研)

【取材協力】
石井 好二郎先生


同志社大学スポーツ健康科学部教授
兵庫教育大学大学院修士課程修了、広島大学助手、北海道大学講師・助教授・准教授を経て、2008年4月より現職。北海道大学大学院医学研究科客員教授、順天堂大学スポーツ健康科学部客員教授を兼任。日本肥満学会、日本体力医学会、日本運動生理学会、日本生理人類学会、日本スポーツ栄養研究会等の評議員を務めるほか、(財)日本体育協会スポーツ医・科学専門委員会調査研究協力者会議委員、(財)日本オリンピック委員会科学サポート部会員、(財)日本陸上競技連盟科学委員・長距離ロード特別対策委員。主な著書に『新版これでなっとく使えるスポーツサイエンス』(講談社)、『抗加齢医療―その最前線の実際』(新興医学出版社)、『からだと温度の事典』(朝倉出版)。

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