高血圧が改善しにくい…腎動脈狭窄症かも?8つの項目をチェック

自覚症状がなく気づきにくい。高血圧などからまず疑って

腎動脈狭窄症は高血圧や重度の腎臓病の原因となり、心臓病にも結びつきやすいため、早期発見と治療が大切

動脈硬化が原因の腎動脈狭窄症が引き起こすのは腎臓病だけではない

 血液の流れを妨げ、臓器の働きを低下させる動脈硬化。心臓(冠動脈)に起これば狭心症や心筋梗塞、脳(脳動脈)で起これば脳梗塞を発症することはよく知られています。動脈硬化はこのほか首(頸動脈)や脚(下肢動脈)、腎臓(腎動脈)など全身の動脈で起こります。腎動脈狭窄症(きょうさくしょう)は、腎臓の動脈が主に動脈硬化によって狭くなる病気です。あまり知られていませんが、全国で患者数約250万人と推計され、決してまれな病気ではありません。

 心筋梗塞や脳梗塞も初期のうちは自覚症状が出にくいのですが、腎動脈狭窄症はとくに自覚症状に乏しく、患者さんが自分で気づくことは難しいとされています。腎動脈狭窄症を放置すると、腎臓に十分な血液が行き届かなくなって腎機能が低下し、重症化すれば慢性腎疾患や腎不全を起こし、人工透析が必要になる場合もあります。

 しかも、腎動脈狭窄症が引き起こすのは腎臓の病気だけではありません。東邦大学医療センター大橋病院の中村正人教授は「腎動脈狭窄症は高血圧を起こしやすく、最近では、狭心症や心不全の原因にもなることが分かってきました」と警告しています。

重症高血圧の10~40%を占め、人工透析導入の原因では3位

 腎動脈狭窄症ととくにかかわりが深いのは高血圧です。厚生労働省『国民健康・栄養調査』によると、日本の高血圧症患者は約3,970万人。日本人の3人に1人が高血圧と推計されています。そして高血圧症の患者さんの約5%に腎動脈狭窄症があり、心不全などを引き起こすような重症の高血圧に限ると、腎動脈狭窄症の人が約10~40%を占めるといわれています。

 腎動脈が狭くなると分泌が活発になるホルモンには、血圧を上げる働きがあるため、腎動脈狭窄症の人は高血圧を招きやすく、改善しにくいのです。中村教授は「薬を飲み続けても高血圧がなかなか改善しない患者さんは腎動脈狭窄症が疑われるため、超音波(エコー)検査やCT(またはMRI)検査など詳しい検査を受けて腎臓の正しい診断を受けたほうがよい」と指摘しています。

 一方、日本で人工透析の治療を受けている患者さんは約28万人、新しく人工透析を始める患者さんは年間3万人以上にものぼります。人工透析治療が必要となる重度の腎臓病患者の5~22%が腎動脈狭窄症を合併しているといわれ、重度の腎臓病になった原因では、糸球体腎炎、糖尿病に次いで、腎動脈狭窄症が3番目となっています。

 さらに、心臓にとくに異常が見当たらなかったり、心臓病の治療をきちんと受けたにもかかわらずなかなか改善しない、いわば原因不明の心不全の患者さんのなかには、腎動脈狭窄症が原因となっている人がいることが明らかになってきました。海外では、心不全で入院している患者さんの35%に腎動脈狭窄症が認められる、との報告もあります。

高血圧などの治療結果から“まず疑う”こと

 腎動脈狭窄症が明らかになった場合、血圧を下げる薬や血液を固まりにくくする薬の服用とともに、血管内治療(腎動脈ステント留置術)がよく行われています。
 これは、狭くなった腎動脈に血管の内側からステント(金属製の網目状の筒)を入れて押し広げることで、血液を流れやすくする治療法です。ステントは脚のつけ根や腕の血管からカテーテル(細い管)の先につけて挿入し、腎動脈内で広げて留置します。一般的に全身麻酔ではなく局所麻酔をして行い、手術時間は1時間程度。翌日には退院できることもあり、患者さんの身体的な負担の少ない手術といわれています。

 中村教授は「腎動脈狭窄症は自覚症状が出ないだけに、高血圧など、ほかの病気の治療結果などから“まず疑う”ことが大切」と強調。下記のチェックリストで1つでも当てはまる場合は、前述の画像検査を受けて早期診断につなげることを呼びかけ、何より全身の動脈硬化を防ぐための生活習慣を身につけることをすすめています。

●腎動脈狭窄症のセルフチェック

(1つでも当てはまれば、腎動脈が狭くなっている恐れがあります)
□薬を飲んでいても高血圧がなかなかよくならない。
□服薬で安定していた血圧が急に上がって高血圧になり、今も悪くなっている。
□高血圧になった年齢が25歳未満か、50歳以上である。
□血液検査で急に腎臓の働きが悪くなったと言われた(クレアチニン値が急に上がった)。
□50歳以上で、医者から(腎臓以外にも)動脈硬化があると言われている。
□医者から腎臓のサイズが左右で異なると言われたことがある。
□医者から腹部血管で雑音があると言われたことがある。
□原因がはっきりしない心不全で入院したことがある。
(『循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2006-2007年度合同研究班報告)』を元に作成)

●全身の動脈硬化を防ぐ生活習慣
(1)たばこは吸わない。
(2)ウオーキングなど、定期的に適度な有酸素運動を実践する。
(3)栄養バランスのとれた、腹八分目の食事を規則正しくとる。
(4)肥満を防ぎ、改善する。
(5)アルコールを飲みすぎない(ビールなら1日中びん1本まで)。
(6)ストレスをため込まず、趣味や運動で発散を。
(7)睡眠、休養を十分にとる。
(8)糖尿病、高血圧、脂質異常などを治療、コントロールする。

(編集・制作 (株)法研)

【取材協力】
中村 正人先生


東邦大学医療センター大橋病院 循環器内科、
心臓血管カテーテル治療センター教授
1982年東邦大学医学部卒業後、同大医学部内科学第三講座、東京大学医学部内科学第一講座、三井記念病院、米国Cedars-Sinai Medical Center留学などを経て、97年東邦大学医学部内科学第三講座講師に。2006年同大医学部医学科内科学講座(大橋)准教授、08年より現職。専門分野は循環器病学、虚血性心疾患、冠動脈インターベンション、末梢インターベンション。日本心血管インターベンション学会理事、日本脈管学会評議員、日本循環器学会評議員、日本心臓病学会評議員、日本血管内視鏡学会理事など、多くの学会で役職を務める。

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