健康診断で尿たんぱくが指摘されたら-腎臓を健康に保つポイント

腎機能検査として重要なのは尿たんぱくと血清クレアチニン値

慢性腎臓病を早期に発見して透析患者を減らすために、健康診断の尿検査と血液検査が有効

尿検査でたんぱく尿が指摘されたら要注意

 原因となる病気にかかわらず、腎機能が慢性的に低下する状態を慢性腎臓病(chronic kidney disease: CKD)と言いますが、そのほとんどは進行するまで自覚症状が乏しく、気づいたときには失った腎機能を元に戻すことができないことがあります。
 腎機能は、尿検査と血液検査によって調べることができます。

 尿検査は健康診断で必ず行う検査の一つで、主に尿にたんぱくが出ていないか(尿たんぱく)、血液が出ていないか(尿潜血)、糖が出ていないか(尿糖)などを調べます。
 中でも尿たんぱくは、腎炎や糖尿病性腎症などの病気の初期に出現することが多く、CKDの診断に重要な検査項目です(表1)。腎臓が正常であれば、体に必要なたんぱくが尿中にもれ出す量はわずかです。そのため、たんぱく尿が多い場合は、再検査で確認する必要があります。
 ただし、過労時や運動後、あるいは多量飲酒の後にもたんぱく尿が出ることがあり、持続するものでなければ心配はないことがしばしばです。

 一般的な尿たんぱく検査では、採取した尿に試験紙を浸し、色の変化でたんぱく尿のおおよその量を判定します。結果は「-」「±」「1+」などで表し、1+以上が陽性とされます。
 現在日本で販売されている試験紙は、尿たんぱく1+は30mg/dL、尿たんぱく2+は100mg/dLに統一されています。また、多くの試験紙では、尿たんぱく ± は15mg/dL、3+は300mg/dLです。1+と2+では3倍以上の違いがあり、1+と3+では10倍以上の差があることになります。

血液検査ではクレアチニン値が重要

 一般健診や特定健診には含まれませんが、腎機能を調べる血液検査には血清クレアチニン値や尿素窒素(BUN)などがあり、特に前者は重要です。

 クレアチニン(Cr)とは筋肉運動のエネルギー源となるアミノ酸「クレアチン」が代謝されてできた老廃物で、腎臓の糸球体で濾過(ろか)され、尿細管ではほとんど再吸収されずに尿中に排泄されます。腎機能が低下するとCrを十分に捨てることができなくなって体内に蓄積するため、血液中の数値は高くなります。

 筋肉運動の代謝産物であるCrは筋肉量に比例した量となり、一般に女性より男性のほうが10~20%高値になります。高齢者の場合は年齢とともに腎機能が低下しますが、筋肉量も減少するため、年齢による変動はほとんどありません。

 Cr値は男性で1.2mg/dl以上、女性で0.9mg/dl以上は、経過観察が必要となる場合があります。一般に中程度の腎不全では1.5mg/dlを超え、5mg/dlを超えると回復は難しくなり、10mg/dlは人工透析を始める目安とされています。
 ただし、Cr値は腎機能が50%以下になるまで上昇しないため、軽度の腎機能障害の判定には適していないことに注意が必要です。

 健康診断の検査結果報告書に、腎機能検査として血清Cr値とeGFRが併記される場合がよくありますが、eGFRはCr値と年齢、性別の3つの因子によって決まります。つまり健診結果にCr値とeGFRが記載されている場合、2つの値は独立した値ではなく、Cr値によって決まる数値であることを理解する必要があります。Cr値が高ければ、eGFR値は低くなります。

 eGFRは、血清Cr値に年齢と性別の要素を加え、おおよその腎機能(推定される糸球体濾過量)を計算したもので、1分間にろ過できる血液量を示します。eGFRが60mL/分/1.73m2未満の場合、腎機能が低下している状態とされます。

CKDによる透析患者を減らすことは、医療費の適正化にも貢献できる

 2008年に始まった特定健診の最大の目的の一つは、糖尿病性腎症からの腎不全による透析患者数を減らすことです。
 日本の維持透析患者(定期的に透析が必要な患者)の数は、2011年には約30万人(人口100万人当たり2,126名)となり、台湾に次いで世界第2位です。
 図1に見るように、かつては透析が必要となる原因疾患の大半を占めていた慢性糸球体腎炎からの透析導入は年々減少し、糖尿病からの透析導入が増え続けています。

 糖尿病、高血圧、メタボリック症候群、肥満、喫煙、腎臓病の家族歴などがある人はCKDになりやすいことがわかっています。生活習慣の改善でこれらのリスクを可能な限り減らすことができれば、CKDによる透析患者数を減らすことができます。このことは、個人の健康を守るだけでなく、増え続けている医療費の抑制や適正化に貢献できると考えられています。

 またCKDの人は末期腎不全で亡くなるリスクより、脳卒中・冠動脈疾患(心筋梗塞など)の心血管疾患で死に至るリスクが高いことがわかっています。健診での尿検査や血液検査は、これらのリスクを早期に発見する上でも重要です。

【参考文献】CKD診療ガイド2012 日本腎臓学会編 東京医学社 2012(http://www.jsn.or.jp/guideline/pdf/CKDguide2012.pdf

【関連コラム】「体の中の“肝腎かなめ”腎臓の仕組みと働き」「糖尿病の合併症治療に必要な透析って何?」

(編集・制作 (株)法研)

【執筆】
石川 隆先生


丸の内クリニック理事長・院長
1981年東京大学医学部医学科卒。1983年東京大学医学部附属病院、都立駒込病院などで臨床研修の後、88年東大病院第三内科文部教官助手。90年カルフォルニア大学サンフランシスコ校ポストドクトラルフェロー。94年に帰国し、東大病院第三内科。99年東京大学保健センター講師。2011年丸の内クリニック理事長・院長に就任。専門は内科学・消化器病学・肝臓病学・健康管理など。著書に『生理学の基本がわかる事典』(監修)(西東社)、『わかっちゃう 図解 ウイルス』(監修)(新紀元社)。
丸の内クリニックのHP:http://www.marunouchi-c.org/

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