現代人を悩ます腰痛

予防にはふだんから腰の筋肉や関節機能の強化を

急性腰痛は「魔女の一撃」、刺すような痛みも数日の安静で軽減。慢性腰痛は腰の骨の老化から。

男女とも症状訴えのトップクラス

 いまや人々の健康上の関心事は「メタボリックシンドローム」に集まっている観がありますが、実際に症状を訴える人が多いのは、実は「腰痛」です。
 厚生労働省による最も新しい調査では、「腰痛」は男性では1000人中82.0人が症状を訴えて第1位、女性では同107.9人が訴えて第2位(第1位は肩こり)にランクされ、「腰痛」が私たちにとって大きな健康問題になっていることがわかります。「そういえば私も腰が痛い」などと気づく人もいるのではありませんか。

不自然な姿勢から腰に急激な負荷がかかる

 腰痛には、急に痛み出す「急性腰痛」と、いつから起こったか定かではないけれどジワっとしたうっとうしい痛みが続く「慢性腰痛」があります。

 急性腰痛といえば、誰でも思い浮かべるのは「ギックリ腰」でしょう。日常動作のちょっとしたはずみに、一瞬息が止まるほどの急激で激しい痛みに襲われます。これを称してヨーロッパでは「魔女の一撃」と呼ぶ国もあるほど。どのようなときに“魔女”に襲われるかというと、中腰や腰をひねるなど「不自然な姿勢をとったとき」、物を持つ・押す・引くなど「瞬間的に力を入れたとき」、動作中によろけるなど「バランスを失ったとき」といったところがおもな一撃シーンです。このような場合に、ふだんあまり使っていなかった腰を支える筋肉に急激な負荷がかかり、捻挫(ねんざ)や軽い肉離れを起こしてしまうのが、一般的に多いギックリ腰です。

 痛みは“一撃”された日がいちばん強く、動くことができないのでただ安静にしているしかありません。やがて、ほとんどの場合は数日のうちに痛みは軽減しますが、痛みが軽くならなかったり、逆にひどくなったりするようなときはほかの原因があるかもしれないので、整形外科を受診する必要があります。ギックリ腰になった場合、まずは次のように様子を見ましょう。
(1)いちばん痛みの軽い姿勢をとって安静にしている。
(2)鎮痛剤の服用や冷湿布(発症直後)を貼ってもよい。
(3)痛みが強くならずほかに症状もなければ、3日間は様子をみてもよい。
(4)時間とともに痛みが軽くなっていくなら、受診しなくてもよい。

 腰の筋肉の捻挫や肉離れほど多くはありませんが、椎間板(ついかんばん)ヘルニアが原因のこともあります。腰の骨を構成する腰椎(ようつい)と腰椎の間にあってクッションの役割をしているのが椎間板ですが、椎間板の中のゼリー状の物質が外に飛び出し、腰の神経を圧迫するために痛みが起こります。神経への圧迫が軽ければ痛みだけですが、強く圧迫されると痛みだけでなく脚のしびれや運動障害も現れるので、できるだけ早めに受診したほうがよいでしょう。

背骨の変形で痛みが慢性化

 慢性腰痛のおもな原因は老化です。老化により背骨が変形したり、椎間板のゼリー状の物質が水分を失って硬くなり、クッションの役割が十分に機能しなくなったりするとジワジワとした痛みが現れるのです。胃腸や肝臓など内臓の病気で慢性腰痛が現れることもあります。安静にしていても痛み、どんな姿勢をとっても和らぐことがないときは、内臓の病気が原因の可能性が大きいですから、医師に相談してください。

 腰痛の予防法として、腰の筋肉、靭帯(じんたい)、関節の機能を強化する体操があります。
(1)縮んだ筋肉や靭帯を伸ばす(2)関節の動きをよくする(3)筋力を増強する、などを目的に、股関節(こかんせつ)、膝関節、お尻、腹筋、背筋、太ももなどに対して行います。予防のための体操なので、痛くなってからではなく、ふだんから行うことが大切です。

精神的なストレスでも起こる

 若い人の慢性腰痛で多くみられるのは精神的なストレスを原因とするケースです。ストレスを受けると筋肉は緊張します。緊張で腰や背中の筋肉がけいれんしたような状態になると筋肉に栄養を送っている血流が悪くなります。このために筋肉疲労が生じ、腰痛につながってしまうのです。したがって、精神的ストレスが原因と推測できるときは、そのストレスを解消しないといくら治療をしてもなかなか腰痛は治りません。

 ストレスが高じて抑うつ状態にまでなってしまうと、心因性の腰痛を訴えることがあります。整形外科的には原因がないのに、心の問題を腰痛にすり替える“仮面症状”としての腰痛です。こうなるとメンタル面での治療も必要になってきます。

【監修】
池田 和男先生


いけだ整形外科院長
昭和30年横浜市生まれ。長崎大学医学部卒業後、東京女子医科大学整形外科講師、明治薬科大学大学院非常勤講師などを経て、平成14年横浜市港北区にいけだ整形外科開設。医学博士。専門領域は関節外科(特に膝関節疾患)、 スポーツ外傷、変形性膝関節症、リウマチ。日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会認定リウマチ医、日本リハビリテーション医学会認定臨床医、日本医師会認定健康スポーツ医など。趣味はジョギング、スキー、スキューバダイビング。
いけだ整形外科 http://www.ikedaseikei.com

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