老後の高齢期の生活はどうなる? 健康状態によって変わる環境

いざというとき役立つ「生活の場」エリアマップ作りのすすめ

お住まいの地域にどんな高齢者施設や住宅があり、どんなとき利用できるのか調べておくと安心です

高齢期は生活や体に合わせて住環境を変えていく必要があります

 住まいは人の暮らしの器、暮らしの基本です。高齢期はライフスタイルや心身の状況を考えながら自分らしく暮らせる生活の場を選ぶことが必要になります。自宅にそのまま、あるいはリフォームして住み続ける、高齢者向けの賃貸住宅やマンションに住み替える、老人ホームや介護保険施設に入所するなど、ひと昔前とは異なり、高齢者の実情やニーズに合わせて住まい方も多様化してきています。

 「病院から退院を迫られたが自宅では介護はできない。」「足腰が弱った一人暮らしの親が同居を拒んでいる。」……こんな悩みを抱えている人も少なくないでしょう。
 介護や病気に直面し混乱している状況の中では、多様な住まいに関する情報を収集し、正しく理解し選択することは容易ではありません。自宅をリフォームするにしても、高齢者施設や住宅に住み替えるにしても、住環境を整える際にはお金も気持ちも大きく動き、それだけに失敗や後悔をするリスクも大きいともいえます。

お住まいの地域の「生活の場」エリアマップを作りましょう

 そこでおすすめしたいのは、元気なうちから、地域で利用できる「生活の場」エリアマップを描いておくことです。お住まいの近くにはどのような施設や高齢者住宅があり、どんなときに活用できるのでしょうか。地域によって利用できる社会資源の数も種類も異なります。次のことを調べておくと、どんなときにどんな施設が活用できるのかがイメージでき、いざというときに役立ちます。

 種類(病院、施設、住宅)/入居条件(自立、要介護)/費用(入居費用、毎月かかる費用、支払いの方法など)/サービスの内容(介護、医療、リハビリ、食事、生活支援)/利用期間(長期、短期など)/設備/入居までの時間  など

 これらを調べるなかで、たとえば「介護が必要になったら利用しよう」と思っていた施設は、実は待機者が多く入居までに数年待ちであることがわかったり、逆に、あまり気に留めていなかった近所の有料老人ホームが、介護付きで終(つい)の住処(すみか)となること、金額やサービスも納得いくものであることがわかって安心できるかもしれません。自宅をバリアフリーにリフォームして在宅介護を考えている場合でも、いざというときの安心と考えれば無駄にはなりません。

 高齢期の生活の場に関する情報を一括してとれるところは、残念ながらありません。地域包括支援センターや市区町村の窓口、信頼できる相談機関、インターネット情報などを組み合わせて、作成してみましょう。地域全体を眺められる材料があることで、目の前の情報にあわてて飛びつかないですみます。大切なことは一つの情報を得る前に全体を理解すること。1枚のエリアマップがあると家族会議にも役立ちます。

 以下に、高齢者が健康状態によって利用できる病院・施設・住宅を図に示します。種類や財源による分類は厳密なものではなく、個々の施設や住宅で、また利用者の状況によっても異なってきます。お住まいの地域の施設や住宅の名前、件数、利用状況などを図に書き込んでいくと、地域の全体像がみえてきます。

健康状態や求めるライフスタイルによって異なる高齢期の生活の場

 近年、入院期間の短縮化が進んでいます。骨折や脳梗塞などの病気で入院するのは急性期対応の一般病床で、医療保険の対象となります。急性期の治療がすみ病状が落ち着くと、療養病床を抱えた療養型医療施設へ転院するか、介護老人保健施設(老人保健施設)などに移る仕組みになっています。それぞれの機能を知っておき、入院した際には、医師に入院期間のめどを尋ねておくことも必要です。

 老人保健施設は病院から在宅までの中間施設とされ、病状が安定している方に、リハビリや介護、看護を提供します。入所期間は原則3~6カ月とされています。永久的に入所できる住まいの場所ではありませんので、自宅に戻ることが難しい場合には体の状態に合った住環境をさらに選択する必要があります。

 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)は介護が必要な高齢者が介護サービスを受けながら長期にわたって生活できる介護保険施設です。ところが、この施設は全国に39万人もの待機者がいて申し込み後すぐに入所できる状況ではありません。また、入所にあたっては審査が行われ、要介護度の高い方が優先されます。要支援の方は入所の対象にはなりません。

 また、近年は有料老人ホームや高齢者賃貸住宅などが増加し、元気な高齢者も新しい住まい方を選ぶことができる時代となってきました。有料老人ホームは介護付、住宅型、健康型の3種類があり、入居条件や入居後に要介護状態になった場合の対応が異なります。

 これら高齢期の生活の場となる施設や住宅の概要を表に示します。図と同様、分類は厳密なものではありません。

 このように高齢期に利用できる施設や住宅にはさまざまな種類があり、それぞれ機能やサービスが異なります。高齢期の生活の場を選ぶ際には、どんなシニアライフを計画しているのか、生活像を明確にし、自分のニーズをよく知ることがポイントです。
 お金や心の準備には時間がかかります。若いうちから、親のためだけでなく、自分のために知って備えておくこともライフプランを考える上でとても大切なことです。高齢期の豊かな暮らしのために、今から準備しておきたいものです。

(編集・制作 (株)法研)

【執筆】
川上 由里子先生


介護コンサルタント
ケアマネジャー、看護師、福祉住環境コーディネーター2級、産業カウンセラー。1984年より13年、大学病院、高齢者住宅(聖路加レジデンス)などで看護師として勤め、現在は三井不動産(株)ケアデザインプラザにて、シニアライフ提案のコンサルティングや講演を行う。著書に『介護生活これで安心』(小学館)。08年5月より、ニッポン放送「ラジオケア・ノート」(毎月第4週の月~金)にレギュラー出演中。08年春より自身も父親の遠距離介護を体験中。

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