海外出張時の健康管理は大丈夫?-押えておきたいポイント6つ

海外出張するビジネスマンが留意したい7つのポイント

予防接種、慢性疾患の管理、下痢と発熱、滞在中の生活習慣、医療機関受診、メンタルヘルス、上司の支援など

必要な予防接種は、渡航先、渡航目的、滞在期間などによっても異なる

 すでに多くの企業が海外進出を遂げていますが、今後さらに、グローバル化のなかで海外出張は増えるでしょう。また年齢を問わず、若い人も年配の人も出張が求められ、しかも短い出張の間に多くのミッションが求められています。健康管理なくして海外出張の成功はありません。
 今回は、海外出張するビジネスマンが最低限留意したい7つのポイントをご紹介します。仕事に限らず留学や観光などで海外に出かける人にも、きっと役立てていただけるでしょう。

1.出発前のワクチン接種をお早めに
 多くの発展途上国においては、A型肝炎、B型肝炎、日本脳炎のほか、破傷風、狂犬病、腸チフスなどのワクチンが必要になることがあります。ただし、「予防接種が必要な国」でも首都などの大都市のみに行かれるような場合、どこまでのワクチン接種をすればよいのか判断するのはなかなか難しいことです。

 たとえば、インドのデリーに3日間滞在して会議に出席するだけで、基本的に食事は比較的清潔な外国人向けのレストランでとるといった場合、A型肝炎のワクチンを接種するかどうかはなかなか難しい選択です。しかし、その後もほかの国に出張する可能性があれば、この機会に接種しておくというのは「賢明な」判断です。
 同じインドのデリーでも、郊外にある工場建設の応援に1カ月間滞在する場合は、A型肝炎は接種しておきたいです。一方で、基本的な業務において感染することのないB型肝炎や、犬に咬まれなければ感染しない狂犬病のワクチン接種などを出張者に求めるかどうかの判断は難しいです。

 最後は勤務先との間で、費用負担や何を接種するかについて相談ということになると思います。勤務先としては安全配慮義務もありますので、出張先に感染リスクがある場合には予防接種の費用を負担することが求められ、また健康管理室などと連携してどのワクチンをいつ接種したかを把握しておく必要があります。
 勤務先が費用を負担してくれない場合は自費で接種ということにもなるかもしれませんが、ワクチン接種には1回5000円から1万円以上もかかり、それなりの出費になります。

 どのワクチンを接種するかの判断を医師以外の人がすることは難しいので、トラベルクリニックなどを受診して相談するとよいでしょう。トラベルクリニックでは、さまざまな目的で海外に出かける人を対象に、渡航前後の健康相談や予防接種、英文診断書の作成などを行っています。予防接種を必要とする出張の場合には、2カ月ぐらい前には相談を開始するのが理想です。
【参考】日本渡航医学会トラベルクリニックリスト

健康管理は渡航前から、発熱したときは医療機関の受診を

2.慢性疾患の治療は普段からしっかりと
 高血圧や糖尿病などの慢性疾患で治療をしている人は、海外出張について主治医と相談しておきましょう。状態があまりよくない場合は出張を取りやめにしなければいけないこともあるので、普段から十分に治療しておくことが大切です。
 出張の際には内服薬を十分に確保しておきましょう。現地での滞在が長くなる場合には、薬を多めにもらっておく必要があります。なかなか英文の紹介状(診断書、処方薬証明書など)を書いてくれる主治医は少ないのですが、出張が多い場合や長期赴任の可能性がある場合には、早めに相談して持参するのがよいでしょう。

3.出張先でよくかかる病気―下痢と発熱
 出張先で最も多い病気は下痢症です。水や食事が合わなかったりすることでおなかをこわすことがあります。さすがに発展途上国で、日本と同じ感覚で水道水を飲む人はいないと思います(高性能の浄水器を付ければ飲めないこともないですが)。下痢のすべてが感染症によるものとはかぎりません。水の質が変わるだけでも下痢をすることがあります。発熱を伴う下痢の場合は感染症の可能性が高いので、現地の医療機関の受診を考慮しましょう。

 下痢をしたら、まずは脱水にならないように水分をしっかりとります。目安は普段よりも排尿が多い程度になるまでです。水だけでなく、できるだけ塩分を含んだ食べ物もとりましょう。経口補水液(脱水時に不足する電解質と、吸収を助ける糖質を含む飲料)が手に入れられるとよいのですが、自分で作ることもできます(水1リットルに対して砂糖大さじ4、食塩小さじ1/2を加える)。しかし、出張先のホテルで作るのは難しいと思いますので、できるだけ消化の良い食事から塩分や糖質を摂取するようにしてください。

 発熱も多くの人が経験します。発熱の原因はさまざまで、自分で特定することは難しいので医療機関の受診を積極的に考慮しましょう。発熱時も下痢と同様に脱水にならないように水分摂取を積極的に行います。

4.滞在先では良好な生活習慣を心がける
 できるだけ日本にいるときよりも良い生活習慣であることが望ましいのですが、簡単ではないでしょう。時差ボケしていても会議があったり、会議後のおつきあいでお酒を飲まなければならなかったり、暑すぎて運動できなかったりするでしょう。
 海外のホテルはスポーツジムを備えていることが多いので、運動靴や運動できる服などを持っていき、15分から30分でも軽く汗をかくような運動をするとよいでしょう。

5.急な病気の際に受診ができる準備を
 下痢や発熱以外でも急に手足がしびれて動かなくなったとか、どこかが痛くなったということを想定して、一度は医療機関を訪ねておくとよいでしょう。首都などの大きな都市には外国人が受診してもある程度の質を得られるところがあります。インターネットなどで訪問国の情報収集を行う際に病院情報も得ておきましょう。また海外旅行保険の問い合わせ先などもわかるようにしておき、いざとなったら相談しましょう。
 日程が動かせないぐらい予定の多いこともあるでしょうが、何かおかしいと思う症状があればすぐに受診することをおすすめします。

滞在中は心の健康管理も大切。国内からも支援を

6.意識的にストレス発散を
 最後にストレス対策です。海外というだけでもストレスになるのに加え、単独での出張で孤独であったり、訪問先でトラブルに巻き込まれたりなど、いろいろとあるでしょう。「自分は大丈夫」と過信することなく、意識的にストレス発散に努めましょう。週末にしっかり休むことはもちろん、普段よりも睡眠時間を多めにとる、少し運動をするといったこともすすめられます。
 もしも気持ちが沈む、自分を攻めるような言葉が浮かぶ、体がだるい、眠れないといったようなことがあれば勤務先とも相談し、早めの帰国も考慮しましょう。うつのチェックリストなどがサイトにありますので、セルフチェックとしてやってみることは良いでしょう。
【参考】「うつ病~こころとからだ」サイト 症状チェックシート

7.上司は「健康第一」であることを伝える
 勤務先の上司は、出張する部下に「健康第一」であることをしっかりと伝え、何かあった場合は勤務先としても迅速に対応できるようにしておきましょう。2週間以上の出張の場合は、時々電話をするなどして声かけや相談にのりましょう。

(編集・制作 (株)法研)

【執筆】
和田 耕治先生


独立行政法人国立国際医療研究センター国際医療協力局 医師
2000年産業医科大学医学部卒業。臨床研修医、企業での専属産業医を経て、06年 McGill(マギル)大学産業保健修士、ポストドクトラルフェロー。 07年北里大学医学部衛生学公衆衛生学助教、09年講師、12年より准教授。13年8月より現職。専門は公衆衛生、産業保健、健康危機管理、疫学。医学博士、労働衛生コンサルタント(保健衛生)、産業保健修士、日本産業衛生学会指導医。著書に『保健・医療従事者のための自然災害において被災者や自分を守るためのポイント集』、『医療機関における暴力対策ハンドブック』(ともに中外医学社)など多数。

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