胃がんのリスク5倍! ピロリ菌ってなに? 予防のためにできること

厚生労働省の調査で、ピロリ菌と胃がんの関係があきらかに。

胃の中に住むピロリ菌は、胃炎や胃潰瘍、さらに胃がんになるリスクを高めます。

40歳以上の70%が感染!?

 今年の9月初め、厚生労働省の大規模疫学調査により、ヘリコバクター・ピロリ菌と胃がんとの因果関係が発表されました。厚生労働省では、1990年から15年にわたり、全国の40~69歳の男女約4万人を追跡調査。それによると、ピロリ菌の感染者は非感染者にくらべ、5.1倍、胃がんになりやすいことがわかりました。また、過去に感染歴のある人の胃がんリスクは10.2倍に上っています。

 ピロリ菌感染があっても、胃がんを発症する人は、ごく一部ですが、なんらかの因果関係があることが濃厚になったといえるでしょう。ピロリ菌は、生活環境の衛生面などの関係から、40歳以上に感染者が多く、70%が感染しているともいわれています。あなたがその年齢でなくても、気になるピロリ菌について、知っておきたいものですね。

萎縮性胃炎を引きおこす

 ヘリコバクター・ピロリ菌は、胃に住みつく細菌で、経口によって感染するといわれています。感染すると、胃粘膜に定着して毒素を出し、粘膜を損傷します。そのため、胃潰瘍・十二指腸潰瘍はもちろん、萎縮性胃炎を引きおこし、じりじりと胃の機能が低下してきます。

 萎縮性胃炎が長期化すると、胃粘膜が萎縮して、胃液や粘液を分泌しない状態になります。胃がんを発症した人の胃粘膜を調べると、ほとんどの人に萎縮性胃炎があり、胃がんの前がん病変のひとつといわれています。
 とはいえ萎縮性胃炎の患者のうち、1年間に胃がんを発症する人は0.4%ほどで、萎縮性胃炎と胃がんの因果関係は十分に解明されていません。私達が心がけたいのは、ピロリ菌に感染しているかどうかの検査を行うことと、感染予防です。

検査は保険の適用に

 厚生労働省では数年前から、ピロリ菌の検査、除菌を、胃・十二指腸潰瘍にかぎり、保険の適用にしています。
 ピロリ菌の検査は、消化器科のある総合病院などでは、ほとんどのところで可能です。検査方法には、内視鏡を使用して胃の組織を採取する方法と、内視鏡を使用せず、診断薬を服用し、呼気によって診断する方法(尿素呼気試験法)と、血液や尿中のピロリ菌に対する抗体を測定する方法(抗体測定法)があります。

 ピロリ菌に感染していると診断されると、抗生物質などが処方され、それを服用すると、高い確率で除菌できます。免疫力が完成している大人の場合は、再感染は心配するほどではありません。夫婦の片方が感染していても、ふつうの日常生活では感染の可能性は低いとみていいでしょう。

 ただし、免疫力が未完成の幼児の場合は、注意が必要。ピロリ菌は経口で感染しますから、噛み砕いたものを子供に口移しで与える、などは避けた方がいいでしょう。

(「クリニックQ&A2006夏」法研より)

【監修】
浅香正博氏


北海道大学病院副院長・消化器内科教授
昭和47年北海道大学医学部卒業。同大学医学部付属病院第3内科助手を経て、平成6年同大学大学医学部教授。平成11年北海道大学医学部附属病院光学医療診療部部長、平成12年同大学医学部附属病院卒後臨床研修センター長、平成13年北海道大学大学院医学研究科中央研究部部長を経て、平成17年より同大学病院副院長。 日本へリコバクター学会副理事長 日本消化器病学会財団評議員兼北海道支部長

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