口の開け閉めで音がするのは顎関節症かも-9つの原因と予防法

あごが鳴る、口が開けづらい、痛い― が主症状

むし歯、歯周病につづく「第3の歯科の病気」顎関節症。予防と再発防止はセルフケアで

20~30代の女性に多く再発しやすい

 口を開け閉めするとき「カクッ」「パキン」「ジャリジャリ」などと音がする、口が開けづらい、食事中にあごが痛む、といったことはありませんか? これらの症状が一つでもあったら、顎関節症(がくかんせつしょう)かもしれません。顎関節症は若い女性に増えている病気で、最近は小中学生にまで低年齢化しています。

 顎関節症はあごの関節やそれを支える筋肉や靭帯(じんたい)、神経の不調によって起こるさまざまな症状をいいます。あごの関節は、耳の穴の前方1センチくらいのところにあり、ちょうつがいのように働いてあごを開けたり閉めたりしています。この関節がずれてちょうつがい部分のスペースがきつくなると、あごを開閉したときに音がします。放っておくと関節が炎症を起こして痛んだり、関節が引っかかる感じで口を大きく開けることができなくなります。

 また、あごの関節を動かす筋肉は首や肩とつながっているため、負担がかかりすぎると、顔や首、肩の回りの筋肉などにも負担がかかります。さらに、バランスの悪いかみ方やあごの動かし方は、ホルモンの乱れや自律神経失調症にみられるのと同じような症状をひき起こすこともあります。
 そのためあごの症状だけでなく、頭痛、肩や首の凝り、手足や腰のしびれ、めまい、耳鳴り、胸の痛み、鼻詰まり、吐き気、食欲低下、疲労感、イライラ、不眠など症状が全身におよぶこともあります。つまり顎関節症は、単なる関節の病気ではなく、悪化すると全身の不調につながってしまう病気なのです。

 軽いものは放っておけば治りますが、再発を繰り返す人が多いのも特徴です。重症になると食事がとれなくなって、手術しなければならないこともあります。症状が1週間以上続く場合、またあごの鳴る音が変わってきた、痛みがひどくなった、指2本分が開けづらくなったときは、顎関節症に詳しい歯科口腔外科を受診しましょう。

食いしばり、精神的ストレス、姿勢も原因に

 ストレスに耐えているとき、また仕事やスポーツに頑張っているとき、知らないうちに歯を食いしばっていることがあるでしょう。顎関節症の原因は、精神的ストレス、あごに過剰な負担をかける食いしばりなどのクセ、かみ合わせの異常やあごの損傷などさまざまで、これらが積み重なって許容限度をこえたときに起こると考えられています。許容限度には個人差があり、子どもや若い女性は靭帯が軟らかく伸びやすいため、ちょっとした負担で関節がずれて症状が起こることが多いのです。

 具体的には以下のようなことが重なり合って発症することが多いため、該当する項目の多い人は、注意して早めに改善しましょう。

●歯ぎしり、食いしばり、歯をカチカチと鳴らすクセがある→顎関節に過度の負担をかける
●ストレスがある→精神的な緊張は筋肉を緊張させ食いしばりや夜間の歯ぎしりの原因になる
●幼いころからのクセ、あるいはむし歯や歯周病などが原因で、左右どちらか一方ばかりでかむ→片側だけに多くの負担がかかる
●歯並びが悪い、歯の不適切な治療や抜歯後の放置などによりかみ合わせが悪くなっている
●すぐにほおづえをつく、姿勢が猫背、うつむきがち、うつぶせ寝のくせがある→あごや首の筋肉に負担をかける。いつも同じ側のあごを下にして寝ると、あごが変形することも
●横向きでテレビを見たり、同じ足を組んで座ることが多い
●鼻炎などのために口で呼吸していることが多い→口呼吸は虫歯や歯周炎、かみ合わせが悪くなる原因に
●楽器の演奏などであごを酷使している
●スポーツや事故などで打撲を受けたことがある

 また、顎関節症は若い人に多いことから、軟らかい食べ物を好む食生活によって、あごの筋肉が衰えていることも原因ではないかと考えられています。普段からやや硬いものも意識して食べることが必要でしょう。

セルフケアで予防と再発防止を

 顎関節症の原因の多くが、日常生活のなかで何気なくしている動作やクセであることがわかっていただけたでしょうか。あごに負担をかけているという自覚がないままくり返されるため、治療で治ったと思ってもまた再発することが多いのです。
 顎関節症の治療は、原因がむし歯や歯周病であれば、それらを早期に治療することが第一ですが、多くの場合、患者自身が自宅で行うセルフケアが中心になります。
 次のようなセルフケアを行って、顎関節症の予防と再発防止に努めましょう。

あごが急に痛くなったとき
●できるだけ口を開けないようにする
●しばらく硬いものを食べない(おじや、スープなどがよい)
●痛むところを冷やし、痛みが落ちついたら温める(冷湿布と温湿布は気持ちよいと感じる方を選ぶ。冷湿布は少し冷たい程度のタオルで広めに冷やすと効果的)
●睡眠中の食いしばりや歯ぎしりを防ぐため、軟らかいマウスピース(スプリントともいい、歯科医に作ってもらう)を歯につけて寝る
●鎮痛剤を飲んで食事しない(痛みを感じないので無理な負担をかけ、さらに悪化する)

慢性的に口が開けにくかったり、あごが痛いとき
●ふだんからあご回りをリラックス、食いしばりをしない。舌先を上の前歯の歯ぐきに当てると防ぎやすい(上下の歯が接触するのは物を食べたり話をするときだけ。通常は歯を接触させないようにし、気づいたら上下の歯を離す)
●食べ物は両側の奥歯を使ってかむ
●ほおづえやうつ伏せ寝など、あごの片側だけに負担をかけることをしない
●低い枕であお向けに寝る
●ときどき姿勢をチェックして、猫背やあごを突き出す姿勢になっていないか注意する。同じ姿勢を長時間続けないようにし、ときどき肩回しや肩の上げ下げ、首を回すなどのストレッチを行う
●対人関係のストレスや過労を避け、趣味やスポーツで気分転換したり、ボーっとしたりしてリラックスする時間をもつ
●歯を食いしばるようなスポーツや、重いものを持ち上げる作業はしない
●あごのマッサージや口の運動をして血行を良くする
●ウオーキングなどの全身運動をして、血行を良くする
●マウスピースを歯につけて寝る

 重要なのは、あごに負担をかけるクセを日ごろから自覚して注意し、気づいたら改めることです。再発を防ぐためには、症状が治まってもケアをやめないこと。専門医に相談し、筋肉を鍛えるあごの体操などを組み合わせ、根気よく治していくことが大切です。

(「ジャストヘルス」、法研より)

【監修】
根間英人氏


根間デンタルオフィス院長
1953年生まれ。神奈川歯科大学卒業。1990年、根間デンタルオフィス開業、現在に至る。

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