じわじわと増えている性感染症1
普通の人が普通のセックスで感染する率が高い
性感染症は「性生活がある人の生活習慣病」といえるほど身近なもの。コンドームによる感染予防は必須です
(2007年08月07日)
若い世代に広がる性感染症
自分には性感染症なんて関係ない―遊んでいるわけではないし、パートナーも信頼できる人だから。たいていの人はそう思っています。
それなのに、もしパートナーから感染したら……。裏切られた気持ちで、とても傷つくでしょう。でも、必ずしも浮気やフーゾクが原因とは限りません。自分と知り合う以前のパートナーから感染していて、それに気づかずうつしてしまった、というケースも珍しくありません。いまや医療現場では性感染症はごくありふれた病気と認識されています。「遊んでいる人」でなくても、性生活がある人なら誰もがかかる可能性がある状況になっています。
性感染症(STD=Sexually Transmitted Disease)とは、セックスまたは性的な接触によって人から人へうつる病気のこと。代表的なものにエイズ、性器クラミジア感染症(以下、クラミジア感染症)、淋菌感染症(以下、淋病)、性器ヘルペス、尖圭(せんけい)コンジローマなどがあります。現在、患者数がいちばん多い年齢層は、女性では20代前半、男性では20代後半です。
性感染症が10代に急増しているというニュースが大きく取り上げられたのは、1999年のことでした。性感染症の発生件数がそれまでに比べて、6〜8割も増えていることが、厚生労働省の「感染症発生動向調査」で発表されたのです。
近年、とくに患者増が著しいのが、クラミジア感染症と淋病です。95〜98年の3年間で15〜19歳の男性の患者数が8割増、女性も6割以上増えました。99年以降は、クラミジア感染症では女性、淋病では男性が占める割合が圧倒的に多くなっています。クラミジア感染症は自覚症状があまりないため、女性の場合、病状が進行して子宮外妊娠や不妊症の原因になることもあるリスクの高い病気です。
また、日本ではエイズの感染者数・患者数が、先進国の中で唯一増加傾向にあります。
性感染症にかからないために
感染のないセーフセックスのために、次のようなことを心がけましょう。
●性感染症の最大の予防策はコンドームの使用
性感染症の原因となるウイルスや細菌などをブロックするために、コンドームの使用は必須です。とくに淋病、クラミジア感染症、エイズなど、精液や膣分泌液で粘膜感染する性感染症の予防には有効です。
なお、感染は粘膜と粘膜がふれることでも起こります。また、射精前にわずかに出る分泌液にも細菌やウイルスが含まれています。コンドームは射精直前につけるのではなく、挿入前につけるようにしましょう。
●口からも感染することを忘れずに
「口からはエイズその他の性感染症はうつらない」というのは間違った情報です。のど、直腸などの粘膜からも感染するため、オーラルセックスやアナルセックスでもコンドームは必要です。口腔内、肛門に傷があれば、感染のリスクはいっそう高くなります。
また、クラミジア感染症では、唾液にも病原体が含まれているため、ディープキスでも感染します。
●不特定多数の相手とのセックスを避ける
よく知らない人、たくさんの人とセックスをする生活を続けていると、それだけ感染のリスクが高くなります。
●血液がつく可能性のあるかみそりや歯ブラシは共有しない
血液を媒介してうつるエイズや梅毒などは、感染者の血液がついているものを介してうつることがあります。カミソリや歯ブラシの共用は避けましょう。
治療はパートナーも一緒に
もし万が一、性感染症にかかってしまった場合、パートナーにも感染している可能性が高いので、必ず検査を受けてもらってください。事情によっては、感染していることを打ち明けにくいかもしれませんが、秘密にしていて、パートナーの病状が悪化するようなことがあれば、いっそう相手の心身を傷つけ、信頼を失うことになるでしょう。
また、自分だけ治療しても、パートナーに病原体が残っていると交互にうつしあう“ピンポン感染”をくり返すことになるので、治療の意味がありません。パートナーと一緒に治療することが原則です。
男性は泌尿器科、女性は婦人科を受診します。治療では、抗生物質や抗ウイルス剤などを服用します。外用薬を使うこともあります。治療は1〜2週間、なかには数カ月かかることもありますが、薬で症状が消えても、医師が治療を終えてよいと判断するまで、通院を続けましょう。治ったように思えても、体内に病原体が残っていれば、パートナーに感染させてしまいます。確実に治っていることを確認するために検査を受けるようにしてください。
エイズの検査は、保健所などで無料で受けることができ、感染が疑われる場合は専門の医療機関を紹介してもらえます。
次回は、主な性感染症の特徴と予防・対策について紹介します。
(「へるすあっぷ21」法研より)
丸本百合子先生
百合レディスクリニック院長
産婦人科医師。医学博士。東京大学医学部附属病院分院、同愛記念病院勤務を経て、百合レディスクリニック院長。講演や著作活動も行う。女性が自分の性とからだのことを自分自身で選択するためのテーマで、講演や著作活動を行っている。著書に、『からだを感じよう』(クレヨンハウス)、『更年期を美しく、らくに過ごす』(女子栄養大学出版部)、『女の子のこころとからだ』(ゆうエージェンシー)など多数。

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