ヘッドホン難聴にご注意

大きな音を長時間聴くと内耳を傷める危険が

気づかないうちに症状が進行するのがヘッドホン難聴の怖さ。リスクをよく自覚して、耳を守りましょう。
(2007年09月18日)

ヘッドホンで難聴に!

 最近の携帯音楽プレーヤーは、本当に高機能になりましたね。何百、何千曲と保存でき、長時間の連続使用も可能です。体を動かしても音がぶれないため、ジョギング中に聴いている人も見かけます。
 でも、日常的にヘッドホンやイヤホン(以下、ヘッドホン)で音楽を大きな音で聴く人は難聴になりやすい、という怖い事実があることをご存じでしょうか。

 音を原因とする音響性難聴の原因となる行為として、次の3つがあげられます。
(1) 大きな音を聞く。
(2) 長時間にわたって音を聞く。
(3) 周波数が高い音を聞く。
 ヘッドホンで音楽を聴く人は、この3つのリスクをすべて満たす状況になりやすいのです。

 まず(1)ですが、外出中に音楽を聴く場合、周囲がうるさくなってくるとつい音量を上げてしまい、知らないうちにとても大きな音になっているということになりがちです。音が大きいほど耳が受けるダメージも大きくなります。

 (2)の音楽を聴く時間の長さも問題です。最近の携帯音楽プレーヤーは大量記憶が可能で、充電電池も長持ちするため1日中でも聴き続けることができます。でも、これはたいへん危険なことです。人間の耳は、騒音にさらされてダメージを受けても、騒音から離れることである程度は回復しますが、耳を休めることなく酷使を続けるとダメージは定着し、難聴が進行していくことになるからです。

 (3)については、耳の奥にあって音を聞くのに重要な役割をする内耳は、周波数の高い音によってダメージを受けやすいという特徴があります。音が空気中を伝わってくる間に高周波帯は弱まりますが、ヘッドホンで聞く場合はあまり弱まることなく伝わってきます。そのため、スピーカーを通して聴くよりも、ヘッドホンの音を聴いた場合のほうがよりダメージを受けやすくなります。

 通勤電車などでヘッドホンを使って音楽を聞く人が大変多くなりましたが、使い方によっては難聴になることを知っておかなくてはいけません。

ダメージを受けた聴力は元に戻らない

 音響性難聴は、内耳にある蝸牛(かぎゅう=カタツムリのような形をした音を感じる器官)が障害を受けることで起こります。蝸牛にある感覚細胞は音を振動で感じ、これを電気信号にして脳に伝えます。しかし、大きな音を聞いたときの大きな振動によって、蝸牛の中の血流が滞ったり、感覚細胞の一部が脱落して失われてしまうことがあります。失われた感覚細胞は再生できないため、いかに早期に治療するかが重要になります。

 難聴が進行するときは、日常会話などには含まれないような高い音からだんだんと聞こえが悪くなります。そのため、聴力の悪化に気づかないまま中音や低音まで聞こえにくくなってしまうことがあります。そうなると、もはや治療で聴力を取り戻すことはできません。聴力の悪化は早期に発見し、それ以上進行しないようにすることが大切なのです。
 ヘッドホンでよく音楽を聴くという人は、耳鳴りがしたり、耳がつまる感じなどがあれば、すぐに耳鼻科を受診するようにしましょう。

ヘッドホン難聴を防ぐには

 ヘッドホン難聴にならないためには、節度のある聴き方をすることが一番です。次のようなことに気をつけましょう。

●耳を休ませる時間をつくる
 耳にも休息時間が必要です。ヘッドホンで音楽を聴かないというだけではなく、テレビやラジオの視聴、パチンコ店やカラオケ店などのにぎやかな場所でも、合間に静かな環境ですごす時間をつくりましょう。耳栓を使って、音から耳を守るのも有効です。音楽好きな人であればこそ、大切な耳をいたわりましょう。

●音量を上げすぎない工夫をする
 ヘッドホンのタイプによって、次のことを目安に音量を調整してください。
オープンエア型(通常のタイプ):静かな室内でヘッドホンで音楽を聴きながら会話ができる程度に音量を調節し、騒がしい場所でもその音量を上げないようにします。
 クローズド型(音もれ防止タイプ):片側のヘッドホンをはずし、はずしたほうから聞こえてくる通常の話し声と同じ程度に聴こえるよう音量を合わせます。

●体調が悪いときはとくに注意
 耳の丈夫さには個人差があります。同じように大きな音で音楽を聴き続けても、ダメージを受ける程度には差があります。花火大会やライブの後などに、音がわんわん反響するように聞こえた経験があるという人は、耳が弱いと考えられます。
 耳があまり丈夫ではない人が、飲酒や疲労、睡眠不足などで体調が万全でないときに大きな音を聴くと難聴になりやすいので、体調が悪いときはとくに注意しましょう。

(「健康のひろば」法研より)

コラム
医療と健康
ジャンル
身近な病気
【監修】
小川郁先生

慶應義塾大学医学部耳鼻咽喉科教授
昭和56年慶應義塾大学医学部卒業。同大学医学部助手(耳鼻咽喉科)、ミシガン大学クレスギ聴覚研究所研究員、慶應義塾大学医学部耳鼻咽喉科専任講師を経て、平成14年より現職。日本耳鼻咽喉科学会専門医、日本気管食道科学会認定医。日本耳鼻咽喉科学会理事、日本気管食道科学会常任理事、日本聴覚医学会理事、日本耳科学会理事、国際聴覚医学会理事など、国内外の学会で役職を務める。著書に『最新 めまい・耳鳴り・難聴』(主婦の友社)など。

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