若い世代に増えている潰瘍性大腸炎-完治が難しい病気って本当?

再発をくり返し、大腸がんのリスクが高まる

適切な治療と生活習慣の改善で、健康な人と変わらない生活が可能。軽症のうちに専門医の治療を受けましょう

大腸の粘膜にびらんやかいようが

 腸内の善玉菌の働きが腸内環境を整え、健康と美容に重要なはたらきをしていることが広く知られるようになり、乳酸菌やビフィズス菌の入った健康食品が人気です。それだけ腸の健康に気を配る人が増えているのでしょう。しかしその一方で、これまで日本人には少なかった腸の病気が急増しています。

 かいよう性大腸炎は、大腸の粘膜が炎症を起こし、粘膜がただれたりかいようができる病気です。もともと欧米に多く見られた病気で、米国の患者数は約100万人ともいわれています。欧米に比べると少ないものの、最近日本でも患者数が急増し、ここ十数年で5倍以上の、8万人以上となっています。発症年齢のピークは20歳代の若年層ですが、子どもから高齢者まで発症し、最近では働きざかりの中高年で発症する人が増えています。
 症状は下痢や血便ではじまり、やがて血便に膿(うみ)や粘液が混じり、下腹部が痛みます。進行すると、下痢の回数の増加に加えて、かいようからの出血による貧血、発熱、吐き気、嘔吐(おうと)、体重の減少などの症状も加わります。皮膚や目、関節などに合併症を起こすこともあります。

 この病気は、よくなったり悪くなったりをくり返すのが特徴で、治療で症状が改善しても、しばらくすると再び悪化し、完全に治ることは多くありません。いったん発症すると、ずっとつきあっていかなければならない病気です。
 現在のところ、原因がよくわかっておらず、完治にいたる治療法も確立していません。そのため、国の特定疾患(難病)に指定されており、申請すると医療費の補助が受けられます。

原因は免疫の異常?

 かいよう性大腸炎は、日本では1970年以降に患者が急増していることから、食の欧米化による肉食や脂肪の摂取が関係しているのではといわれていますが、はっきりした原因はわかっていません。大腸粘膜に対する過剰な免疫反応、細菌に対する抵抗力が弱い遺伝的素因、腸内細菌の関与など、さまざまな要因が複雑にからみあって発症すると考えられています。

 しかし、原因不明の難病といっても、かいよう性大腸炎はきちんと治療をすれば、普通の人と同じように生活することが可能です。治療では、大腸の炎症を抑えて、下痢や血便、腹痛などのつらい症状が出ないようにすることを目標に、5アミノサリチル酸製剤やステロイド剤などを使った薬物療法を行います。病状によっては、免疫抑制剤や白血球除去療法を用いることもあります。多くの患者さんは、こうした内科的な治療で症状が治まりますが、改善しない場合は、大腸を摘出する手術が必要になります。

   また、かいよう性大腸炎を発症してから10年以上たつと、一般の人より大腸がんを発症する危険性が数倍高くなりますので、定期的な検査を受ける必要があります。

食事、過労やストレスに注意

 かいよう性大腸炎は、発症から5年くらいたつと、ひどい症状が出る人は減ってきます。最初の5年間に、治療や日常生活の管理によって、病気を悪化させる原因をできるだけ減らすことが大切です。日常生活では、次のようなことに気をつけましょう。

ストレス:腸はストレスの影響を受けやすく、精神的・肉体的ストレスが再発の引き金になることも。ストレスや悩みごとはため込まずに発散し、過労や睡眠不足を避けるようにする。疲れをためないように、十分な休養、睡眠をとって、規則正しい生活を心がけよう。

食 事:バランスよく、楽しくとることが大切。食物繊維など消化の悪いもの、脂っこいものや香辛料、アルコール、炭酸飲料など腸を刺激するもの、牛乳類はなるべく控える。食べすぎ飲みすぎにも注意。

薬の服用:症状のない状態が続いても、自分の勝手な判断で治療を中断しないこと。再発を抑えるため、症状がないときでも薬の服用を続けることが大切。また、かぜ薬、鎮痛薬など処方された薬以外の市販薬などは、勝手に服用せず医師に相談を。

感染症の予防:ステロイド剤や免疫抑制剤を服用している場合、外出時にはマスクをし、帰宅後はうがいや手洗いをして感染症にかからないよう気をつける。

運 動:血便があるときや、ステロイド剤や免疫抑制剤を服用している場合は、マラソン、サッカーなどの激しい運動は避ける。症状がないときはとくに制限はなし。

 かいよう性大腸炎の症状は、ウイルスや細菌による感染性大腸炎と似ているため、発見が遅れがちです。下痢が1日に4、5回以上あり、血便や粘液便が続く場合は、早めに専門医にかかりましょう。消化器内科が専門科になります。

【監修】
佐原力三郎先生


社会保険中央総合病院副院長、同病院大腸肛門病センター長
昭和53年群馬大学医学部卒業後、同医学部第一外科学教室入局。昭和57年6月より社会保険中央総合病院大腸肛門病センター勤務。平成18年同センター長、現在に至る。肛門疾患、炎症性腸疾患、大腸がんの外科的治療を専門とする。日本大腸肛門病学会理事。著書に『よくわかる最新医学 大腸がん・潰瘍性大腸炎・過敏性腸症候群』(主婦の友社)など。

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