高熱、腰痛、過労ぎみ…腎盂腎炎の疑いが

膀胱炎の治療が不完全のときも急性腎盂腎炎に

発熱があるのに鼻水やせきがなく、腰の片側が痛むときは要注意

20~40代の女性に多い

 高熱や腰痛は、かぜのひき始めによくみられる症状です。それだけに、「かぜをひいたのかしら?」と思う方が少なくないでしょう。こうした症状が、疲れがたまっているときに起こった場合は、細菌感染症の一つ、急性腎盂(じんう)腎炎の疑いがあります。特に、20~40代の女性に多くみられ、進行すると腎臓が働かなくなる腎不全などの重大な病気になる恐れもあるだけに、注意が必要です。

 急性腎盂腎炎は、大腸菌などの細菌が尿道口から侵入し、膀胱(ぼうこう)から腎盂にまでさかのぼって炎症を引き起こす細菌感染症です。炎症で腎臓が大きく腫れるため、腰背部が痛み、悪寒(おかん)、ふるえ、発熱などの症状が急にあらわれ、尿が白く濁ったり、血液が混じることもあります。

 女性に多いのは、尿道口が肛門や腟(ちつ)と近いために細菌に感染しやすく、尿道が短いので膀胱まで細菌がさかのぼりやすいからです。細菌が膀胱に達すると膀胱炎を発症し、激しい排尿痛のほか、血尿、頻尿、残尿感といった症状に襲われます。急性腎盂腎炎にならないためには、この段階で受診し、膀胱炎を完治させることが重要です。

膀胱炎症状がなく、高熱や腰痛で腎盂腎炎が発症することも

 膀胱炎の症状があっても、「恥ずかしいから」とがまんしてしまったり、治療は受けたものの、「症状がなくなったから」といって治療を途中でやめてしまうと、腎盂腎炎に進むことがあります。膀胱炎の症状があるときは、恥ずかしがったりがまんしたりしないで、早めに受診すること。そして、尿検査で細菌が全く検出されなくなるまで、服薬などによって、徹底的に治療をすることが重要です。

 なかには、膀胱炎の症状が全く出ないまま、腎盂腎炎を発症するケースもあります。例えば、膀胱から腎臓への尿の逆流を防ぐ働きが弱い人は、細菌が一気に腎臓に達し、膀胱炎症状が出ないまま、腎盂腎炎を起こすことがあります。

 もし、膀胱炎の症状の後に、腰の片側が痛んだり高熱が出るといった症状が起こったときは、腎盂腎炎の発症が疑われます。また、膀胱炎症状がなくても、腰痛や高熱があるのに鼻水やせきがないという場合は、腎盂腎炎が疑われるので、早めに泌尿器科を受診しましょう。かぜだと思い込んで市販薬などを飲んだりすると、腰痛や発熱はいったん治まるかもしれませんが、またすぐにぶり返すことになります。

 なお、同じように腰が痛むものに尿管結石があります。腎臓でできた石の一部が尿管に流れ込んで尿管をふさいでしまうので、尿の出口を閉ざされた腎臓が腫れて、腰から背中に激痛が起こるのです。膀胱炎症状がなく、突然腰から背中に激しい痛みが起こる場合は、尿管結石の可能性があります。

過労を避け、排尿をがまんしない

 急性腎盂腎炎の治療は、抗生剤の服用が中心です。原因となる細菌の種類を調べ、それに効く抗生剤を服用すれば、1~2週間程度で改善します。治療を行わずに放置すると、細菌が血液中に侵入して敗血症に移行したり、腎盂腎炎が慢性化して腎臓が萎縮し、腎不全に陥る危険性があります。

 膀胱炎や腎盂腎炎の治療中は医師の指示に従って安静を守り、尿検査で細菌が完全に検出されなくなるまで服薬を続けることが重要です。いったん治っても、過労が続くと再発する恐れもあります。帰宅後や休日は体を休めて、過労を避けることです。

 尿道口から侵入しようとする細菌は、排尿によって洗い流すことができます。それだけに、トイレをがまんしてしまう人は、細菌を洗い流すことができないため、感染の危険性が高くなります。こまめに水やお茶を飲んで水分を十分にとり、尿意を感じたら、がまんしないで排尿することが大切です。膀胱炎、腎盂腎炎を予防し、尿管結石をできにくくするためにも役立ちます。

(「健康のひろば」法研より)

【監修】
鳥居 伸一郎先生


医療法人社団湘南太陽会 鳥居泌尿器科・内科院長
昭和31年生まれ。東京慈恵会医科大学卒業。医学博士。日本泌尿器科学会専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本アロマセラピー学会認定医など。平成4年横浜市金沢区に鳥居泌尿器科・内科開業。平成18年に横浜市中区に分院 相生23クリニックを開業。

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