レーシック手術のメリットとデメリット|術後の過ごし方の注意点

裸眼での生活は魅力だが、リスクも知っておこう

短時間で痛みも少なく、屈折矯正手術の主流になったが、合併症の可能性や保険が使えない難点も

角膜にレーザーを照射して近視や乱視を矯正

 「眼鏡もコンタクトレンズもわずらわしい、でも視力は矯正したい」という人に、レーザーによる手術で近視や乱視を矯正する「レーシック(LASIK)手術」が広まっています。日帰り手術の便利さと、視力回復の早さが人気となり、いまや屈折矯正手術の主流になっています。

 レーシック手術では、高い精度で正確に生体組織を切り取ることができるエキシマレーザーを使います。まず、点眼麻酔をしたうえで、特殊な器具や最新の技術ではレーザーで角膜の表面を薄く削りますが、完全に削り取ってしまうのではなく、片方がつながった“ふた”のような状態にします。これを「フラップ」といいます。このフラップをめくり、角膜の実質層といわれる部分にエキシマレーザーを照射して角膜のカーブを調整していくのですが、レーシック手術が普及した要因は実はこのフラップにあります。

 それまでのレーザーを使った矯正手術では、まず角膜の表面を削り取り、さらに角膜の実質層をレーザーで削って形を調整していました。しかし角膜の表面近くには神経が通っており、表面を削り取ってしまうと神経がむき出しになるので、手術後にはかなり痛みます。また、削り取った表面の細胞はすぐに再生するわけではなく、角膜が安定してしっかりものが見えるようになるまでには時間がかかりました。

 これに対しレーシック手術では、角膜のカーブを調整した後はフラップを元通りにかぶせるので、神経がむき出しになることはないため痛みが軽減されます。角膜の安定性もよいので、手術直後からものがはっきり見えるという利点もあります。戻されたフラップは、およそ2週間で自然に接着します。

目に強い衝撃を受けないように

 レーシック手術は十数分で終わり、しばらく安静にし、眼科医がチェックして問題がなければ帰宅となります。その日からふつうの生活が可能で、目に水が入らないように注意すれば入浴も問題ありません。手術の翌日はもう一度受診して角膜のチェックを受け、その後も定期的に検査を受けます。

 これは、フラップが接着したといっても“やんわり”とくっついているだけなので、その接着がずれていないかどうか確認しなければならないからです。1週間ほどは目を保護するゴーグルを装着します。万が一、強い衝撃を直接目に受けると、フラップがずれてしまうことがあり、それを放っておくと削ったところに新しい細胞が増殖してきて、永久に接着できなくなります。
 したがって、ずれが生じたらできるだけ早めに治療しなければならず、そのためにも定期的な検査をずっと受けていく必要があるのです。また術後は、ボクシングのような目に強い衝撃を受ける恐れのあるスポーツを避けるべきことは、いうまでもないでしょう。

 レーシックの近視手術では、中等度の近視ならばほとんどの人が裸眼視力1.0以上に回復するとされていますので、日常生活では眼鏡やコンタクトレンズを使わずにすむようになります。とはいえ、手術に伴うリスクがないわけではありません。目の感染症をはじめ、削られて薄くなった角膜が眼圧で変形する「角膜拡張症」、削った部分が濁る「角膜上皮下混濁」、涙の分泌量が減って一時的にドライアイになる、などといった合併症がおこることがあります。

誰でも手術を受けられるわけではない

 また、手術を受けられるかどうかという検討も手術前に行われます。一つは、この2年間くらいは近視の状態が安定していることが必要です。まだ近視が進行する可能性があると、手術後に再び見えにくくなることがあるからです。その意味で20歳未満の人は近視が安定しているとはいえないことが多いので、原則的に手術は行われません。
 また、近視の度が非常に強い人は角膜を多く削らなければならず、その分薄くなった角膜が拡張症をおこす危険性が高まるため、手術が受けられないことがあります。

 近視以外にもほかの目の病気を抱えている場合は、その治療が優先されます。糖尿病やアトピー性疾患がある場合や、網膜剥離(もうまくはくり)など眼底に病気がある場合には手術を受けられないときがあります。また、いまのところ健康保険の適用になっていませんから、数十万円単位の手術費用が必要です。

 このように、安全で進歩した手術法とはいえ、ほかのどのような治療法とも同じように、レーシック手術にもメリットとデメリットがあり、また、手術を受けてもいいのかどうかなど、術前に検討しなければならない問題があります。簡単そうだから、人気があるから、などといった理由だけで手術を選択するのではなく、眼科医と十分に相談してから決めるべきでしょう。

(『見えにくい見えづらい 目の病気がわかる本』岩崎琢也監修、法研より)

【監修】
岩崎 琢也先生


東京医科大学霞ケ浦病院眼科科長・准教授
1982年東京医科大学卒業後、同大学病院にて眼科研修。87年~89年米国マサチューセッツ州「Retina Foundation眼研究所」に留学。90年東邦大学大橋病院にて硝子体手術を研修。2000年東京医科大学助教授。06年東京医科大学霞ケ浦病院眼科科長。日本眼科学会、日本網膜硝子体学会、日本眼科手術学会、日本眼内レンズ屈折手術学会、日本糖尿病学会に所属。専門分野は網膜硝子体疾患の外科的治療、アトピー性皮膚炎による白内障、網膜剥離の外科的治療。

コラムに関連する病名が検索できます。

レーシック手術のメリットとデメリット|術後の過ごし方の注意点 関連コラム

この記事を見ているひとはこんな記事も見ています

近視の人は老眼にならないってホント?

水晶体の調整力が低下することで老眼になる 眼の構造はカメラと同じです。フィルムが網膜で、ピント合わせはレンズに当たる水晶体の厚さを変えて行います。 水晶体が最も薄い状態で、平行光線が網膜にぴったりとピントが合うのが正視です。さらに、水... 続きを読む

衝撃 アザで発覚する白血病の恐怖

そもそも白血病とは

血液のがんの一つ。かつては不治の病と言われたが、治療法の進歩によりタイプによっては完治が期待できるようになった。血液中の赤血球、白血球、血小板などの血液細胞のもとになる細胞を造血幹細胞と言う。造血幹細胞は一定の決... 続きを読む

ひどい近視は強度近視かも? 合併症による失明の危険も

目の働きはよくカメラにたとえられますが、外界から入ってきた光はレンズに当たる角膜と水晶体で屈折し、フィルムに当たる網膜で像を結びます。ピントが合って網膜上でぴたっと像が結び鮮明に見える目を「正視眼」といい、ピントが合うためには屈折力に加え... 続きを読む

気持ちいい〜!ボクシング体操で二の腕ほっそり&イライラ撃退

ストレス、溜め込んでいませんか?ストレスは美容と健康の大敵。溜め込み過ぎれば体内のはたらきが低下し、むくみやふとりやすい体質を招きます。スカッとした気分になれるボクシング体操で、ストレスと贅肉を同時に撃退しましょう。気持ちいい〜!ボクシ... 続きを読む

冷たいものが歯にしみる「知覚過敏症」-歯ブラシや歯ぎしりが原因

冷たいものを飲んだりうがいをすると歯にしみてズキンとする、歯ブラシがふれただけで痛いという人はいませんか?
そんなとき、むし歯かなと思って歯科医を受診すると「知覚過敏症」といわれることがあります。知覚過敏症とは、むし歯ではないのに歯がしみ... 続きを読む

処方箋不要のコンタクトレンズの使用は危険?最悪は失明の危険も

コンタクトレンズによる目のトラブルが目立っているようです。日本眼科医会では、コンタクトレンズを使っている人の7~10%の割合で、目の障害が起きているのではないかと推測しています。しかもそれは、コンタクトレンズそのものの問題ではなく、誤った... 続きを読む

性行為の経験がある人は子宮頸がん検診を受けて! 婦人科検診で見つかる病気

婦人科検診を受けたことはありますか?
「何をするか不安」「恥ずかしい」など、最初は抵抗を感じる人も多いでしょう。でも、たとえ気になる症状がなかったとしても、20代から婦人科検診を受けることは大切だといいます。ともこレディースクリニック表... 続きを読む

花粉症の完治する?「舌下減感作療法」は本当に効果があるのか?

花粉症の人には憂うつなシーズンになりました。気象情報会社の発表では、昨年夏の日照時間が全国的に少なかったことから、北海道以外のエリアでは今シーズンのスギ花粉の飛散量は昨シーズンの半分以下と予想しています。ただし、飛散開始の時期は早まり、東... 続きを読む

引受基準緩和型保険の基礎知識とメリット・デメリット

引受基準緩和型保険の基礎知識
引受基準緩和型保険というのは、一般的な保険では持病などがネックになって保険に加入出来なかったり、不利な条件でしか加入出来ない方が簡単な告知内容の審査に通れば加入できる保険です。医療保険が多いですが中には生命... 続きを読む

すぐ効く痩身エステには注意点いっぱい

エステ
ダイエットに痩身エステを使うのは女性にとっては定番、今や男でもエステを使うようになり多様なサービスが提供されています。痩せたい部分を痩せさせてすぐに効果を実感できるには、エステで脂肪をもみだすマッサージをしてもらったり専門の機械... 続きを読む