帯状疱疹と単純ヘルペスの違いとは? ヘルペスの治療法

人から人へと感染し、一度感染すると再発をくり返す

くちびるや性器、おしりなどに水ぶくれができて痛い。過労を避け、バランスのよい食事で再発を予防

感染力が強く全身のどこにでも発症し、深刻な状況になることも

 ヘルペスとは小さな水ぶくれが集まった状態のことで、一般にヘルペスウイルスの感染によって発症する病気をさします。帯状疱疹(たいじょうほうしん)と単純ヘルペスに分けることができ、この二つはウイルスの種類が異なります。

 帯状疱疹は、激しい痛みとそれに続く多数の水ぶくれなど、症状がはっきり出るため、自分が帯状疱疹であることを自覚している人がほとんどです。
 これに対して単純ヘルペスは、水ぶくれやただれ、痛みなどがありますが、症状は激しくないことも多いため「おでき」などとの見分けが難しく、自分が単純ヘルペスであることを自覚している人は多くありません。「単純」という言葉がつくものの、症状やその後の経過には注意が必要です。

 単純ヘルペスは、くちびるや口の周りにできる口唇(こうしん)ヘルペスや、性器やおしりにできる性器ヘルペスが知られていますが、ほかにも顔、目、歯ぐき、腕や脚など、全身のどこにでも発症します。しかも感染力が強く、接触感染によって人から人へとうつっていきます。さらに、ヘルペスウイルスに一度感染すると、ウイルスが神経節に潜伏し、抵抗力が弱まったときに活性化して症状を引きおこすことをくり返すのです。

 昔は大家族の中で感染するケースが多く、ほとんどの人が幼少期に感染して免疫を身につけていました。ところが最近は、核家族化や衛生面の改善が進んで、若い人ほど免疫をもっている割合が減っています。幼少期に感染していると、大人になって再発しても軽症ですみますが、大人になってから初めて感染すると、重症化することが少なくありません。

 出産時に胎児が感染すると全身に広がって命を落とす原因となり、新生児でも重症化する恐れがあります。大人でもアトピー性皮膚炎やエイズ、がんなどと重なれば重症化して命を落とすこともあり、目の角膜に発症した場合は視力低下や失明の原因にもなります。
 このように、単純ヘルペスは単なる「おでき」ではなく、人から人へ感染して深刻な状況を招くこともあるということを知っておきましょう。

口唇ヘルペスは家族間の感染が多い

 単純ヘルペスの中でも最も患者数が多いのが口唇ヘルペスで、くちびるや口の周りが赤く腫れ、水ぶくれができて痛みます。大人の初感染では強い症状が出ることが多く、発熱や頭痛、リンパ節の腫れ、倦怠(けんたい)感など全身症状が出ることもあります。

 口唇ヘルペスは、親子や夫婦など家族間の感染が多いのが特徴です。ほおずりやキスなどで肌や唾液が接触する機会が多いことや、発症している家族が使ったグラスやタオルを共用する可能性があるためです。皮膚に傷や湿疹ができているときは感染率が高くなるのはもちろん、皮膚が健康な場合でも感染しやすいので注意が必要です。

 感染を防ぐには、水ぶくれを破ったりさわったりしないことです。もし、患部をさわった場合は、すぐに手を洗ってください。また、感染時に使ったタオルは、ほかの人と共用しないで、よく洗って日光でしっかり乾かしましょう。グラスや食器も専用のものを使い、使用後は洗剤できれいに洗ってください。水ぶくれにさわらないようにマスクをするのもよい方法です。

 口唇ヘルペスは年に1~2回のペースで再発する人が多いようです。再発しやすいのはかぜをひいたり過労が続いたりして抵抗力が落ちたときです。ほかに、強い紫外線や精神的ストレス、ある種の薬なども再発の誘引になります。女性の場合、月経前に再発しやすいことがわかっています。

 再発を防ぐには、過労を避け、かぜをひかないようにすること。食事は、栄養バランスに気をつけ、免疫力を高める効果のある野菜や果物、玄米、ナッツ類などを積極的にとるとよいでしょう。睡眠を十分とって運動や趣味などでストレス解消につとめ、強い紫外線を避けるようにします。

性行為などで感染する性器ヘルペスは20~30代の女性に多い

 口唇ヘルペスに次いで患者数の多いのが性器ヘルペスです。女性の場合は外陰部や腟を中心に、男性の場合は陰部や脚のつけ根(リンパ節)などに、水ぶくれや赤いブツブツ(潰瘍)がたくさんでき、ただれや痛みを伴います。特に初感染では症状が重く、痛みで歩行困難になったり、高熱で入院治療が必要になったりすることもあるほどです。

 一度感染すると完治せず、再発をくり返すのはほかの単純ヘルペスと同じですが、性器ヘルペスが最も再発しやすく、1年間に女性で平均7回、男性では平均12回と非常に頻繁にくり返します。そのため、性器に常に水ぶくれができてただれたり、いつ再発するかと不安になったりと、肉体的にも精神的にも苦痛を伴います。

 性器ヘルペスは、主として性行為で感染する性感染症です。最近は20~30代の女性に最も多くみられ、性体験の低年齢化で10代にも急増しています。性器ヘルペスにかかると、症状が辛いだけでなく、エイズや梅毒など、ほかの性感染症にもかかりやすくなるため、感染の予防と病気に対する知識をもつことが重要です。

 性器ヘルペスは感染しても症状が出なかったり、赤くなるだけで気がつかなかったりして、知らないうちに人にうつしてしまう可能性があります。性感染症の予防にコンドームは欠かせませんが、性器ヘルペスの場合、患部が性器以外にも広がっているとコンドームだけでは防ぐことができません。性器ヘルペスの症状が出ているときは性行為を避けることはもちろん、治ったと思っても一度必ず皮膚科や婦人科、泌尿器科などを受診し、性行為を含めた生活上の注意などを詳しく聞くようにしましょう。

 単純ヘルペスの治療には、ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬が用いられます。以前は症状が出るたびに服用して症状を軽くする治療が中心でしたが、2006年から、再発を抑えるために、毎日抗ウイルス薬を飲む治療法が健康保険の適用になっています。

【監修】
本田 まりこ先生


東京慈恵会医科大学附属青戸病院皮膚科 教授
東京女子医科大学卒業後、東京慈恵会医科大学皮膚科学講座、共立薬科大学大学院非常勤講師、東京慈恵会医科大学皮膚科助教授を経て現職。皮膚科専門医。アトピー性皮膚炎の金属アレルギーの研究にて学位、その後ヒト乳頭腫ウイルスと発ガン、神経線維腫症の遺伝子解析、ヘルペスウイルスの研究にあたっている。日本性感染症学会常任理事、日本化学療法学会評議員、日本皮膚科学会代議員などを務める。趣味は園芸、旅行。著書に『帯状疱疹・単純ヘルペスがわかる本』(法研)など。

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