統合失調症治療には、メタボ対策も大切-抗精神病薬の副作用とは

患者さんに特徴的な生活習慣や治療薬の副作用でメタボにも

統合失調症は精神症状だけでなく、治療の過程で身体的な健康障害もきたす危険性が高いことを知っておいて

統合失調症発症率は約100人に1人

 統合失調症はかつて「精神分裂病」と呼ばれていましたが、2002年の世界精神医学総会(横浜市)で現行の名称に変更されました。これはかねてより患者さんから、偏見をなくして患者さんの社会復帰を促すためには名称を変更してほしいとの強い要望に応じたものです。統合失調症の発症率は約100人に1人と推定され、現在の患者数は79万5000人と報告されています(厚生労働省:2008年『患者調査』)。

 統合失調症は、さまざまな刺激を伝え合う神経のネットワークにトラブルが生じ、脳の機能障害が起きる病気です。現実を正確に判断する能力が低下する、感情や意欲のコントロールができなくなる、適切な対人関係を保つことが困難になる、外からの刺激に迅速・正確に対応できなくなる……などの特徴があります。
 一般的な症状は、発病後まもない時期(急性期)に出やすい「陽性症状」、発病した時点から現れることもあるが通常は急性期の後に慢性的にみられる「陰性症状」に分けられます。陽性症状には幻覚や妄想、不安定な感情、奇異な行動、思考の混乱などがあり、陰性症状には社会的引きこもり、感情まひ、言語の貧困、意欲の減退、注意力・集中力の低下、無関心などがあります。

 これらの症状を抑えるための治療は、抗精神病薬の服用を中心に、精神療法などの心理社会的治療を合わせて行います。とくに症状が激しい急性期では、薬による治療が大きなポイントをしめています。
 抗精神病薬による治療は1950年ごろから始まっています。当時の薬にはパーキンソン病の症状(手足や全身のふるえ、動作の緩慢など)に似た副作用がありましたが、この問題を解決したのが、1990年ごろから使われ始めた新しいタイプの抗精神病薬です。

 ところが、新潟大学大学院の染矢俊幸教授によると、このタイプの抗精神病薬には、体重増加、糖代謝異常、脂質代謝異常といったメタボリックシンドロームに関連した副作用が従来の薬にもまして出やすいことがわかってきたのです。

患者さんの死因のトップは心血管の病気。メタボの割合は40%

 メタボリックシンドロームは、内臓脂肪型肥満に加えて、高血圧、高血糖、脂質異常などの因子を複数もっている状態をいい、その一つひとつは軽症でも、それらが複数重なることで動脈硬化から心血管の病気を起こす危険度が高まることが知られています。

 国内外で発表されたデータをもとに、統合失調症とメタボの関係をみると、まず統合失調症の患者さんは、それ以外の人と比べて心筋梗塞など心血管の病気で亡くなる危険度が男性で2.3倍、女性で2.1倍高くなっています。死亡者数では、心血管の病気が患者さんの死因のトップでした。

 こうした心血管の病気を引き起こすメタボの割合は、統合失調症の患者さんでは約40%と、それ以外の人の約20%に比べ2倍にのぼります。また、かつての抗精神病薬では、薬による治療開始後平均3年のメタボ合併率は約13%でしたが、新しいタイプの抗精神病薬では約31%と、3倍近くにもなっています。

 メタボの危険因子である肥満については、患者さんではない人では約30%ですが、患者さんでは60%以上、このうち半数近くが高度肥満というデータもあります。患者さんには糖代謝異常(糖尿病の前段階)も明らかに多いことや、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの効きが悪いことを示すインスリン抵抗性が強くなりがちであることもわかっています。

精神症状と似ている「低血糖」にも注意

 では、なぜ統合失調症の患者さんにメタボが多いのでしょうか。その背景としてまず、
(1)陰性症状としての運動量の少なさ、意欲・活動性の低下
(2)食物繊維が少なく脂肪を好む食生活
(3)喫煙
といった生活習慣をあげることができます。さらに、
(4)病気による強いストレスで内分泌の代謝異常が起こり、肥満、糖代謝異常、脂質代謝異常が起こる
(5)遺伝的な背景
(6)新しいタイプの抗精神病薬の副作用として肥満、糖代謝異常、脂質代謝異常が起こる
などがあげられます。

 この中で(6)の新しいタイプの抗精神病薬の副作用に注目してみると、国内外での調査から、
(a)服用2カ月で体重が平均2kg、薬によっては5kg増加
(b)ウエスト径の増加
(c)血糖値の上昇(インスリン抵抗性の悪化)
(d)HDL(善玉)コレステロールの減少
などが明らかになっています。

 「これらの薬を服用している人は、服用していない人と比べ、肥満のレベルが同じであっても、インスリン抵抗性の悪化に2倍結びつきやすいことも知られています」(染矢教授)。

 また、新しいタイプの抗精神病薬は、高血糖とは正反対の「低血糖」も起こしやすいため注意が必要です。低血糖を起こすと、意識をなくすこともあるので大変危険です。しかし低血糖の症状には、不安感が高まる、イライラするといった精神症状があり、これが統合失調症と類似しているため、患者さんでは見逃されてしまいがちです。

 しかし、新しいタイプの抗精神病薬には以上のような副作用の恐れがあるものの、統合失調症の治療には欠かせません。薬による治療を受けている患者さん本人とその周りの人に、染矢教授は以下のように気をつけることを呼びかけています。

●患者さん本人が気をつけたいこと
(1)処方された薬は指示通りに飲み続ける
(2)自分自身の体調管理に気をつける――体重測定、(メタボ~心血管病関連の)検査、バランスのとれた食事、適度な運動など
(3)気になる症状や心身の変化があったら、主治医やスタッフに相談する。

●周囲の人が気をつけたいこと
病気や治療薬による患者さんの身体面へのリスクを理解し、極端な食事のとり方や運動不足がないかどうかを見守りながら、患者さんの日常生活を支える

(編集・制作 (株)法研)

【監修】
染矢 俊幸先生


新潟大学大学院医歯学総合研究科 精神医学分野教授
専門は、臨床精神薬理学、精神科診断学など。Pacific Rim Association for Clinical Pharmacogenetics 理事長、日本精神科診断学会理事長、日本臨床精神神経薬理学会理事などを務める。

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