成人の4.4人に1人が慢性的な痛みを抱えている-上手く付き合う方法

痛む部位は腰、肩、ひざ。仕事に支障、やる気の喪失も

痛みに関する大規模調査では、約70%もの人が「痛み」をコントロールできていないことが明らかに

「痛み」をもつ人、約2,315万人と推計

 梅雨どきになると腰痛や関節痛、肩こりがひどくなるという人は多いでしょう。慢性的な痛みをもつ人にとってはつらい季節です。
 厚生労働省では、慢性的な痛み(慢性疼痛)の定義を、「一定期間(月単位)以上続く痛み、かつ痛みの存在が身体的、社会的に大きな影響を及ぼすもの」としています。一方で、医療関係者のなかでは「患者さんが“痛い”といえば、それが痛みである」との考え方もあります。

 これまで日本では、欧米に比べ「痛み」に関する調査があまり行われていませんでしたが、2010年6月から7月にかけて、慢性的な痛みを訴える人の実態を明らかにするための大規模調査が行われました(ムンディファーマ株式会社実施)。東京大学の竹下克志講師らは、インターネットを通して20歳以上の男女約4万人を調査しました。
 この調査では、次のすべてに当てはまる痛みを「慢性的な痛み」としました。
 ・最初に痛みを感じてから現在までに3カ月以上
 ・痛みを一番最近感じたのは1カ月以内
 ・痛みが起こる頻度は1週間に2回以上
 ・痛みの度合いは10段階で自己評価して5以上

 調査の結果、4万人のうち約6,000人が「慢性的な痛み」をもっていることがわかり、これを男女別、年齢層別の人口構成にあてはめると、日本全体では成人の4.4人に1人(22.5%)、約2,315万人が何らかの慢性の痛みをもっていることが推計されます。

 この調査では、慢性的な痛みがある約6,000人に対し、さらに詳しい聞き取り調査を行い、次のようなことがわかりました(いずれも複数回答)。
痛みの性質:「鈍い痛み」「重い痛み」を挙げる人がそれぞれ過半数。
痛みが続いている期間:「5年以上~10年未満」「10年以上~20年未満」がそれぞれ約22%で最も多い。

 「鈍く、重い痛みが10年前後も続いている」というのが、慢性的な痛みを抱える多く人の実情といえそうです。

痛むのは腰、肩、ひざ、痛みで睡眠や食事に影響も

 さらに結果をみていきましょう(いずれも複数回答)。
痛みの部位:腰(64.1%)と肩(47.9%)が群を抜いて多く、ひざ、首・のど、背中、頭などと続く。
診断された病名・症状:「腰痛」(55.7%)が最も多く、次いで「四十肩・五十肩、肩こり」「頭痛(片頭痛)」「関節炎」「冷え性」など。

 これらの慢性的な痛みが及ぼす日常生活への影響について、支障が「いつもあった」「しばしばあった」と答える人が最も多かったのは、「仕事、学校生活、家事、いつもの活動をすること」(合計38.1%)、「外出をすること」(同29.9%)でした。「十分な睡眠をとること」「十分な食事をとること」を挙げた人もそれぞれ20%前後いました。
 痛みのため日常生活に支障が出ている人が少なくないことがわかります。なかでも5~6人に1人が、痛みのために十分な睡眠や食事がとれなくなっているということは、深刻な事態といえます。

 痛みは精神・感情面にも大きな影響を与えます。痛みによって「やる気の喪失」、「いつも疲れた感じ」、「精神的ストレスを感じる」を挙げる人が70%前後もいました。
 さらに過去6カ月で、慢性的な痛みによって仕事や学校、家事を1日以上休んだ人の、休んだ平均日数は、仕事では9.8日、学校では6.5日、家事では17.9日でした。

「痛み」がコントロールできていない人が70%も

 そして、慢性的な痛みへの対応(複数回答)は、「病院・医院で治療」が64.6%で最も多かったものの、「施設や薬によらない自己対処法」57.5%、「病院・医院以外の施設での治療」44.8%、「ドラッグストア等で薬を購入」39.7%と、さまざま方法を試みていることがわかりました。
 病院・医院で治療している人が受診した診療科は、腰や関節の痛みを訴える人では整形外科が約80%を占め、痛みの緩和を専門とするペインクリニック科(疼痛専門医)や神経内科などの受診者はわずかでした。

 最後に、治療などによって痛みが「満足いく程度に緩和できているか」という質問に対し、約70%の人が「いいえ」「あまり変わらない」と回答していました。2004年に3万人を対象に行われた同様の調査でも、約80%の人の痛みが適切にコントロールされていない、という結果が出ており、この6年間でもあまり改善していないことが明らかになりました。

 竹下講師は、慢性的な痛みに対する治療で最も重要なのは、自分で動ける人なら、医師(専門家)の指導に基づくストレッチングや軽い筋力トレーニングなど「能動的な行動」だと強調しています。「動けるのに、自分は横になったり座っているだけで、他人に○○してもらうだけ」という「受け身」の対処では効果が得られにくい、ということです。

 「痛み」は精神状態や心の健康とも関係するため、精神神経科(メンタルヘルス科)や心療内科といった診療科で痛みの緩和に対応する医療機関もあります。竹下講師は「いつものことだから、とあきらめずに、まずかかりつけのお医者さんに、“いつもの痛み”について相談してみて」と呼びかけています。

(編集・制作 (株)法研)

【取材協力】
竹下 克志先生


東京大学整形外科専任講師
東京大学医学部卒業後、同整形外科助手、米国シンシナティ大学小児病院整形外科などを経て、現在東京大学付属病院整形外科講師。専門は脊椎外科、とくに側弯症・頸椎変性疾患・アウトカム評価・疼痛・生体力学。日本脊椎脊髄病学会評議員、日本側弯症学会幹事、日本運動器疼痛学会理事などを務める。所属学会は日本整形外科学会、日本脊椎脊髄病学会、日本側弯症学会、日本運動器疼痛学会、Scoliosis Research Society、Cervical Spine Research Societyなど。

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