アレルギー薬の抗ヒスタミンが眠くなるのは嘘? ヒスタミン5つの働き

薬による「眠気」を避けて、「生活の質」を維持しよう

抗アレルギー薬による「眠気」と「効き目」は、関係がないことが明らかに。無用な眠気は避けましょう。

ヒスタミンはアレルギーの誘因にも、眠気抑制にもなる

 アトピー性皮膚炎や花粉症などのアレルギー病の患者さんの場合、アレルギーの原因となる物質が体内に入ってくると、これを体にとって「異物」として攻撃するために、免疫を担う白血球を構成する肥満細胞(※)が反応します。
 この反応で肥満細胞はヒスタミンという物質を放出し、これがアトピー性皮膚炎による皮膚のかゆみや炎症、湿疹など、花粉症によるくしゃみや鼻水・鼻づまり、目のかゆみなどをもたらすのです。そこで、これらのアレルギー病の薬には、ヒスタミンの働きを抑える成分を含むものがあり、「抗ヒスタミン薬」と呼ばれています。
 ※血液中の白血球を構成する成分の一つ。一般にいう「肥満」とは関係ない。

 ところがヒスタミンは、こうしたアレルギー症状をもたらす、いわば「悪玉」の働きだけでなく、アレルギー体質の有無にかかわらず、以下のような「善玉」の働きもしているのです。

●ヒスタミンの主な働き
(1)意識を鮮明にする(日中の眠気を抑える)
(2)記憶力や学習能力を高める
(3)活発に動きやすくする
(4)食べ過ぎを抑える
(5)興奮を抑える

 このため、アレルギー反応を抑えるためにヒスタミンの働きを抑えてしまうと、日中の「眠気」が抑えられず、記憶力が鈍り、活発に動くこともつらくなる、といった「生活の質」の低下を招くことがあるのです。
 「眠気」そのものは自覚しやすいため、対策をとりやすいといえますが、眠気に伴う集中力や作業効率の低下は自覚しづらく、無意識のうちに仕事中にミスを連発、といった事態を招きかねないことを知っておきましょう。

医師も患者も「眠くなるほど、効き目が強い」と思い込んでいる

 かつての抗ヒスタミン薬は第一世代と呼ばれ、前述のようなヒスタミンの「善玉」部分も一緒に抑えてしまう「眠くなる薬」でした。その後、1980年代の半ばごろから、皮膚のかゆみやくしゃみといった主なアレルギー症状を抑える効果は残したうえで、眠気を起こりにくくした第二世代の薬が使われるようになりました。
 眠気は抗ヒスタミン薬の作用が脳にまで入り込んでしまうために起こり、第一世代の抗ヒスタミン薬では脳の半分以上に及んでいました。それが第二世代ではせいぜい20%程度、最もよく制御された薬では数%にまで抑えられています。

 アトピー性皮膚炎をはじめとする皮膚科領域のアレルギー患者さんを診察している東京女子医科大学の川島眞教授は、「第二世代の抗ヒスタミン薬の登場で、第一世代の薬はもう使われなくなるのでは」と予想したそうです。
 ところが現実には、第一世代の抗ヒスタミン薬の使用はそれほど減っていません。全科の医師を対象に、処方した抗ヒスタミン薬の種類を調べた結果でも、第一世代の薬を処方したケースは2008年56%、09年52%、10年49%であり、減ってはいるものの、まだ約半数を占めているのです。

 さらに川島教授らはいろいろな科の医師や患者さんを対象に、眠気が起こらない第二世代の抗ヒスタミン薬が出ているにもかかわらず、眠気を伴う第一世代の抗ヒスタミン薬が使われている背景を調べました。すると、医師にも患者さんにも「眠気が強いほど、かゆみなどを抑える作用も強い」との思い込みが根強いことがわかりました。

眠くならない薬も、眠くなる薬も、効き目は同等

 そこで、川島教授をはじめとする皮膚科の専門医らで組織する「NPO法人 皮膚の健康研究機構」は、「抗ヒスタミン薬は眠気が強いほど効き目も強いのか」を調べることにしました。

 この調査の対象は、アトピー性皮膚炎と慢性じんましんの患者さん502人です。全体を2つのグループに分け、眠くなる薬(第一世代)と眠くならない薬(第二世代)のそれぞれ代表的な薬を用いて、まず片方の薬を2週間飲み続け、1週間飲むのをやめ(前の薬の影響を消すため)、次の2週間にもう一方の薬を飲んでもらいました。
 そして眠気の程度を、「眠気なし」の0点から、「これまで経験した最も激しい眠気」の10点までの点数評価を用いて患者さんが自己評価する方法や、「どのような場合に、どの程度眠くなるか」という質問に答える方法で眠気の程度を測定したところ、やはり第一世代の眠くなる薬を飲んでいる間のほうが、明らかに強い眠気を感じていることがわかりました。

 さらにアトピー性皮膚炎や慢性じんましんによる「かゆみ」についても、眠気と同様の2通りの方法でその程度を測定しました。すると、第2世代の眠くならない薬も眠くなる薬と同程度にかゆみを抑えていることがわかりました。つまり、眠くならない抗ヒスタミン薬は、眠気の程度に影響を与えない一方で、眠くなる抗ヒスタミン薬と同程度の有効性が認められ、眠気と効き目には関係がないことが明らかになったのです。
 川島教授は「アレルギーの薬は眠気が強いほど効くというのは、ただの思い込みに過ぎないことがはっきりしました。眠気による生活の質の低下にもっと気を配り、薬(抗ヒスタミン薬)を処方してもらうときには、“眠気が出ない薬を使いたい”と伝えましょう」とアドバイスしています。

(編集・制作 (株)法研)

【取材協力】
川島 眞先生


東京女子医科大学皮膚科学教室 教授
東京女子医科大学病院副院長
1978年東京大学医学部医学科卒業。84~86年パリ市パスツール研究所 乳頭腫ウイルス部留学後、東京大学医学部皮膚科講師、東京女子医科大学皮膚科講師、助教授を経て、92年教授に。2009年東京女子医科大学病院副院長に就任、現在に至る。 日本皮膚科学会理事、日本性感染症学会理事、日本皮膚アレルギー学会理事、日本香粧品学会理事長。日本美容皮膚科学会理事、日本乾癬学会理事など、主要学会で要職を務める。主な研究分野は皮膚ウィルス感染症、アトピー性皮膚炎、美容など。

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