腹痛の原因となる病気 2-盲腸(虫垂炎)の症状と治療法

意外に診断が難しく、治療の遅れが命取りになることも

「感染性胃腸炎かな?」と思っても、下痢を伴わないか軽度で腹痛が続く場合は、できるだけ早い受診を

正しくは「虫垂炎」。もう「盲腸」と呼ばないで!

 虫垂炎(ちゅうすいえん)は、文字通り虫垂に炎症が起きる病気です。虫垂は、盲腸(大腸の一部で右下腹部に位置する)から突き出た通常5〜10cmほどの細い突起物です。(「大腸・直腸と排便 - 人体図・図解・体の仕組み」参照)

 盲腸と虫垂が接しているため、虫垂炎のことを一般に「盲腸」と呼ぶことがありますが、これは医学的に正しい病名ではありません。これからは「虫垂炎」と呼びましょう。

 虫垂炎の頻度は高く、15人に1人が一生に一度この病気にかかるといわれます。しかも、治療が遅れると、虫垂が破裂して腹膜炎などを合併し、死亡することがあるため、適切かつ迅速な診断がとても重要で、予定外の急な手術が必要になることも多い病気です。

 10〜20代の発症が多いものの、小児や高齢者も含めてどの年齢層でもみられ、男女差はありません。つまり、過去にこの病気の手術を済ませている人を除き、いつ誰の身に降り掛かっても不思議ではない病気なのです。

主な症状は、腹痛、発熱、吐き気、嘔吐

 虫垂炎の主な症状は、腹痛、発熱、吐き気、嘔吐(おうと)です。
 典型的な経過としては、はじめに上腹部(胃のあたり)やへそのまわりが痛み出し、次に発熱(37〜38℃程度の微熱)、吐き気や嘔吐、食欲不振が起こります。数時間もすると吐き気は治まり、数時間から24時間以内に痛みが右下腹部に移ってきます。

 虫垂がある右下腹部を押すと痛みが強くなることが虫垂炎の特徴で、炎症が強くなると、押して離した瞬間にさらに痛みがひどくなる症状(反跳痛、ブルンベルグ徴候)がみられます。
 ただし、このような典型的な症状を示すケースは半数程度にすぎません。

虫垂炎は診断の遅れが命取りになることあるので、できるだけ早い受診を

 虫垂炎の初期では、患者さんが自覚する痛みの部位が、実際に炎症が起きている(虫垂がある)右下腹部とは必ずしも一致せず、吐き気を伴うため、患者さんは「胃の調子が悪い」と思い込んで市販の胃薬で様子をみたり、発熱があると単なる風邪と勘違いしてしまうこともあります。
 しかも、虫垂炎は典型的な経過をたどらない場合も多く、虫垂炎と同様の症状を起こす他の病気も多いため、虫垂炎の診断は意外に難しいものです。

 特に、冬場に大流行することがある感染性胃腸炎は、虫垂炎と同様に腹痛、発熱、吐き気、嘔吐を示すことが多く、熟練した医師であっても判断に迷うことがしばしばあります。
 しかし、感染性胃腸炎のほとんどは自然治癒が期待できるのに対し、虫垂炎は診断の遅れが命取りになることがあるため、見極めが大変重要です。

 感染性胃腸炎の多くは激しい下痢を伴うのに対し、虫垂炎の場合は下痢がないか、あっても程度が軽いことが多いので、下痢の有無は重要な情報の一つです。
 「感染性胃腸炎かな?」と思っても、下痢を伴わないか軽度で腹痛が続く場合は、虫垂炎の可能性を疑い、できるだけ早く受診してください。

軽い場合は薬物療法で治る場合があるが、再発することも

 最近では薬物療法が進歩し、軽い場合は抗生物質による内科的治療で治ることがあります。よく「虫垂炎をちらす」と言われるものがこれに当たります。ただし、薬物療法の場合、1年後までに約40%の割合で再発し、結局約20%で手術が必要になったとの報告もあるので、あくまでも虫垂炎の治療の基本は手術療法(虫垂切除術)と考えてよいでしょう。

 手術方法としては、従来から行われている「開腹手術」と、手術による傷が小さく入院期間も短縮できる「腹腔鏡を用いる手術」の2通りがあります。それぞれの方法には、メリット、デメリットがありますので、手術を受ける場合には、医師の説明を十分に聞き、よく理解した上で選択しましょう。

「虫垂炎かな?」と思ったら・・・

 まず、かかりつけ医に相談しましょう。かかりつけ医がいない場合は、最寄りの総合診療科(家庭医)、内科、外科、消化器科などを受診してください。休日・夜間であれば、当番医などに連絡をして指示を仰ぎましょう。
 自力での移動が困難なほどの強い痛みの場合は、すでに虫垂が破裂して重症化している可能性があるので、救急車を呼ぶほうがよいでしょう。
 また、強い痛みが突然発症した場合は、心筋梗塞や大動脈解離など、より緊急性の高い致死的な病気かも知れないので、直ちに救急要請して消防本部や救急隊の指示を仰ぎましょう。

(編集・制作 (株)法研)

【執筆】
石井 敦先生


社団医療法人養生会 かしま病院総合診療科 部長代理
福島県生まれ。福島県立磐城高等学校卒業。1998年聖マリアンナ医科大学医学部卒業後、いわき市立総合磐城共立病院初期研修医、聖マリアンナ医科大学総合診療内科病院助手、福島県立医科大学医学部 地域・家庭医療学講座助教を経て、2013年より現職。日本プライマリ・ケア連合学会認定 プライマリ・ケア認定医、プライマリ・ケア指導医。生まれ育った福島県で働ける喜びを胸に、福島県全域に家庭医療が普及・定着し、さらに日本全国へと拡がっていくことを夢見て日々活動している。日々の活動の詳細はブログ「いわきで創る家庭医療」(http://atsushii.blogspot.jp/)をご覧ください。

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