腹痛3 ストレスで悪化する過敏性腸症候群

検査で異常がないのに長期にわたって下痢や便秘をくり返す

先進国に多く日本でも身近な病気。通勤・通学や外出などの日常生活に支障をきたす場合は早めの受診を!

過敏性腸症候群はストレスで悪化する身近なおなかの病気

 過敏性腸症候群は、腸の検査や血液検査をしても異常が認められないのに、腹痛や下痢・便秘などの便通異常を中心とする消化器症状が長く続く病気です。ストレスが症状を悪化させる要因となり、日本を含む先進国で多くみられます。
 日本人の10~15%がこの病気にかかっていると推測され、日本人にとって身近なおなかの病気といえます。20~40歳代の発症が多く、男女比約1対1.6で、やや女性に多くみられます。

 便通異常の現れ方はさまざまで、下痢が主体の下痢型、便秘が主体の便秘型、下痢と便秘を繰り返す混合型などがあります。男性では下痢型、女性では便秘型が多い傾向にあります。過敏性腸症候群自体が命にかかわることはありませんが、慢性化して完全に治ることは少ない病気です。

6カ月以上腹痛や便通異常が続き、排便で改善するなら過敏性腸症候群かも

 過敏性腸症候群の主な症状は、腹痛もしくは腹部不快感、便通異常、腹部膨満です。これらの症状が6カ月以上前からあり、最近3カ月間、次の(1)~(3)を満たしている場合には、過敏性腸症候群の可能性が高くなります。

(1)排便によって症状が軽減する
(2)排便頻度の変化がある
(3)便性状(外観)の変化がある

がんや潰瘍性大腸炎などの重大な病気を見逃さないことも大事

 過敏性腸症候群を疑ったら、次に、似たような症状を示すほかの病気(腸のポリープやがん、潰瘍性大腸炎、クローン病、甲状腺疾患など)がないかどうかを検討します。

 とくに、次に挙げる「警告徴候」の1つでも当てはまる場合は命にかかわる病気の恐れもあるため早めの受診が必要です。医療機関では、腹部診察や直腸診(肛門から指や器材を挿入する診察)、血液検査や大腸内視鏡などの精密検査を行います。

<警告徴候>
(1)意図しない体重減少(例:ダイエットをしていないのに、やせてしまう)
(2)下血・血便
(3)家族に大腸がんや卵巣がんの人がいる
(4)50歳以上

治療は生活習慣の改善や食事療法、薬物療法、精神療法など

 過敏性腸症候群は、治療してもすぐには効果が出にくく、完全に治すことが難しい病気ですので、症状が完全になくならなくてもあせらず、日常生活のなかで病気とうまく付き合っていくことが大切です。
 過敏性腸症候群の治療は、(1)生活習慣の改善・食事療法、(2)薬物療法、(3)心身医学的治療、の3つが基本になります。

(1)生活習慣の改善・食事療法
 生活習慣では、不規則な生活、睡眠不足、疲労の蓄積、心理社会的ストレスなどは症状を悪化させますので、まずはこれらを改善します。

 食事は特に大切で、食事間の時間をあけすぎない規則正しい食事と適度な水分摂取が推奨されています。コーヒーや紅茶などのカフェインを含むものや、アルコール、炭酸飲料、香辛料は症状を悪化させるため、摂取は控えましょう。
 食物繊維の摂取が有効な場合もありますが、高繊維質(玄米や全粒粉パンなど)の摂り過ぎが逆に症状を悪化させるという報告もあり、注意が必要です。
 下痢型の場合は、人工甘味料(ソルビトールなど)は控えましょう。

(2)薬物療法
 生活習慣の改善や食事療法で効果が不十分であれば、症状に応じて高分子重合体、消化管運動調節薬、漢方薬などの薬を使います。下痢に対して乳酸菌製剤などの整腸薬、セロトニン受容体拮抗薬、止痢(しり)薬、便秘に対して緩下薬、腹痛に鎮痙(ちんけい)薬が使われることもあります。
 心理社会的ストレスによる不安や抑うつ状態・不眠などを伴う場合は、抗不安薬や抗うつ薬が考慮されます。

(3)心身医学的治療
 (1)、(2)で十分な効果が得られない場合は、心療内科や精神科などで、精神療法、自律訓練法、認知行動療法などを試みることがあります。

「過敏性腸症候群かな?」と思ったら・・・

 前述した「警告徴候」がなく、症状が日常生活に支障がない程度であればセルフケア(生活習慣の改善、食事療法)で十分ですが、通勤・通学や外出などの日常生活に影響が出ている場合は、まず、かかりつけ医に相談しましょう。
 かかりつけ医がいない場合は、最寄りの総合診療科(家庭医)、内科、消化器科等を受診しましょう。

 とくに、前述した「警告徴候」が存在する場合には精密検査を受けるべきでしょう。

(編集・制作 (株)法研)

【執筆】
石井 敦先生


社団医療法人養生会 かしま病院総合診療科 部長代理
福島県生まれ。福島県立磐城高等学校卒業。1998年聖マリアンナ医科大学医学部卒業後、いわき市立総合磐城共立病院初期研修医、聖マリアンナ医科大学総合診療内科病院助手、福島県立医科大学医学部 地域・家庭医療学講座助教を経て、2013年より現職。日本プライマリ・ケア連合学会認定 プライマリ・ケア認定医、プライマリ・ケア指導医。生まれ育った福島県で働ける喜びを胸に、福島県全域に家庭医療が普及・定着し、さらに日本全国へと拡がっていくことを夢見て日々活動している。日々の活動の詳細はブログ「いわきで創る家庭医療」(http://atsushii.blogspot.jp/)をご覧ください。

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