近年急増中! 20~30代に多い腸の難病

原因不明の腸の炎症で出血性の下痢を起こす「潰瘍性大腸炎」

寛解と再燃をくり返し完治することは少ないが、適切な治療と生活習慣の改善で通常の社会生活が可能に

近年急増中の潰瘍性大腸炎は、出血をともなう下痢と腹痛が主な症状

 潰瘍性大腸炎とは、大腸の粘膜が炎症を起こし、粘膜にただれや潰瘍ができる病気です。もともと欧米に多くみられた病気ですが、近年日本でも患者数が急増しています。2013年の患者数は1000人に1人程度ですが、10年で約2倍になる勢いで急増しています。
 発症年齢のピークは20歳代の若年層ですが、最近は中高年での発症も目立ちます。明らかな男女差はありません。

 主な症状は、しばしば出血をともなう下痢と腹痛です。放置すると出血による貧血や、発熱、吐き気、嘔吐(おうと)、体重減少などの症状が加わります。

 この病気は、よくなったり悪くなったり(寛解と再燃)をくり返すのが特徴で、ひとたび発症すると、完全に治ることは多くなく、長くつきあっていかなければならない病気です。

国の指定難病に。大腸がんなど重大な病気の合併を見逃さないこと

 潰瘍性大腸炎の原因は現在のところ解明されておらず、完治にいたる治療法も確立していません。そのため国の指定難病に定められ、申請して認定された人は医療費の補助が受けられます。
 なお、2015年1月より難病患者に対する医療費助成制度が変わりました(申請には認定医による診断書が必要、助成を受けることができるのは認定医療機関で治療を受けた場合、など)。詳しくは医療機関や都道府県の窓口へお尋ねください。

 潰瘍性大腸炎を発症してから7~8年たつと、一般の人より大腸がんを発症する危険性が高くなります。
 また重症例では、皮膚や目、関節などに合併症を起こすこともあるので、主治医と相談しながら定期的な検査を受ける必要があります。

潰瘍性大腸炎の治療は寛解の維持が目標に

 潰瘍性大腸炎の治療法は、重症度によって異なりますが、症状が改善・消失した状態(寛解)を維持することが目標となります。

 比較的軽症の場合は、5-アミノサリチル酸製剤やステロイド薬の内服を行います。炎症の範囲が肛門付近に限られているときには、これらの薬を肛門から腸の中に注入して使用する場合もあります。

 重症の場合は入院が必要になります。腸管を休めるために食事を休止して、点滴による治療や栄養管理を行います。また、炎症の原因となる白血球を血液から取り除く白血球除去療法を行うことがあります。病状によっては、免疫抑制薬を使用することもあります。

 多くの患者さんはこれらの内科的治療で寛解を維持し、健康な人と同じように生活することが可能となります。
 しかし、これらの治療を行っても寛解に至らない場合や、頻繁に再燃をくり返して社会生活に支障をきたすような場合、もしくは大腸がんを合併した場合には、大腸を摘出する手術が必要になることがあります。

初期には感染性胃腸炎との見分けが難しい

 潰瘍性大腸炎と同様に下痢や腹痛、発熱などを引き起こす代表的な病気に感染性胃腸炎があります。その多くは発症から数日で症状が快方に向かい自然に治ります。
 この感染性胃腸炎は例年冬場に大流行しますが、冬だけでなく一年を通して多くみられるため、急な下痢や腹痛の原因の多くをこの病気が占めています。

 したがって、自然に治りやすい感染性胃腸炎と、放置すると悪化しやすい潰瘍性大腸炎とを、発症初期に鑑別するのは、案外容易ではありません。

 次のような場合、潰瘍性大腸炎など感染性胃腸炎以外の疾患の可能性が高くなりますので、早めにかかりつけ医に相談しましょう。
・血便や下血をともなう
・強い腹痛をともなう
・1週間以上たっても症状が改善しない(症状が長く続く)

 かかりつけ医がいない場合は、最寄りの消化器科、総合診療科(家庭医)、内科等を受診しましょう。

日頃からストレス管理を行い、自己判断で治療を中断しない

 潰瘍性大腸炎は、肉体的・精神的ストレスをきっかけに発症・再燃することがあるため、日頃からストレスをため込まないよう自己管理が重要です。症状がなければ、厳しい食事制限の必要はありませんが、高脂肪食やアルコール、香辛料の摂りすぎには注意しましょう。

 この病気は寛解と再燃をくり返すことが多いため、治療により一旦症状が改善しても、自己判断で通院・治療を中断しないことが大切です。

(編集・制作 (株)法研)

【執筆】
石井 敦先生


社団医療法人養生会 かしま病院総合診療科 部長代理
福島県生まれ。1998年聖マリアンナ医科大学医学部卒業。2013年より現職。日々の活動の詳細はブログ「いわきで創る家庭医療」(http://atsushii.blogspot.jp/)をご覧ください。

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