小腸は消化・吸収と免疫のカナメ

場所柄検査が難しかったが、新しい検査法も開発

体の中で最も長い管、消化・吸収の効率を上げるヒダ状の粘膜と密生する小突起、免疫系細胞が集中

3つの部分から成り、消化・吸収のほとんどを受け持つ

 消化管の約60~80%を占める小腸は、生体内で全長約3m(解剖時で6~7m)にも及び、体の中では最も長い管状の臓器です。胃の出口(幽門)から続く「十二指腸」、それにつながる「空腸」、「回腸」の3つの部分から成っています。

 十二指腸は胃の幽門からつながってアルファベットのC字型に伸び、長さ25cmほど。その長さが成人の指を横に12本分並べたくらいになることからこの名がついています。続く空腸と回腸は複雑に曲がりくねっていて、はっきりとした境界はありませんが、十二指腸側の5分の2ほどを空腸、残り5分の3ほどを回腸と呼び、回腸の先は大腸の始まりである盲腸へとつながっています。十二指腸の直径は約5cmありますが、その先は次第に細くなり、回腸の終わりの部分では3cmほどになります。

 小腸は食物の消化と吸収に関しては最も重要な臓器で、消化・吸収の90%以上を受け持っています。それを効率よく行えるような独特の粘膜の構造になっているのが、小腸の特徴といえます。
 小腸の最も内側の部分の粘膜は、輪状ヒダと呼ばれるヒダが連なり、その表面には絨毛(じゅうもう)という長さ1mmほどの指のような突起がびっしりと生えています。さらにこの突起の表面にも、電子顕微鏡でないと見えないような極めて小さな微絨毛と呼ぶ突起が密生しています。このような構造のため、消化された食物が接触する表面積は約600倍に広がり、粘膜の毛細血管による栄養分の吸収効率を上げているのです。

2リットルの消化液と小腸の運動で食物が消化・吸収されていく

 口から摂取された食物は胃の中で強い酸性の消化液と混ざり合い消化され、ドロドロのかゆ状になって十二指腸に送り出されます。十二指腸では胆のうから胆汁、膵臓から膵液も注入され、これらが胃から送り込まれた強酸性のかゆ状の食物を中和し消化していきます。
 さらに、小腸の粘膜からは弱アルカリ性の腸液が盛んに分泌され、その量は1日に2リットルほどにもなります。この中には炭水化物、タンパク質、脂肪などを消化する消化酵素が含まれています。

 小腸では、小腸自身の収縮と弛緩をくり返す「分節運動」と「振子運動」によって、食物と消化液が十分に混ざり合い、消化・吸収が促進されます。また、主に「ぜん動運動」によって、小腸の内容物は先へ先へと運ばれて行きます。

人体最大の免疫器官でもある

 食物の消化・吸収とともに、小腸のもう一つの重要な働きは免疫機能です。免疫とは、体に侵入してくる病原菌などの異物を見つけて排除する自衛のシステムです。異物が侵入しやすい場所にはリンパ組織が集まっていますが、異物侵入の最危険地帯が食物を消化・吸収する小腸なのです。
 体中の全免疫系細胞の60%以上が小腸にあって、病原菌を攻撃する抗体の約60%を作っているといわれています。小腸は、私たちの免疫力を支える最大の免疫器官でもあります。

 胃や大腸、肝臓など消化器の病気では「悪性腫瘍(がん)」が心配になりますが、実は小腸ではあまり多くありません。免疫細胞が集中しているためか、小腸がんの発生頻度はほかの消化管がんに比べ、きわめて低いといわれています。ただし、一般的に進行しないと発見が難しく、生存率は高くないとされています。

 突然の刺し込むような激しい腹痛と嘔吐(おうと)・吐き気などをもたらす病気に「腸閉塞(イレウス)」があります。食物や消化液など内容物が腸に詰まって先へ進まなくなった状態で、腸がねじれたり外側から圧迫されて起こります。まずは、食事や水分摂取を中止して胃腸を休める保存的治療が行われます。

 消化・吸収の過程に障害が起きる場合を総称して「吸収不良症候群」と呼びます。腸管の炎症、寄生虫、腸管運動の異常、腸管の切除などが原因になります。

バルーン内視鏡やカプセル内視鏡などの検査新兵器

 小腸に異常が疑われる場合、血液検査、便や尿の検査などとともに、X線検査や超音波検査も行われますが、胃や大腸と比べると小腸は見えにくい位置にあるという難点があります。つまり、既存の内視鏡では口から挿入しても、逆に肛門から挿入しても内視鏡の長さが足りず、十分に観察することはできませんでした。

 これを克服しようと、内視鏡を長くし、さらにバルーン(風船)を挿入して腸管を固定し内視鏡を挿入しやすく工夫したバルーン内視鏡が開発されています。さらに、大きさも形も薬のカプセル剤によく似た超小型カメラを飲み込んで、腸内を運ばれながら自動的に撮影していくカプセル内視鏡も普及してきているなど、困難がつきまとっていた小腸の検査にも技術革新が進んできています。

(編集・制作 (株)法研)

【監修】
西堀 英樹先生


きたみ胃・大腸クリニック院長
1988年慶應義塾大学医学部卒業。慶應義塾大学医学部外科、国立がんセンター(現国立がん研究センター)研究所病理部、国立大蔵病院(現国立成育医療センター)外科、米国コーネル大学医学部外科などを経て、2002年より慶應義塾大学病院一般・消化器外科で大腸癌を専門に消化器癌診療に専念してきた。2007年きたみ胃・大腸クリニックを開院。苦痛の少ない内視鏡検査により胃・大腸疾患を中心とした早期診断・治療に努めている。http://www.kitami-clinic.com

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