体の中の“肝腎かなめ”腎臓の仕組みと働き
血液をろ過、老廃物を尿として排出、体内水分をコントロール
ろ過する血液は毎分1リットル、水分量や電解質の濃度、血圧の調整も。メタボとも密接な関係が
(2011年11月15日)
腰の少し上の背中側に左右1対、握りこぶしほどの大きさ
ものごとの重要なポイントを表すのに「肝腎」という言葉が使われます。腎とは文字通り腎臓のこと。肝臓と並んで人の命を左右する重要な臓器です。
腎臓の位置は腰より少し上の背中側で、左右1つずつあり、大きさはその人の握りこぶしより少し大きいくらい。そら豆のようなくびれた形をしていて、1つの重さは120〜150gほどです。
この小さな臓器の果たす大きな働きの1つは、尿をつくって体内の老廃物を排出することです。腎臓には1分間に約1リットルの血液が流れ込みます。それは心臓が送り出す血液量の4分の1ほどに当たり、腎臓の大きさからみて大変に多い量といえます。
腎臓に流れ込んだ血液は、毛細血管が絡み合った糸球体(しきゅうたい)とそれを包む袋状のボウマン嚢(のう)という部分を通過する間にろ過されます。糸球体は1つの腎臓に100万個ほどもあり、いわばフィルターです。ここでろ過されてできたろ過液は、尿の最初の段階のもので原尿(げんにょう)と呼ばれ、その量は1日に150〜200リットル、浴槽1杯分ほどにも達します。
原尿にはまだ、尿素やクレアチニン、尿酸など不要な物質のほかに、水分、糖分、ナトリウム、アミノ酸など体に必要な物質も含まれています。それらが糸球体に続く尿細管(にょうさいかん)という部分を流れていくうちに、必要な物質はもう一度血液のほうに吸収され、不要な物質が尿として膀胱(ぼうこう)に蓄えられるのです。この過程で原尿の99%は再吸収されるので、膀胱に流れ込むのは原尿の100分の1の1.5リットルほどになります。

活性型ビタミンDへの変換、造血ホルモンの分泌などの働きも
体内の水分量や電解質の調節も腎臓の重要な働きです。体重の約60パーセントが水分という人間の体は“水の袋”のようなもの。この袋の中の水分の量や、血液中に溶けているナトリウムやカリウム、カルシウムなどの電解質の濃度などを一定に保つのが腎臓です。
水分量の調節がうまくいかないと、むくみや尿の異常、脱水などの症状が現れます。血液中の余分なナトリウムや水分を排出して血圧を調整する働きにも影響が出ます。また、電解質濃度の調節によって、私たちの体液や血液のPh(水素イオン濃度)は7.4前後の弱アルカリ性に保たれています。Phが6.8以下(酸性)か7.8以上(アルカリ性)になると人間は生きていられません。
このほか、骨の形成に欠かせないビタミンDを体内で効果を発揮しやすい活性型ビタミンDに変換、赤血球をつくるのに必要なエリスロポエチンという造血ホルモンの分泌、血圧が低下して糸球体のろ過作用が滞らないよう血圧を上げるレニンというホルモンの分泌なども腎臓の働きです。このように腎臓のさまざまな機能をみると、「肝腎」と重要視されるのも納得できるのではないでしょうか。
世界的に増えている慢性腎臓病
さて、腎臓が慢性的な病気に侵された場合を「慢性腎臓病」(英語でCKDと略称)と呼ぶことが、2000年の初め頃からアメリカで言われ始めました。日本でそれまで言われていた慢性腎炎、慢性腎不全を合わせた総称で、腎臓の働きが慢性的に低下していく病気すべてを表します。
腎臓の機能が低下して腎不全が進み、どのような方法でも治療できない末期腎不全になると、人工的に腎臓の代わりをする透析療法や腎臓移植などを行わなくてはなりません。このような患者が世界的にみると、この20年間で約43万人から210万人にも増えています。
なかでも日本は人口当たりの透析患者数が最も多く、2009年末の全国調査では29万人にも及んでいます。透析療法を受けるようになると、仕事や日常生活が大きく制約されるだけでなく、心臓や血管の病気を合併しやすくなります。さらに高額な医療費が国の負担となって社会的にも大きな問題となっています。
そこで、治療する側にもされる側にもわかりやすい「慢性腎臓病」という表現を用いて慢性のさまざまな腎臓病を共通の病気として扱い、機能障害の程度を5つに分類して、腎臓病の早期発見・治療を促進しようというのが医学界の新しい動きです。
慢性腎臓病の初期には、自覚症状がほとんどありません。このため、以下のようなハイリスク群の人は、健診をきちんと受けて早期発見に努めることが大変に重要とされています。
●慢性腎臓病になりやすい人(ハイリスク群)
(1)高血圧、糖尿病、肥満、メタボリックシンドローム(以下メタボと省略)がある人
(2)高齢者
(3)近親者に慢性腎臓病の人がいる
(4)膠原(こうげん)病、尿路感染症、尿路結石などの病気がある
(5)以前、腎臓病にかかったことがある、たんぱく尿などを指摘されたことがある
(6)薬(鎮痛剤、抗炎症剤など)を常用している
ハイリスクの因子としてメタボがあがっています。メタボと診断する高血圧、高血糖、脂質異常などの因子はどれも心臓や脳につながる動脈の硬化をもたらすため、心筋梗塞や脳卒中のリスクを高めるなど命への直接的な危険を招くとして、その予防・改善に国を挙げての取り組みが進められています。動脈硬化の危険は腎臓でも同様で、その結果血流が滞れば腎臓の働きが低下することはいうまでもありません。腎臓の働きが十分でないときはメタボも進んでいることが推測され、メタボになれば腎臓も危険という密接な関係が成り立ちます。
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細谷 龍男先生
東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科教授
同大学附属病院副院長
1974年東京慈恵会医科大学卒業、78年同大学大学院医学研究科修了後、同大学第2内科入局。内科学講座第2助教授を経て、97年同教授。2009年同大内科統括責任者、2010年同大学附属病院副院長となり、現在に至る。同附属病院総合診療部診療部長、血液浄化部長兼務。専門は内科学、腎臓病学、痛風・尿酸代謝、リウマチ学。日本痛風・核酸代謝学会(理事長)、日本腎臓学会、日本内科学会などに所属。一般書に『健診で尿酸値が高めですよと言われた人の本』、『痛風・高尿酸血症を治すらくらくレシピ』、『スーパー図解 痛風・高尿酸血症』(以上、法研)など。

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