子宮のはたらきとは? 女性ホルモンは妊娠にも病気にも関係してる?

妊娠のための準備を整え、妊娠が成立しなければ月経に

ふだんの大きさは鶏卵ほど、妊娠・出産で伸縮自在。女性の半生の月経を支配するのは2つの女性ホルモン

鶏卵大からすいか大にも伸びる筋肉臓器

 1個の精子を受け入れた卵子(受精卵)を着床させ、出産までの長い時間、胎児を保護し育む部屋、それが子宮です。骨盤に囲まれた空間のほぼ中央、直腸と膀胱(ぼうこう)にはさまれ、左右を靭帯(じんたい)で支えられて浮かぶように位置しています。

 長さ約8cm、重さ約50g、大きさは普通サイズの鶏卵くらい。とはいっても鶏卵のようなだ円形ではなく洋梨が逆さになったように見えます。子宮の上部3分の2ほど、つまり逆さになった洋梨の大きな部分を子宮体部といい、中は子宮腔(しきゅうくう)と呼ぶ空間で、ここが胎児が育つ部屋です。下部の3分の1ほど、洋梨の細い部分は子宮頸部といい腟(ちつ)につながっています。

 子宮の外側は厚さ1~3cmほどの筋肉ですが、大変に伸縮性に富んでいます。本来は鶏卵ほどの大きさの子宮が妊娠すれば胎児の成長に合わせて大きくなり、出産直前には直径30cmとすいかほどの大きさにまで伸び、そして出産後には元に戻るのです。子宮の内側は子宮内膜という薄い粘膜におおわれています。子宮内膜は女性ホルモンの働きで妊娠に備えて厚くなったり、妊娠しなければはがれ落ちる(月経)ということを周期的に繰り返しています。

周期的な月経は女性ホルモンの働き

 月経を周期的に起こしている女性ホルモンとは、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の2つ。その働きにより、女性は一般的に10代前半から50歳前後までのおよそ40年間、妊娠期間を除いてほぼ1カ月に1回月経を繰り返します。そのサイクルは(1)卵胞期、(2)排卵期、(3)黄体期、(4)月経期と分けて考えることができます。

(1)卵胞期
 脳の視床下部からの指令で下垂体から卵胞刺激ホルモンが分泌されます。その刺激で子宮の両側にある卵巣内の卵胞の1つが育ち始めます。卵胞が成熟するとエストロゲンが分泌され、それとともに子宮内膜が厚く増殖して受精卵を迎える準備を始めます。

(2)排卵期
 エストロゲンの分泌が進んで一定量を超えると、下垂体からこんどは大量の黄体化ホルモンが分泌されます。その刺激を受け、卵巣内で成熟していた卵胞が破裂して卵子が飛び出し、卵巣の外へ排出されます。これが排卵です。

(3)黄体期
 卵子が飛び出した後の卵胞は黄体という組織に変わり、プロゲステロンを分泌。その作用で子宮内膜はさらに厚さを増して受精卵の着床準備を整えます。

(4)月経期
 ここまでに卵子が受精して子宮内膜へ着床すれば妊娠ということになります。妊娠しなかった場合、黄体は萎縮してプロゲステロンの分泌は低下。厚くなっていた子宮内膜がはがれ落ち、血液とともに体外へ排出される月経が起きます。こうしてまた、新しい月経周期が始まるのです。

 一方、妊娠は次のような経緯で成立します。
 排卵によって放出された卵子は、子宮の上の部分(子宮底部)から左右に伸びる卵管(8~15cmほどの細い管)の先に、手を広げたように開いている卵管采(らんかんさい)に拾われて卵管内に入ります。
 この卵子と、腟内に放出された精子はほとんどの場合、卵管内の一番広い部分(卵管膨大部)で出会います。卵子をとり囲んだ多くの精子のうち、卵子が受け入れるのは1つの精子だけ。精子を受け入れた卵子(受精卵)は細胞分裂をしながら卵管内を移動し、4~5日後に子宮内にたどり着きます。そして厚くなった子宮内膜に潜り込むように着床し、母体から栄養や酸素の供給を受けるのです。
 ほんの針先ほどの大きさだった受精卵は、およそ10カ月の間に体重3000g前後の胎児に成長し、出産を迎えます。

病気にも関係している女性ホルモン・エストロゲン

 月経の周期に関係している女性ホルモンのエストロゲンは、実は子宮内膜症や子宮筋腫、子宮体がんや乳がんといった女性特有の病気にも関係していると考えられています。

 子宮内膜症は、子宮内膜によく似た組織が子宮以外の場所に発生し増殖する病気です。卵巣(良性の卵巣腫瘍)や卵管、子宮筋肉組織の間(子宮腺筋症)、直腸と子宮のすき間、膀胱と子宮の間などで増殖し、月経痛、腹痛、腰痛、排尿痛、性交痛などの症状があります。また、不妊症の原因となる場合もあります。原因は解明されていませんが、エストロゲンの分泌が盛んな時期に多発し、分泌が低下する妊娠中や閉経後には少なくなることから、エストロゲンの関係が疑われているのです。
 また、一部の子宮内膜症による卵巣腫瘍は、将来卵巣がんの発生母地(卵巣がん発生の原因)となる可能性もあるため、年齢にかかわらず(特に40歳を超えてからも、長い期間)定期的な産婦人科受診が必要です。

 子宮筋腫は、子宮にこぶのような筋肉の塊(良性の腫瘍)ができ、月経過多や不正出血、月経痛や下腹痛などの症状が見られます。子宮内膜の内側に筋腫ができた場合は、毎月の月経過多によって徐々に貧血が進むことがあります。子宮筋腫の場合も、エストロゲンの刺激が筋腫の芽を成長させるのではないかと考えられています。

 この他、子宮の重大な病気として注意しなければいけないのは、がんです。子宮体部にできる子宮体がんは、子宮内膜の細胞ががん化するもので、正しくは「子宮内膜がん」と呼ばれます。女性ホルモンのエストロゲンは子宮体がんの発症にも関係があると考えられています。以前は欧米で多く日本では少なかったのですが、今では日本でも子宮がんに占める割合が増えています。また閉経後に多く発生すると考えられていますが、最近40歳前後の若い女性にも発生するケースが見られます。症状としては不正出血が初期のうちからみられますが、閉経前の月経不順と勘違いして受診が遅れることが少なくないようです。早期発見が大事です。子宮がん検診の一つである、子宮体がん検査も必ず受けるようにしましょう。

 子宮頸部にできる子宮頸がんは若い女性に多い子宮がんで、20代後半から増え始め、30代後半が発生のピークです。子宮頸がんは初期には自覚症状はなく、不正出血や性交時の出血で気づくことが多いようです。原因は主に性行為により感染するヒトパピローマウイルス(HPV)の持続感染であることがわかっています。そのため最近、中学・高校生の対象年齢の女子が子宮頸がんを予防するHPVワクチンを自治体の助成により接種できるようになっています。しかし、助成対象年齢外の人もぜひHPVワクチンを受けてください。
 実は、現在あるHPVワクチンは、がん化にかかわる一部(約3割)のHPV感染を予防することができないため、HPVワクチン接種だけでは子宮頸がんを完全に予防することはできません。定期的に子宮頸がん検診を受けていれば、前がん病変と呼ばれる早期段階で発見することができるので、対象年齢の人はぜひ子宮がん検診の一つである子宮頸がん検査もHPVワクチン接種と同時に受けましょう。

(編集・制作 (株)法研)


【監修】
鈴木 直先生


聖マリアンナ医科大学産婦人科学教授
同大学病院婦人科部長
1990年慶應義塾大学医学部卒業。93年同大学大学院(医学研究科外科系専攻)入学(2001年医学博士取得)。1996~98年米国カリフォルニア州バーナム研究所留学。栃木県済生会宇都宮病院産婦人科副医長、慶應義塾大学医学部産婦人科学助手を経て、2005年聖マリアンナ医科大学産婦人科学講師に就任。09年准教授、11年より現職、12年より講座代表。専門分野は婦人科腫瘍、絨毛性疾患、緩和医療、がん・生殖医療(若年乳がん患者の卵巣機能温存など)。日本産科婦人科学会専門医、日本臨床細胞学会細胞診専門医、日本婦人科腫瘍学会専門医、日本がん治療認定医機構認定医、日本緩和医療学会緩和ケアの基本教育に関する指導者。

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