筋肉の仕組みとはたらきとは? 400種類以上ある骨格筋について

筋肉は体や臓器を動かし、パワーや熱を作り出す源にもなる

体を動かす骨格筋は自分の意思で動かせる随意筋。心臓を動かす心筋、血管や内臓を動かす平滑筋は不随意筋

全身には400種類以上の骨格筋が

 テレビのスポーツ映像で、トップアスリートたちの鍛え上げた筋肉の躍動を目にできるのは、勝敗観戦以外の魅力の1つです。人間の筋肉の分布を示す全身図には体中にすき間なく張り巡らされた筋肉が描かれていますが、そこから現実に躍り出てきたようなアスリートたちのパフォーマンスの筋肉美に感動します。

 こうして私たちが普段目にする筋肉は、骨格に付着していることから骨格筋(こっかくきん)と呼ばれ、その数は400種類以上。わずか4~5mmの小さなものから、最も長いものでは50cmにもなり、それぞれに名前がついています。これらの筋肉は自分の意思で動かせるので、随意筋(ずいいきん)と呼ばれます。

 筋肉は、筋線維という収縮性のある細胞の束が集まった組織で、内部には感覚神経や運動神経、血管が張り巡らされています。骨格筋の筋線維は中枢神経の指令で収縮と弛緩を繰り返し、それによって筋肉全体も収縮・弛緩の動きをします。

 体の動きがスムースに行われるためには、骨格筋と骨がしっかり結合していなければなりません。筋肉を骨に付着させているのは、腱(けん)という結合組織の線維の束。腱は引っ張る力に対して非常に強い耐久性を持ちますが、弾力性はありません。

ブドウ糖やグリコーゲンを燃料に力を生み出す

 筋肉が収縮運動を行うときは、細胞内にたくわえていたブドウ糖やグリコーゲンを燃料にして力や熱を発生させます。骨格筋は体熱を生み出す最大の供給源で、燃料の約75%は体温を保つために利用されているといわれます。運動をすると体が熱くなるのは、熱をつくり出す働きが急激に高まるため。また、寒くなると体が震えるのは、筋肉を動かして熱をつくり出そうする体の防衛反応です。

 人間の運動を支える筋肉ですが、酷使されると急に動きが悪くなります。筋肉疲労という状態です。激しい運動で細胞内の酸素の供給が追いつかなくなると乳酸という物質がたまり、これが筋肉疲労をもたらすといわれています。

意思と関係なく動き続けて生命を維持する心筋、平滑筋

 筋肉には骨格筋のほかに、心臓を動かす心筋(しんきん)と、血管や内臓を動かす平滑筋(へいかつきん)があります。それぞれの臓器の壁となっている筋肉で、これらは不随意筋と呼ばれ、自律神経やホルモンにコントロールされていて自分の意思では動かせません。たとえば心筋は、私たちの意思とは関係なく絶え間なく心臓を動かして私たちの生命を保っており、全身の筋肉のなかで最も丈夫とされています。ちなみに、全身に血液を送り出している心臓の左心室の心筋は、肺に送り出している右心室の心筋の3倍もの厚さがあります。

気になる筋肉・腱のけがや病気

●肉離れ
 ダッシュやジャンプなどスポーツなどで瞬発的な動きをして筋肉が急に強く収縮したときに筋繊維が損傷して急激な痛みが起こることがあります。これが肉離れ。筋肉が急激に引き伸ばされて起こります。ふくらはぎや太ももに多く起こります。その部分を押すとはっきりとした痛みがあり、腫れや皮下出血がみられることもあります。

●廃用萎縮(はいよういしゅく)
 筋肉は使わないでいるとしだいにやせ細り、十分な力が出なくなります。使わない筋肉は1週間ごとに20%ずつ力が弱っていくといわれ、長期間寝たきりになっていたり、骨折などで手足をギプス固定した後などに廃用萎縮が起こりがち。無重力下で長期間過ごす宇宙飛行士たちに、筋肉の廃用萎縮が起こることはよく知られています。

●重症筋無力症
 10万人に数人程度の稀な病気です。まぶたが重い、物が二重に見えるなどの症状から始まり、次第に手足の筋肉が疲れやすく筋力が低下してきます。朝のうちは症状は軽く、夕方になると重くなるのが特徴です。運動をすることで症状が悪化しますが、休息すると回復します。重症化すると呼吸困難になることもあります。神経から筋肉への伝達が阻害されるために起こる病気で、20~30代の女性に多くみられます。

●進行性筋ジストロフィー
 筋肉が次第に萎縮していく稀な病気で、遺伝的な要因があり、いくつかのタイプに分類されます。中でももっとも多いデュシェンヌ型は、子どものときに発症します。転びやすい、走れないなどの症状で始まります。筋力低下が進み、やがて立つことができなくなり、呼吸筋が麻痺すると人工呼吸器が必要になります。

●腱の断裂
 骨格筋と骨をつなぐ腱は本来、大変に丈夫な構造なのですが、急に激しい動きをしたりすると切れることがあります。よくある例が、ふくらはぎの筋肉とかかとの骨をつなぐアキレス腱の断裂。人体の腱のなかでは最も強いとされているのですが、ダッシュやジャンプなど瞬間的に足に強い力がかかったときに、それこそ「バチッ!」と音をたてて切れることがあります。

(編集・制作 (株)法研)

【監修】
庄司 豊彦先生


多摩センター 庄司整形外科院長
1980年筑波大学卒業後、筑波大学附属病院、東京警察病院、公立昭和病院で24年間整形外科の勤務医として研鑚を積み、2004年より現職。東京警察病院では人工関節手術、肩関節外科、膝関節外科、リウマチ、リハビリテーションなど整形外科全般を担当し、公立昭和病院では13年間整形外科主任医長として北多摩地区の救急医療を担う。四肢の骨折などの外傷はもちろん、脊椎手術、関節手術、スポーツ整形など6千件の手術に携わる。日本整形外科学会専門医。

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