うつ病と薬の関係-依存性はあるの? 大量に服用したらどうなる?

なかなか質問できない疑問についてお答えします

 

こんな質問を受けることがあります

 臨床の現場に携わっていると、自分のクライエントや友人などから様々な質問を受けることがあります。そんな質問のなかで「どこまでが心の病気なの?」「私はうつ病なんだろうか」「向精神薬って不安があるけど…」といった内容の質問が最近多いような気がします。
 心の問題やメンタルケアの必要性が取り上げられている現代ですが、まだまだ社会一般の認識としては分かりにくく、不安が多い領域なのではないかと思います。そこで今回は“うつって何だろう”、“お薬ってどうなんだろう”そういった質問にお答えするかたちでお話させていただこうと思っています。

Q.うつって何だろう?

 一般的にうつ病と言われると、最近ではCMを思い出すことや、病気だから病院に行かなきゃ…そういったイメージをお持ちの方もいらっしゃると思います。では、「うつの症状」にはどんなものがあるのでしょう。たとえばひどく落ち込んで食欲がなくなったり、不眠がちになる、また性欲減退や仕事・勉強、家事などのやる気がおきなくなり、全体的にだるくなるなど様々な症状があります。また悪いほうに悪いほうに考えて、深刻な場合には自殺を考えるというケースもあります。
 ですが、こういった症状だけでいえば程度の差こそあれ、誰しも経験のあることではないでしょうか。たとえば大事な人を失ったとき、仕事で失敗したとき、恋人や家族と別れたとき…そんな時は誰でも落ち込みますし、やる気を失って呆然となってしまうことはあると思います。

Q. では“落ち込み”ってどこまでが大丈夫で、どこからがうつ病なんでしょう?

 精神的な病気を診断するときに、使用される診断ガイドラインは大きく二種類あります。
 ひとつはアメリカ精神医学会が作成したDSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)と、ふたつめは世界保健機関WHOが作成したICD(International Classification of Diseases)です。この二つのガイドラインが病院やクリニックなどで診断指標として使用されています。

 精神医学の世界で一般的に“精神病”としてとりあげるものには、統合失調症やうつ病が主にあげられます。しかしうつ病⇒精神病ではありません。うつには2種類あり、内因性うつ病と外因性うつ病に大別されるからです。簡単にいうと、内因性うつ病(endogenous depression)というのは、嫌なことがあったから、悲しいことがあったからというよりも生物学的にうつになる要因があって発症するものです。これと逆に、外因性うつ病(exogenous depression)は、具体的なエピソードがあって落ち込みが持続しているという原因のはっきりしたうつ状態を指します。また、うつ病までいかず、軽度うつ症状だけの発症という場合もあります。こうした場合は、原因となる出来事が解決したり、時がたてばすっかり良くなって社会に復帰することが多く、一般的に誰でもなりやすいうつ病ということがいえるでしょう。

Q. うつの症状かな?と思ったら…

 ちょっと落ち込み気味のとき皆さんはどうしていますか?たとえば友達と長電話したり、ショッピングに行って発散したり、カラオケやお酒など趣味で気持ちを盛り上げるといった方法があると思います。それで解決できるなら良いですが、いろいろ自分で試してみて自分の力じゃ無理だな、友達や家族の励ましでも落ち込みから立ち直れないな…そんな風に感じたときはお薬の力に頼ってみるのが良いと思います。風邪をひいたら風邪薬を飲みます。それと同じで、自分の力じゃどうしようもないと感じたとき“お薬の力”に目を向けてみてください。

Q. 薬ってなんだか不安。依存性はないのですか?

 向精神薬への依存が心配で精神科へは行きたくない…そういった声なども何度か耳にしました。現在、日本で処方されている抗うつ薬はSSRIと呼ばれる安全性が極めて高いものが多いです。SSRI以外でも以前にくらべ副作用がほとんどなく、大量に服薬しても致死に至らず安全性が評価されています。しかも覚せい剤やシンナーなどと違い、服用しても快感が得られるわけではないために薬物としての依存性はありません(*ベンゾジアゼピン系抗不安薬の依存性について欧米で指摘されたことがありましたが、臨床的に問題になる事例はほとんどないということが確認されています)。
 ですから主治医と相談して、調子の悪いときだけ頓服で服用したり、少しずつ量を減らしていくことが充分に可能です。人に相談しても気分を持ち直せない、一人で考えていても落ち込む一方…そんな時は少しでも気分が楽になるのであればお薬の力を借りるのも良いですよ。

 今回は、質問の多かった“うつ”に関して、“お薬”に関して少し精神医学的な立場からお話させていただきました。ひとりで悩みを抱えている方、不安に悩まされている方、少しでもそういった方の心のケアのお手伝いができればいいなと思っています。

【執筆】
村岡祐美カウンセラー


各分野の専門知識・豊富な実績をもつ、こころのマッサージルームピースマインド・イープのカウンセラー。ピースマインド・イープでは対面・電話・オンライン等、本人の希望にあわせてカウンセリングに対応している。

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