職場でのセクハラと向き合うには-本人も自覚しづらい心のダメージ

自分の身に起きたことをはっきりと捉え直してみよう。

 

職場のセクシャルハラスメント

 最近なぜか仕事に対してやる気が出てこない、わけもなく気持ちがふさぐ…。
こんな訴えをされる女性たちの中には、職場でセクシュアルハラスメントを受けているのに、ご自身でははっきりと気づいていないという方がいらっしゃいます。あるいは、うすうす感じてはいるけれど深刻に受け止めていないという場合もあります。
 女性の就業率が欧米に比べてかなり低い日本では、職場というところは依然として男性中心的で、女性を補助的な存在としか見ない傾向が見られます。男性の上司や同僚からの言動でなんとなく嫌な感じがするけれど、いちいち目くじらを立てるのは大人気ないように思えて受け流しているということもあるのではないでしょうか。

「環境型」と「対価型」

 セクシュアルハラスメント、略して「セクハラ」。
このことばは1989年に流行語大賞に選ばれたほど一般に浸透しています。男女雇用機会均等法第21条を始めとしてセクシュアルハラスメントを防止するための法律も少しずつ整備されてきていますが、職場の意識改革が進んだとはまだまだ言えません。
 セクシュアルハラスメントには環境型と対価型があります。環境型は職場における性的な言動によって就業環境が害されるもの、対価型は性的な言動に対して被害者が拒否したり抗議したりすることで労働条件について不利益をこうむるもの。対価型は上司が立場を利用して行うもので、被害者にとってはより深刻なのですが、不利益な取り扱いがセクシュアルハラスメントの加害者の意のままにならなかったことに由来するということが明確ではない場合が多いのです。

自分の想像以上のダメージをうけるセクハラ

 ひとつ事例をご紹介しましょう。A子さんは22才の派遣社員です。
仕事に就いた早々の歓迎会の帰り、酔っぱらった上司から突然抱きつかれました。その職場は男性上司の多くが性的な言動を日常的に行っていて、他の女性たちはそれをさらっと受け流し、その雰囲気がまるで当たり前のようになっているところでした。
その後何回か上司から食事に誘われたA子さんですが、その度に体調が悪いとか家族が病気だとかできるだけやんわりと断っていました。誘いを断ってもまた誘われるので、今度誘われたらどう断ろうかとそんなことばかり考えるようになったA子さんは、だんだん仕事に集中できなくなり小さなミスをいくつかおかしてしまいました。
そして何度目かの誘いを断ったある日、派遣元から契約の打ち切りを伝えられてしまいます。派遣先からミスが多いことを理由に辞めてほしいと言われたということでした。
もともと争いごとが苦手なA子さんはそれを受け入れ、新しい派遣先を紹介してもらうことにしました。しかし、職場を変って何か月か過ぎて、A子さんは夜眠れない、頭痛がするなどの症状に悩まされるようになりました。仕事に対しても自信が持てず、気力がなく、落ち込むことが多くなってきました。
今の職場は前ほど問題の上司もいないし、家族内に心配事もなく、これと言って原因になりそうなことは思い当たりません。
不眠で受診した心療内科の医師から紹介されてカウンセリングルームを訪れたA子さんは、以前の職場での体験をカウンセラーに話すうち、セクシュアルハラスメントの被害が自分にとっていかに大きなダメージだったかということに気づきました。

セクシュアルハラスメントは女性に対する性的暴力のひとつ

 セクシュアルハラスメントは女性に対する性的暴力のひとつです。
その体験がトラウマとなってうつ状態に陥ることがあります。もちろんセクシュアルハラスメントは犯罪をも構成する場合があるので、その時は法的な手段に訴えて加害者を追及することも被害者の回復に有効な場合があります。
しかしその前にカウンセリングで自分の身に起きたことをはっきりと捉えなおすことが必要です。被害者は最初に嫌だとはっきり言わなかった自分が悪いと思っていたり、被害にあったこと自体を恥じている場合があるので、カウンセリングでは被害者が自責感を払拭し、向き合う勇気を持てるように援助します。
もしあなたが、このような状況にある場合は、法的手段に訴えるという対策をするとともに、カウンセリングを通じて問題の整理をしてみてはいかがでしょうか。

【執筆】
樫尾恭代カウンセラー


各分野の専門知識・豊富な実績をもつ、こころのマッサージルームピースマインド・イープのカウンセラー。ピースマインド・イープでは対面・電話・オンライン等、本人の希望にあわせてカウンセリングに対応している。

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