高齢者と向き合う

老いを受け入れるということ


(2010年06月01日)

総務省発表の「推計人口」*によると、ついに65歳以上の高齢者が日本の総人口の23%、さらに、後期高齢者といわれる75歳以上は11%に達したそうです。まだまだ、と思っていても、自分の親も老いていきますし、すでに高齢者との接し方で困難を感じている方がいるかもしれません。今回は、高齢者の心の特徴を理解しながら、誰にでも訪れる老いについて考えたいと思います。

喪失体験

これまでできたことができなくなる。身近にいた人がいなくなる。身体の機能を失う。自分の存在価値を見失う・・・。
高齢者は一般的にこういった喪失感をたくさん経験します。

●自信の喪失
老化により体力、運動機能、視覚・聴覚などの五感、短期的な記憶力など一部の知的能力が低下します。さらに容貌も変化し、自分自身に自信がもてなくなります。
●アイデンティティの喪失
仕事上の役割や、家庭での役割を失い、自己有用感、自己効力感がもてなくなり、自分の存在価値がわからなくなります。
●人間関係の喪失
配偶者や友人など、特に同年代の親しい人たちとの死別は寂しいものです。さらに、自分を理解し、認めてくれる人を失うと同時に、自らの死を意識させられます。

これらの喪失体験と、それによって生じる葛藤を理解することが、高齢者の心の理解には欠かせません。
こんな例があります。
以前は会社で要職に就き、大勢の人に囲まれてバリバリと仕事をしていた、ある男性。年をとり、家族にやたらと威張り散らし、支配的になりました。
また、女手ひとつで立派に子育てを終えた「凛」としたある女性は、面倒見のよい息子夫婦に囲まれながらも、「私なんかいない方がいいわよね」とひがみっぽくなりました。
いずれも、人生での大きな役割を終え、自分の存在価値を見失いかけて不安になっている様子がうかがえます。では、どのようなことに気をつけて高齢者と接すればよいのでしょうか。

ひとりひとりの意思を理解し、その人生を尊重する

健康状態も、老化のスピードも個人差が大きいのがこの世代です。「年寄りってこういうもの」といった偏見をもたず、しっかり向き合って、相手の気持ちや意思、できることとできないことを理解することが大切です。

●話をよくきく
私たちは忙しく生活し、つい高齢者のペースに合わせることを忘れがちです。もし同居しているならば、毎日たった5分でも10分でもいいのです。しっかり向き合って、高齢者の言葉に耳を傾けてみましょう。昔のことばかり、何度も同じ話をするかもしれません。けれども、その人生の歴史に関心を寄せて、話を聴くことは、本人が生きてきた「意味」「価値」を再発見する手助けとなります。
●「もう、年だから」というレッテル貼りをしない
「年だから」といって、仕事をとりあげていませんか?疲れすぎないよう配慮しながら、もう少し頼りにしてみてはどうでしょう。「助かる」「一緒にいてくれて嬉しい」ということを伝え、本人の意思を尊重し、尊敬の念をもって接することが大切です。
●身体の変化に気を配る
高齢になれば、体力は確実に衰えていきます。特に聴力や視力の低下でコミュニケーションに支障をきたしている方も多くいるかと思います。すぐに「ボケ」を疑う前に、機能の低下を理解し、本人の立場になって対応しましょう。

「老い」を受け入れるということ

最近、アンチエイジングという言葉が流行していますが、「ああはなりたくない」という「老い」そのものの否定につながらないよう、注意が必要です。「老い」という現実を受け入れてはじめて、高齢者に寄り添うことができるのではないでしょうか。

*平成22年4月発表 総務省「人口推計」による概算値
http://www.stat.go.jp/data/jinsui/tsuki/index.htm

参考文献:
竹中星郎著『高齢者の喪失体験と再生』青灯社、2005
林千世子著『老人の「複雑な思い」をわかってあげる本』河出書房新社、2004

【執筆】
ピースマインド・イープ 津田 るみ


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