【乳清(=ホエイ)】にゅうせい

 乳清とは、牛乳から乳タンパクの主成分であるカゼインを除いたもの。水溶性のタンパク質や乳糖、水溶性ビタミン、ミネラル分をたっぷり含んでいます。英語で「ホエイ」ともいいます。

 何だか難しそう? でも身近な例では、ヨーグルトの上に溜まっている上澄み液があります。実は、あれも乳清なんです。

 チーズの作り方を例にとって、わかり易く説明します。

 チーズは、牛乳に乳酸菌とレンネット(牛乳を固める凝乳酵素剤)を加えて作りますが、こうすると、チーズ原料になる約15%の固形物(カード)と、黄緑色を帯びた85%の透明な水溶液に分かれます。この液体が乳清です。

 固形物=カードの方は、牛乳の主要なタンパク質であるカゼインが主成分で、チーズに加工されるのですから、当然栄養満点。ところが乳清の方は、チーズを作って残った副産物です。これまでは、あまり注目されずに、その殆どは廃棄されていました。ところが栄養の研究が進むにつれて、この地味な乳清が実はとても栄養価が高く、老若男女の人の健康維持に好ましい成分が含まれていることがわかったのです。

満腹ホルモンでダイエット効果も

 乳清の成分が秘めていた健康効果の内、まずは乳清タンパク質の力からお話しましょう。

 乳清中にはβラクトグロブリン、αラクトアルブミン、免疫グロブリン、血清アルブミン、ラクトフェリンといったタンパク質が含まれ、これらはエネルギーや体を構成する成分として使われています。

 たとえば、長時間運動をすると、エネルギー不足になって、筋肉に蓄えられているタンパク質が使われます。すると筋肉がどんどん痩せてしまいます。また高齢者の場合は、食が細くなって栄養不足になり、からだの維持のために筋肉のタンパク質が使われ、筋肉が衰えていきます。そんな時こそ乳清タンパク質の出番。乳清タンパク質は、良質タンパク源として働いてくれるのです。スポーツ選手が好んで摂取しているホエイプロテインというのは、まさにこの乳清タンパク質のことなのです。

 また、ダイエット効果も期待できるようです。私たちは物を食べると、消化管からコレシストキニンというホルモンが分泌されますが、これが満腹感を脳に伝える信号物質だと言われています。乳清には、グリコマクロペプチドと呼ばれるカゼイン由来のペプチドが含まれており、このペプチドはコレシストキニンの分泌を促進させます。乳清が満腹感を与え、少量の食事でも満足できるというわけです。

 これだけではありません。乳清タンパク質には、他にもすごい力があります。それはアミノ酸のグルタチオンを増加させる効果があるということ。グルタチオンは活性酸素の働きを抑制する抗酸化作用があり、アルツハイマーの予防やガンの予防にもつながる成分です。

 


肌荒れを解消し美肌効果もあり

 乳清のことを知れば知るほど、世界一の美女・クレオパトラも実は牛乳風呂ではなく、乳清のお風呂に入っていたんではないかと思えてきます。乳清タンパクには抗炎症作用があり、肌荒れにも、その効果が期待できるのです。乳清配合の化粧品なども商品化されてきていますから、注目です。

 「ストレスがたまって、疲れが取れない」という人にも、乳清はおすすめです。βラクトグロブリン、αラクトアルブミンには、鎮痛・鎮静作用があり、対ストレスにも良いという研究結果が発表されているのです。また、睡眠誘発作用もあり、「なかなか眠れない」「眠りが浅い」などの症状にも有効です。

ストレスや睡眠障害は現代人の持病みたいなもの。乳清の力に期待大です。今やっと注目されだした乳清ですが、既に多くの商品が登場しています。この秋、乳清の力を試してみては?


金子哲夫 博士
明治乳業株式会社 食機能科学研究所栄養研究部部長 理学博士。
乳の研究一筋に30年携わり、現在は乳清の栄養分析に取り組んでいる。