【鉄分】てつぶん

 不足が許されないミネラルの一つで、赤血球のヘモグロビンを構成する主成分です。筋肉中のミオグロビン(ヘモグロビンに似たたんぱく質)というエネルギー源になる物質の成分としても使われます。
「血液中の赤血球は呼吸で取り入れた酸素を全身に運びますが、それは鉄分でできたヘモグロビンが酸素と結びつきやすいからです。逆にいうと、つまり鉄分が不足すると、赤血球は減少したり不活性になったりして、酸素が全身に十分にいきわたらなくなります。それほど重要なミネラルですから、健康な体内には常時3.5gほどの鉄分が存在しています」(南雲久美子先生)
私たちの生命活動に必要不可欠な酸素を体内に運んでいるのは鉄分、ということを肝に銘じておかねばなりません。

特に女性に多い鉄欠乏性貧血

貧血に悩む女性が多いようですが、その95%は鉄欠乏性貧血だそうです。文字通り、鉄不足により酸素の供給が滞るからですが、もともと鉄分は新陳代謝などによって1日に1~1.5mgくらい自然に(性別・年齢にかかわらず)失われています。
「加えて、女性は様々な理由で鉄分の欠乏をきたしやすいのです。月経や出産は体外への出血によって、妊娠中は胎児に鉄分を取られるため。母乳にも相当量の鉄分が含まれるので授乳中の女性の多くは鉄分不足に陥ります。30代以降に増える子宮筋腫でも、出血は少量ですが長期にわたります」(南雲先生)
 そのため、鉄分の1日所要量は成人男性が10mgなのに対して、成人女性は12mgとされています。女性は鉄分が失われやすい上に、ダイエットによる偏食で、鉄分の摂取までも慢性的に不足する人が多くみられるそうです。ちなみに、鉄欠乏性貧血の症状は次のようなものです。
●めまい、息切れ、動悸
●疲れやすい
●顔色が悪い
●冷え性、など
「冷え性は原因が多岐にわたるので、冷え性=貧血ではありませんが、貧血の人のほとんどは冷え性持ちです。ただ、鉄欠乏性貧血の症状を鉄分不足のためとは思いもしないのが実情です。症状を自覚するときは、鉄分不足は深刻な状態にある、と考えてください」(南雲先生)

実は、鉄は食品からの吸収率が非常に悪い栄養素で、約10%しかないそう。つまり食品で1日12mg摂っても、実際に吸収されるのは1.5mg前後。1日の消失量は前述したように約1.5mgですから、これで差し引き0。1日12mgは摂りましょうというのは、実質1.5mg摂取するためなのです。

鉄分をサプリで補給するのも手

「1日12mgの鉄を食べ物から摂らないでいるとどうなるか、それが問題です。体内の鉄分は赤血球中のヘモグロビンに存在する鉄分(機能鉄という)と、筋肉中のミオグロビン、そして肝臓に蓄えられている貯蔵鉄があります。機能鉄は不足が許されないので、不足すると貯蔵鉄が回されます」(南雲先生)
 もうおわかりでしょう。1日12mg(実質1.5mg)の鉄を摂らないでいると、貯蔵鉄が日に日に減っていき、やがて底をつきます。鉄欠乏性貧血の進行・重症化はこうして起こるわけです。
 だから、意識的に鉄分を摂る必要があります。
 鉄分を多く含む主な食品は上表の通りです。レバーなどの動物性食品の鉄分はヘム鉄といい、植物性食品の非ヘム鉄より吸収率がいいことを覚えておいてください。非ヘム鉄もビタミンCがあると吸収率が高まるので、野菜でも摂りましょう。
「いずれにしても、鉄分は食べ貯めができません。毎日の食品からバランス良く摂ることが大切です。
なお、鉄欠乏性貧血を自覚するなら、血液検査で客観的に鉄分量を測定し、鉄剤(薬)を補給すべきかどうか医師に相談してください。ただし鉄剤は胃腸に負担をかけ、過剰摂取のリスクもあるので、サプリメント等で控え目に補給するのも一考です」(南雲先生)

ヘモグロビンは体中に酸素を届け終わると、代謝で発生した二酸化炭素と結びつき、静脈を経て心臓→肺へと戻り再び酸素と結びつきます。

鉄剤に加えて、鉄分が摂れるしょうゆまでも!
鉄分補給のための商品。(右)しょうゆ多糖類SPSと鉄分を強化。
小さじ2杯で鉄分3mg摂れる「おいしく鉄分がとれるしょうゆ」(200ml)¥315/ヒガシマル醤油。(左)
鉄剤の定番「マスチゲンS錠」(60日分)¥2,940/日本臓器製薬です。


南雲久美子
杏林大学医学部卒。慈恵医大などを経て北里研究所附属東洋医学研究所で東洋医学を学ぶ。
96年、東洋医学と西洋医学を融合した治療を行う目黒西口クリニックを開業。著書に『冷え症・貧血・低血圧』(主婦の友社刊)などがある。