【腸管免疫】ちょうかんめんえき

あなたの体を守るシステム、それが「免疫」です。細菌やウイルスなどの病原体の侵入を感知し、抗体を作って自分の体をガードします。その機能が、なんと腸に備わっているのを知っていますか。
「免疫システムの中心を担うのは白血球中の免疫細胞“リンパ球”です。小腸や大腸にもっとも多く存在し、フル回転で働いているのでとくに“腸管免疫”と名づけています。腸管の表面積は広げるとテニスコート1面半ほどにもなり、日頃からたんぱく質など食事で摂取した成分や病原細菌にさらされています。腸管の免疫システムは吸収すべきものと異物とを識別し、異物と判断したものは排除したり、その毒性を中和したりするとても重要な役割を果たしているのです」(伊藤喜久治先生)
 つまり、腸は消化吸収や食べ物のカスを便として排出する役割のほかに、悪いものから体を守る機能を併せ持つ臓器でもあるのです。

腸が全身の健康を守る!

腸管免疫には、重要な役割を担っている特別な免疫組織があります。
「腸にある消化管はリンパが発達していて“消化管リンパ装置”と呼ばれています。その中心となるのがパイエル板。そこに免疫細胞が集中。さまざまな物質を取り込んで免疫機能を維持しているのです」(伊藤先生)
 消化管の免疫組織は、全身の免疫機能を維持するのに重要な働きをしています。「異物を取り込み、異物に対する抗体を作る細胞を刺激するとともに、リンパ管から免疫情報を全身に配信する仕組みになっています。大まかに言うと、このような流れで免疫システムが機能するのが正常な状態なのです」(伊藤先生)

 では、免疫システムがうまく働かなくなると、どのようになるのでしょうか。「体に入ってきた病原微生物を処理できなくなるので、細菌やウイルスによる感染症にかかりやすくなります。食中毒やインフルエンザがその典型的な例です。風邪もひきやすくなりますし、ニキビ、肌荒れ、肌の乾燥、湿疹などの皮膚病をも誘発します。また、口内炎にも悩まされるでしょう」(伊藤先生)
 そうしたケースとは別に腸管免疫が働きすぎて“過剰反応”を起こすことがあります。それが現代病の代表、アレルギーなのです。
「ある種の食物成分に対して腸管の免疫系が異物(アレルゲン)と認識して、食物アレルギーを起こします。花粉症やぜん息、潰瘍性大腸炎なども腸管免疫の異常反応によるものと考えられています」(伊藤先生)
 腸管免疫というコトバはあまり馴染みのないものですが、腸は健康な生活を送るためにはかかせない重要な器官であることはわかりましたね。

乳酸菌で腸管免疫を正常に

 では腸管免疫を正常に保ち、バランスよく働かせるにはどうしたらいいのでしょうか。

「腸管には無数の腸内細菌がバランスよく常在しています。これを“腸内フローラ”(腸内細菌叢)といいます。正常な“腸内フローラ”とは、乳酸菌やビフィズス菌など善玉の腸内細菌が、大腸菌などの悪玉菌より優勢な状態のことをいいます。そして、“腸内フローラ”が正常なら、免疫システムもバランスが保たれて、腸管免疫の低下や過剰反応は起こらなくなります」(伊藤先生)

 その証拠を示すおもしろい無菌マウスの実験があります。無菌マウスとは腸内細菌がゼロのため、免疫力が弱い状態のマウスのこと。ところが、このマウスに通常のマウスと同じレベルの腸内細菌を与えると通常の腸管免疫を獲得するそうです。 そこで、気になるのが腸管免疫を正常に働かせる力を持つ、腸内細菌についてです。「抗生物質(アンチバイオティクス)に頼らずに、食品から乳酸菌やビフィズス菌を摂取して“腸内フローラ”を整える働きのある菌をプロバイオティクスといいます。また、オリゴ糖や食物繊維、ビタミン・ミネラルをバランスよく摂取したりしてプロバイオティクスや善玉菌を助けるものをプレバイオティクスといいます。この2本立てを継続的に実践すれば、腸管免疫は正常に機能してくれるのです」(伊藤先生)
 お肌の健康や自分と家族の病気予防を考えるなら、乳酸菌・ビフィズス菌の補給と、栄養バランスのいい食事が大切ですね。

お話を伺った先生
伊藤喜久治先生
 東京大学大学院農学生命科学研究科・準教授。帯広畜産大学獣医学科、東京大学大学院農学系研究科などを経て現職。腸内フローラのコントロール、プロバイオティクスなどによる予防医学の研究に数多く携わっている。