【モリンガ】もりんが

 モリンガはワサビノキ科の落葉高木。原産国のインドでは、5千年もの昔から伝統医学のアーユルヴェーダで利用され、メディカルハーブとして食されたり、オイルマッサージに使われてきました。その分布は数千年の歴史の中でインドネシア、フィリピン、アフリカなどへ広がり、今では日本の熊本・天草地方や香川・小豆島、沖縄でも栽培されています。暑さに強く、成長が早いのが特徴で、種から栽培して3カ月で180㎝、1年で5m以上伸びることも。高いものは10mほどになり、花を咲かせて実を実らせます。
 葉、花、実、茎、種、根と、その全てが食材、薬、化粧品等に利用され、モリンガの利用価値は無限大といわれます。

 モリンガの栄養について教えてくれたのは、長野県短期大学で食品学の講義をしている小木曽加奈先生。「モリンガの栄養価はすばらしいのひとこと。例えば葉には、タンパク質、カルシウム、鉄、カリウム、ビタミンA、C、E、βカロテン、ポリフェノールなど各種栄養成分がバランスよくたっぷり含まれています。飢餓に苦しむ地域ではモリンガの葉の粉末を加えたミルクを乳幼児に与えていることから『緑のミルク』と呼ばれているほどなんですよ。特にタンパク質は100g中11.2gもあって、他の植物の葉と比較してかなり多いですね」
 また、カルシウムは牛乳の18倍、ポリフェノールは赤ワインの30倍も!骨を丈夫にしたり、抗酸化作用によるガン予防が期待できる他、血糖値・コレステロール値の抑制、肝機能の促進、内臓脂肪の燃焼、スギ花粉のアレルギー軽減作用も。「モリンガは病気の予防だけでなく、美肌にも効果的です。葉には、にきびなどの炎症を抑える硫黄成分が、種からとれるオイルには、お肌に潤いを与えるオレイン酸がたっぷり含まれていますよ」(小木曽先生)

捨てる部分のないマルチパーパスツリー

 この10年ほどでモリンガ人気が上昇。多くの国で食品を中心として普及しています。「ドイツでは小さなドラッグストアでもモリンガのサプリを扱っているほど定番になっています。もちろん健康大国アメリカでも、モリンガ製品は大人気ですよ」と教えてくれたのは、熊本でモリンガの栽培や製品開発を行っている「天草モリンガファーム」代表の四方田徹さん。

 モリンガは捨てる部分が一切なく、全て利用できることから、世界では“マルチ・パーパス・ツリー”と呼ばれているそう。
 甘い香りのする白い小さな花は生食したり、乾燥させてフラワーティーとして飲まれます。種は動脈硬化を防いだり保湿作用があるオレイン酸たっぷりのシードオイルとなり、食用や化粧品に。種の搾りカスも健康食品に使われます。そしてもっとも一般的に利用されているのが葉。フィリピンでは市場に並ぶほどポピュラーな食材で、乾燥させた葉を煎じて茶葉にしたり、パウダー状にして料理に混ぜたりして使います。高麗人参のような太い根は、カレーなどのスパイスに。枝や木の部分はパルプの原料となります。

地球の未来を育てる植物

 モリンガのメリットは、これだけではありません。「実は、モリンガの実には、水をきれいにする作用があるんですよ。泥水にモリンガの実の搾りカスや葉のパウダーを入れると泥が分離して沈んで、きれいな水が上に。これはモリンガに豊富に含まれるタンパク質の、汚れを吸着する作用によるもの。この作用を利用すれば、井戸を掘れない開発途上地域などで飲料水を確保することも可能になります」(小木曽先生)

 環境対策資源としてのニーズは他にも。モリンガの葉はCO2吸収率がきわめて高いため、温暖化対策に有効活用できると注目されています。また、成長が早く育てやすいため、砂漠の緑化対策にもうってつけ。
 人の健康をサポートする食物として、地球を救う資源として、モリンガはこれからますます、私たちの未来に欠かせない存在になりそうです。

お話を伺った先生
小木曽加奈先生
長野県短期大学生活科学科健康栄養専攻専任講師。農学博士。農業普及指導員。長野県の郷土食、薬草、野菜などの機能性の評価および食品の加工に関する研究を行っている。