【ジンゲロール】じんげろーる

 日本の食卓に欠かせない食材「しょうが」。冷え取り効果が有名ですが、からだにうれしい働きはそれだけではありません。しょうがには辛味成分が約250種類、揮発(香り)成分が約50種類も含まれています。さまざまな優れた薬効があるため、漢方薬の約7割に、しょうがが含まれているといわれます。
 「多くの含有成分の中でも、とりわけ高い薬効が認められているのが辛味成分のジンゲロールとショウガオールです。生と加熱した場合とで、この2つの成分の比率は変わるんですよ」と、しょうが研究の第一人者で食品医学研究所所長の平柳要さん。
 あるデータでは、生のしょうがではジンゲロール570ppm※に対してショウガオールは8ppm。それが90℃で5分加熱すると、ジンゲロールは約25%減って430ppmに、ショウガオールは50%増えて12ppmに。加熱によりジンゲロールがショウガオールに変わるのです。
 ※ppmは濃度を表す単位

風邪を引いた時は解熱に有効

 「冷え取り作用は基本的にショウガオールの働きによるもの。ジンゲロールには、殺菌や末梢の血管を拡張する作用などがあります」(平柳さん)
 殺菌効果は細菌、真菌、寄生虫、ウイルスにまで及び、風邪や食中毒を防ぎます。
 「日本には古くからお寿司にしょうがを添えて食べる習慣がありますが、これは食中毒を防ぐ知恵から生まれたものなのです」(平柳さん)
 末梢の血管を拡張させる働きにも注目を。
 「ジンゲロールには手足の血管を広げて血流を促し、皮膚表面の温度を一時的に上げる作用があります。この時、体幹の温度はそれほど上がらずに発汗するので、体の熱が奪われます。つまり体を冷やすので、風邪を引いた時に摂ると解熱効果が期待できますよ」(平柳さん)
 他にも、脂肪の吸収を抑える作用、抗酸化作用、胃腸の働きを整える作用、アレルギー症状を抑える作用などがあります。

1日10~30gを目安に毎日の食卓に

 「ジンゲロールの効果を効率的に得たいなら、生で摂るのがおすすめ。逆に、体を芯からあたためてポカポカにするショウガオールの効果をたくさん得たいなら、加熱調理したものを食べましょう。ショウガオールには脂肪の燃焼を促進する作用もありますよ」(平柳さん)
 加熱してショウガオールを増やすには、80℃で蒸すののがいちばん効率的。蒸すとジンゲロールの水の分子が切り離され、ショウガオールに変わりやすいのです。また、ジンゲロールは30℃くらいから徐々にショウガオールに変わり、80℃で最も多く変化します。そのため、加熱のしすぎは逆効果。100℃を超えるとショウガオールがまた別の成分に変わってしまいます。温め効果を得たい時は、100℃を超えないよう注意しましょう。
 「ジンゲロールはしょうがを加熱後、さらに乾燥させることでショウガオールに多く変化するので、しょうがの2大成分を効率的に摂りたいなら加熱乾燥して粉末に。ジンゲロールとショウガオールの比率は1:1にまでなることも」(平柳さん)

 ちなみに、しょうがには土しょうが(ひねしょうが)、新しょうが、谷中しょうが、金時しょうがなどの種類がありますが、最も身近なのは土しょうが。
 「ジンゲロールが最も多いのは金時しょうがで、その量は土しょうがの4倍も。味は独特の苦味があるウコンに近いです。ただ、金時しょうがは一般向けにはほとんど流通していない高級品。健康効果を得るには土しょうがに含まれる量で十分なので、1日10~30gを目安に日々の食卓に取り入れてほしいですね。ジンゲロールもショウガオールも皮の下に多く含まれているので、よく洗って皮ごと使うといいでしょう」(平柳さん)
 「食べる万能薬」「台所の神の申し子」などともいわれるしょうが。その薬効パワーを積極的に取り入れて。

お話を伺った方
平柳要さん
食品医学研究所所長・医学博士。元日本大学医学部准教授。科学的根拠に基づいた健康食品の研究・開発を行う。しょうが研究の第一人者としてテレビ・雑誌などでも活躍。『決定版医者いらずのウルトラ蒸しショウガレシピ』(ぴあMOOK¥1,008)など著書多数。