【マインドフルネス】まいんどふるねす

 うつ病や不安症の原因ともなるストレス。「マインドフルネス」は、このストレスを発散させ、心の健康を取り戻す心理療法のひとつです。
 1979年に精神科医のジョン・カバットジン氏が考案。アメリカの大学で、ストレス低減プログラムとして治療に取り入れたことから始まりました。
 「マインドフルネスはアメリカではすでに長い歴史があり、多くの大学の臨床心理学教室で学ばれ、認知療法のひとつとして定着しています。効果の高さから世界で注目されていますが、日本での普及はまだまだです」と言うのは、日本におけるマインドフルネスの第一人者で、精神科医の貝谷久宣先生。

 マインドフルネスという言葉は、英語のMindfulnessをそのまま使用しているものですが、これはインドやスリランカなどの地域で使われてきたパーリ語の「Sat(iサティ)」の英訳。Satiとは、原始仏教の重要な瞑想概念のひとつで、中国語では「念」、日本語では「気づき」と訳されます。
 「マインドフルネスは禅に大きく影響を受けています。禅では、瞑想によって無常や無我の境地を得ますが、それに西洋の心理学の考え方を組み合わせて考案されました。もともと禅の文化を持つ日本にとっては“逆輸入”されたものとも言えますね」(貝谷先生)

意識を「いま」「ここに」「ありのまま」に集中

 マインドフルネスの基本は、呼吸法に意識を集中した瞑想。座禅を組むかラクな姿勢で座り、お腹をゆっくりとふくらませたりへこませたりする腹式呼吸をして呼吸に意識を集中します。心が静まってきたら、体の感覚、心に浮かぶことをすべて受け入れます。このとき、「いま、ここに、ありのまま」の瞬間を受け入れることがポイントです。

 うつ症状の原因となるストレスは、過去にとらわれたり、将来を心配するあまりに感じてしまうもの。必要以上のストレスを感じないためには、「いまこの瞬間の自分が生きている現実に気づく」ことが大切なのです。私たちは日々、さまざまなことを考え、判断しています。でもマインドフルネスでは、「よい/悪い」「正しい/正しくない」「すべき/すべきでない」などを判断しないで、今起きている事実だけに目を向けます。なぜなら考えに「判断」を加えると、過去の嫌な思いや将来の不安と結びついてしまうからです。
 例えば瞑想中に「昨日、隣の奥さんにイヤミを言われた」と浮かんだとします。このとき、「イヤミを言われて嫌だった」「そういえばその前も……」などと感情を追いかけず、ただ「こんなことを言われたな」という事実だけをとらえるのです。

抑うつの改善や日常のストレス対策に

 この瞑想は、脳の働きにも大きな影響を与えます。
 「瞑想をすると心を落ち着かせるセロトニンと、やる気を出させるドーパミンの両方が分泌されます。うつなどの心の病気は、これらの神経物質が不足したり、バランスが崩れてしまうことが原因のひとつですから、瞑想は科学的にも有効と言えます」(貝谷先生)

 マインドフルネスは、気分が落ち込んでいる抑うつの状態を改善したり、うつ病やプチうつ(「非定型うつ病」)の再発予防効果が期待できます。
 「うつ病患者の場合、症状がよくなって、薬を減らしていく場合に有効。もちろん、健康な人が日常のストレスをやわらげる方法としてもすすめられます。すぐ緊張する、落ち着かないなどの心の不調が軽くなっていきますよ」(貝谷先生)

 免疫力を上げる効果も期待できるため、がんなどの病気の悪化を防いだり、QOL(生活の質)向上のために使われることも。

 マインドフルネスは、貝谷先生が設立した東京マインドフルネスセンターで学び、実践することができます。座って行う基本の瞑想の他、食べながら行う瞑想、歩きながら行う瞑想、横になって行う瞑想、ヨガ、レクチャーなどのプログラムがあります。事前予約が必要で、費用は1回3,000円(食べる瞑想は、指導・教材費として別途500円かかります)。
 「さまざまなかたちで瞑想することで、日常生活の一瞬一瞬に意識を集中できるように。五感も研ぎ澄まされるので、『いま、ここに、ありのまま』を受け入れやすくなっていきます。ある程度定期的に繰り返して行うことで、必ず心の変化を実感できるようになりますよ」(貝谷先生)

 興味がある方は、東京マインドフルネスセンターのHP(http://www.tokyo-mindfulnesscenter.jp/)か赤坂クリニック(03-5575-8198)まで。

お話を伺った方
貝谷久宣先生
精神科医。医療法人和楽会理事長。名古屋、赤坂、横浜、鎌倉にメンタルクリニックを展開。赤坂にある東京マインドフルネスセンターでは講師も務める。『非定型うつ病パニック症・社交不安症』(主婦の友社¥1,512)他、監修書多数。