【舌下免疫療法】ぜっかめんえきりょうほう

 国民の4人に1人がかかっている花粉症。その画期的な治療法として注目されているのが「舌下免疫療法」です。
 これまでの花粉症の治療法といえば、症状をやわらげる対症療法が中心。薬を飲んだり、鼻の粘膜を焼いて症状を抑える方法などがあります。舌下免疫療法は、これらの対症療法と違い、根本的な治療が期待できるうえ、「舌の下にスギ花粉のエキスを垂らすだけ」と、方法も簡単。

 そもそも「免疫療法」とは、アレルギーとなる物質を少しずつ体内に摂り入れることで、その物質に対する免疫を高める治療法をいいます。長い間、注射が中心でした。
 「スギ花粉治療エキスを注射するのですが、徐々にその濃度を上げていき、打つ間隔を広げて最終的には月1回の注射を2~3年続けます。症状が根治、もしくは改善したという有効治療率は8割にものぼります」と、花粉症の治療に詳しい永倉仁史先生。でもこの療法は、あまり普及していません。考えられる理由は、痛みを伴う「注射」を長期間続けなければならないことが患者に負担と感じられること。また、手間がかかる割に治療費が保険診療で1回数百円と安く、医師が手がけたがらないという事情もあります。

自宅でできて痛みもない!

 注射で行う治療のメリットはそのままに、デメリットを減らしたのが舌下免疫療法です。
 「注射を打つ代わりに、舌の下にスギ花粉エキスを垂らして2分置きます。毎日1回、少量から始め、2週間かけて少しずつ量を増やしていく。一定量まできたら、以降は同量で続けます」
 このスギ花粉エキスは「シダトレン」といい、昨年10月から保険薬として認められています。新薬のため、今年10月までは2週間に1度の通院が必要です。でも10月以降は、薬が一定量に定まった後なら月1回の通院でOK。薬代は、1カ月1000円~2000円が目安です。

 なぜ舌の下がよいかというと、吸収がよいだけでなく、アレルギー細胞が少ないので過剰なアレルギー反応を起こさずに体内に摂り込めるためと考えられています。また、経口薬のように口からただ飲み込むだけだと胃で消化されてしまうので効果がないのだとか。
 舌下免疫療法は、ヨーロッパではすでにスタンダードなアレルギー治療として確立。近年はアメリカでも、舌下剤が次々と承認されています。
 「ヨーロッパではイネ科、アメリカではブタクサの花粉症があり、日本のスギと合わせ世界三大花粉症といわれています。現在、研究が進んでいるヨーロッパを中心に、アレルギーの免疫治療は世界的に『注射』から『舌下』に移行しつつあるんですよ」

スギ花粉以外の薬の発売にも期待が!

舌下免疫療法の治療は、3~5年続けることがすすめられます。早い人では3カ月ほどで効果を実感し、1年、2年と、続けるほどに効果が上がります。
 「臨床研究の際、1000人以上に試してもらいましたが、そのうち2年目まで継続した人の約2割が根治、7割が改善、効果を感じなかった人が1割。注射とほぼ同様の効果があることがわかりました」
 効果を感じなかった人の原因としては、ハウスダストなど別のアレルギーを持っていたことが考えられます。注射の場合、スギの他にもハウスダストやブタクサの治療薬があり、同時に複数のアレルギー治療が可能。一方、舌下免疫療法では……。
 「今年2月にハウスダストの舌下錠が認可されたので、夏の終わりには保険診療が始まるはずです。錠剤なので、エキスより使いやすいですよ。スギ花粉の錠剤も今後、出てくるでしょう。ただ、現在日本では、花粉症はスギ舌下免疫療法の薬しか認可されていません。複数のアレルギーをどう治療していくかは、今後、よく検討していく必要がありますね」

 海外ではすでに、イネ科やブタクサの舌下剤も発売。将来的には「スギ・ヒノキミックス」のような薬や、ひとりひとりのアレルギーに合わせた「オーダーメイド舌下治療薬」もできる可能性があるとか。さらに……。
 「実はスギ花粉の舌下免疫療法は、ハウスダストやぜんそく、アトピーなど他のアレルギーを予防する効果もあることがわかっています。スギ花粉に悩んでいる人は、来年の花粉シーズンに向けて効果を上げるためだけでなく、他のアレルギーの予防という意味でも早めに治療を始めるといいでしょう。ただ、スギ花粉が飛んでいるうちに始めると体に花粉が入りすぎてむしろ症状が悪化してしまうので、開始時期は6月以降に」

お話を伺った方
永倉仁史先生
ながくら耳鼻咽喉科アレルギークリニック院長。アレルギー専門医。文部科学省の「スギ花粉症克服に向けた総合研究」に参加し、全国でスギ・ヒノキ花粉症の調査・研究を実施。著書に『スギ花粉症は舌下免疫療法(SLIT)でよくなる!』(現代書林 ¥1,296)がある。