若い女性に多い「バセドウ病」

甲状腺ホルモンの過剰分泌で全身にさまざまな症状が

甲状腺の働きを正常に戻せば日常生活に支障はない
(2008年03月18日)

バセドウ病は女性に多い自己免疫疾患

 バセドウ病は20~30歳代の若い女性に多い病気です。ちょうど就職、結婚、妊娠、出産など人生の大きな節目となるできごとが重なる年代で、それが病気の発症に深くかかわっていたり、治療を受けるうえで大きな不安材料になったりしています。なかには、バセドウ病になると治らない、子どもを産めないなどと心配する人もいますが、これは大変な誤解です。病気について正しく理解して適切な治療を受ければ、子どもも産めますし、普通に生活することができます。

 バセドウ病は、免疫の異常によって起こる自己免疫疾患です。私たちの体には、外敵から身を守る免疫機能が備わっていて、細菌やウイルスなどが侵入したとき、抗体をつくって排除しようとします。自己免疫疾患では、何らかの理由でこの免疫システムに異常が起こり、自分の体の成分も敵とみなし、自分自身を攻撃する抗体をつくり出してしまうのです。

 バセドウ病の場合、敵とみなされるのは甲状腺にあるTSH受容体といわれる部分です。ここは、脳の下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)を受け取る受容体ですが、これが敵とみなされると、TSH受容体に対する抗体がつくられ、TSH受容体を刺激します。すると、甲状腺ホルモンがつくられ続け、過剰に分泌されることになります。
 このようにバセドウ病は、免疫の異常によって起こることはわかっていますが、どうして免疫異常になるのか、根本原因は明らかになっていません。

 そもそも甲状腺ホルモンは、全身の代謝を促す働きをする「元気のもと」のような役目を果たしています。通常、分泌量は一定に保たれていますが、過剰に分泌されると、さまざまな症状となって現れます。このような状態を甲状腺機能亢進(こうしん)症といい、その代表的なものがバセドウ病です。
 典型的な症状は、首(甲状腺)が腫れる、目つきが鋭くなる、食欲はあるのに体重が減るなどです。ほかに、どうき、不整脈、頻脈、高血圧、イライラ、のぼせ、多汗、疲れやすい、のどの渇きなどもよくみられる症状です。

甲状腺の働きを正常に戻す薬物療法

 バセドウ病の治療法は、すでに確立されています。適切な検査を受け、治療計画にしたがって治療を受けることで治る病気です。治療法には薬物療法、アイソトープ療法、手術療法の3つがありますが、特に事情がない限りは薬物療法が第一選択になります。

 薬物療法では、甲状腺ホルモンの過剰な分泌を抑える抗甲状腺薬を服用します。効果が出始めるまでに8~12週間、その後、甲状腺ホルモンの分泌が正常になったら、3~6カ月かけて、少しずつ薬の量を減らしていきます。こうして甲状腺ホルモンの分泌が正常化して、薬の服用量も必要最少量が1~2年続いたら、服用を中止するかどうか検討されることになります。

 抗甲状腺薬は、基本的に誰でも服用することができ、妊娠中や授乳中の女性でも服用可能です。しかし、時に白血球の減少などの副作用が出て飲み続けることができなくなることがあります。その場合は、アイソトープ療法、手術療法のどちらかを選ぶことになります。

 アイソトープ療法は、抗甲状腺薬で副作用のあった人、抗甲状腺薬で効果のなかった人、手術をして再発した人などが対象になります。ただし、この治療法は、放射性ヨードの入ったカプセルを飲むものなので、妊娠中や妊娠の可能性のある人、授乳中の人、18歳以下の人などは受けることができません。

 手術療法は、甲状腺を少しだけ残して切り取る治療法です。早く治したい人、甲状腺の腫れの大きい人、抗甲状腺薬が使えずアイソトープ療法も希望しない人などが対象になります。

生活リズムを規則正しく、過労やストレスをためず、たばこは吸わない

 バセドウ病は、もともと遺伝的になりやすい素因をもっている人が、精神的に大きな打撃を受けたときなどに、それをきっかけに免疫異常を起こして発症しやすくなることがわかっています。遺伝的な素因と環境的な因子が組み合わさって発症すると考えられるわけです。それだけに、精神的なストレスが過剰にならないように注意することが大切です。

 さらに、抗甲状腺薬での治療中にイライラするようなできごとが多いと、治療効果が低くなることもわかっています。過剰な精神的ストレスは発症の引き金になり、日常的なイライラは治療を妨げたり、再発のきっかけになりやすいというわけです。

 バセドウ病の発症を防いだり治療効果を高めるには、まず、十分な睡眠をとって生活リズムを規則正しくすることです。体の疲れや精神的なストレスをため込まないように、また、過度の運動で過労に陥らないように注意しましょう。音楽を聴く、本を読む、絵を描く、森林浴をするといったリラックス法もおすすめです。

 また、喫煙はバセドウ病発症のリスクを高めるだけでなく、治療を長引かせ、再発率を高めることがわかっています。とくに女性への影響は大きいので、たばこを吸っている人は禁煙しましょう。

(『バセドウ病 正しい治療がわかる本』吉岡成人著、法研より)

【監修】
吉岡 成人先生

北海道大学大学院医学研究科内科学講座・第二内科准教授
1981年北海道大学医学部卒業。自治医科大学病院内分泌代謝科、聖路加国際病院内科、朝日生命糖尿病研究所、市立札幌病院内分泌代謝内科などを経て、2002年北海道大学病院第二内科講師、03年北海道大学大学院内科学講座・第二内科助教授、07年同准教授となる。日本内科学会認定内科専門医・指導医・評議員、日本糖尿病学会専門医・研修指導医・評議員、日本内分泌学会内科専門医・指導医など。著書に『糖尿病外来診療ブラッシュアップ』(診断と治療社)など多数。

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