40代からは骨盤底トレーニングを 1日1回10分で尿もれを予防

出産経験のある女性は不具合が出る前から始めたい

骨盤底トレーニングの効果が期待できない人もいることに注意。高齢者は全身の健康管理から

40歳になったら骨盤底トレーニングを

 前回は、骨盤底は妊娠・出産によってダメージを受けやすいため、妊娠中から十分に養生し、分娩時に骨盤底を傷めないようにすることが大切であること、出産後は骨盤底の回復を待ってトレーニングを始めたいことなどを述べました。今回は、加齢によって骨盤底の緩みが出てくる40代以降のケアと、骨盤底の緩みにつながりやすい習慣やくせについて説明します。

 40~50代は、更年期の訪れとともに心身の衰えを感じる年代です。骨盤底はもともと、子宮や膀胱などの臓器を支えている微妙な部位。この年代には、腟とその周辺の緩みや排尿の勢いの低下、尿意切迫感など骨盤底に関係する問題も増えてきます。妊娠・出産時に被った骨盤底の「古傷」が元になり、尿もれ(尿失禁)や子宮下垂になる人が増えるのもこの年代です。

 そこで、とくに出産経験がある女性は、今はこれといった不具合はなくとも、40代を迎えたら1日1回10分間ほど、骨盤底というボディ・パーツを思い出しながら筋力トレーニングをしましょう。別に難しいことではなく、腰かけた姿勢や寝た姿勢で腟や肛門周辺の筋肉をまとめておへその方向へ引き上げる動作を10秒間ほど持続(このとき腹筋は使わない)、ゆっくり休んで筋肉を休ませてからまたくり返す、これを10分間ほど行えばいいのです。

 骨盤底の筋肉が健常な人については、40~50代に骨盤底トレーニングを続けることで骨盤底障害を減らせる、発症を遅らせられると考えられています。一方、神経の病気があって骨盤底を正しくすぼめられない、出産のときに骨盤底に大きな傷を負い筋肉の一部が欠損しているなどの場合には、骨盤底トレーニングの効果はあまり期待できないこともあります。

 骨盤底に痛みや不快感のある人が受診せずに自己判断で骨盤底トレーニングを続けることは、大いに問題があります。骨盤底トレーニングには痛みや不快感を治める効果がないばかりか、トレーニング中は骨盤底に意識を集中させるため、この部位の痛みや不快感をより強く感じるようになってしまうおそれがあります。

高齢者はトレーニング以前にメタボ対策や足腰の衰えを防ぐことが必要

 年をとると尿もれする人が増え、骨盤底の健康は高齢になればなるほど重要です。骨盤底トレーニングは高齢者にも有用ですが、身体機能全般で考えるとき、膀胱・尿道機能だけでなく足腰の力や骨粗しょう症防止を含めて対策を立てないとQOL(生活の質)の向上や日常生活範囲の拡大につながりません。

 骨格・筋肉がしっかりしていれば骨盤底障害はおこりにくく、また、まめに体を動かし全身の運動能力を維持している高齢者は、メタボリック症候群にもなりにくい傾向があります。メタボ対策や足腰の衰えを防ぐロハスな(環境や健康に意識の高い)生活などは、骨盤底障害とも密接な関係をもつテーマであるといえます。

 この年代では、糖尿病、変形性脊椎症などが増加し、これらよくある疾患から来る骨盤底や排尿のトラブルが増えます。生活習慣病などであれこれと投薬を受けている高齢者には、多重投薬による膀胱障害がみられます。

若いときから骨盤底を意識して健康管理を

 最後に、普段のちょっとしたくせや習慣が、骨盤底のゆるみにつながることもあるということを覚えておいてください。

 たとえば、排尿するときおなかに力を入れたり、尿が止まった後に尿をしぼり出そうとおなかに力を入れる人がいますが、これは腹圧で膀胱の出口をこじ開けていることになります。排尿の度にこんなことをくり返していると、将来、おなかに力が入ったときに尿がもれる「腹圧性尿失禁」を起こす原因になるので、お腹の力で尿を絞り出すことは絶対にやめましょう。
 また、便秘がちの人が毎日のようにトイレで長時間いきむのは、骨盤底が緩んで、年をとったとき肛門が下がってくる原因になります。スムーズに排便できるように、食事と生活を整えましょう。

 以上、骨盤底と排尿機能の健康を保つためには、不具合を自覚する以前の長い地道な健康管理が必要、ということがご理解いただけたものと思います。

【執筆】
中田 真木先生


三井記念病院産婦人科医長
1981年東京大学医学部卒業後、同大学産婦人科学教室入局。1991年フランス政府給費研究生(研修先はオテル・デュー・ド・パリ産婦人科)。東京警察病院産婦人科医幹を経て、2002年より現職。専門は骨盤底婦人科学。日本産婦人科学会、日本泌尿器科学会、排尿機能学会、日本更年期医学会、女性骨盤底医学会、骨盤外科機能温存研究会に所属。著書に『知って!貴女の骨盤底』(芳賀書店)など。

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