婦人科の診察ってどんなことするの? 性行為の経験を聞かれる理由

「なぜこんなことを?」と思われる質問にはこんな意味が

適切な診断と治療方法の選択には患者さんの正確な情報が必要。「問診」についての疑問にお答えします

どうしてこんなことを質問するの?

 婦人科の診察はほかの診療科と同じように、まずは「問診」から始まります。そして、必要な診察や検査を行って、治療法について患者さんと相談して、治療を行っていくことになります。「婦人科といえばとにかく“内診”が嫌だなぁ」と思っている方が多いかもしれません。内診もそうですが、「何をどう聞かれるのか」という不安感もあると思います。

 婦人科に診察を受けに行ったことのある方なら、「なぜ、こんなことまで答えなければいけないのか」と思いながら、看護師や医師からの質問に答えたことがあると思います。

 病院に行くきっかけとなった症状については、
 「その症状がどういうもので」
 「いつからどんな風に始まって」
 「どういう経過をたどったのか」
 「その症状について行った治療があれば、その効果はどうだったのか」
といったことを伺います。

 それ以外には、年齢、これまでの病気や手術、飲んでいる薬、お酒やタバコの量、職業、家族や血縁の方の病気についてもお尋ねします。ここまではほかの診療科と共通です。

 婦人科では、これらに加えて、「月経歴」、「妊娠歴」、「性交経験の有無」、「結婚歴や現在のパートナーの有無」などについてもお伺いしています。「なぜこんなことを?」と思われるでしょう。その疑問にお答えしましょう。

「月経歴」、「妊娠歴」などの情報はどう役立つのか

 「月経歴」とは、何歳から月経が始まったのか(初経、初潮)、月経は周期的に来ているのか、一番最近の月経(最終月経)はいつか、その前の月経はいつか、といったことをさします。

 たとえば、陰部のかゆみの症状で来院された場合に、この情報がどう役立つのか考えてみましょう。
 まず月経がある患者さんの場合は、妊娠の可能性がありますから、妊娠に関連したかゆみの可能性を考えなくてはなりません。また、お薬を処方する場合にも妊娠中であることを配慮した処方となります。また、生理用品かぶれなどの可能性もあります。

 閉経している方の場合は、女性ホルモン量の低下による皮膚の萎縮(いしゅく)の影響でかゆみが出ていることもあります。
 実際にかゆみの場所を拝見した上で、こういった情報が診断や治療をする上での参考になります。

 「妊娠歴」は、これまでの妊娠回数、出産回数とその時期、出産のときの異常や出生したお子さんの状態、流産や人工妊娠中絶手術、子宮外妊娠のことなどを伺います。

 たとえば、下腹部の痛みで来院された場合を考えてみましょう。流産したばかりの方や人工妊娠中絶手術を受けたばかりの方、出産後、日が浅い方の場合は、子宮の中や骨盤の中の感染症を考えなくてはなりませんし、子宮内に内容物が残っていることが原因で痛みが生じている場合もあります。

 出産のときに早く破水して実際に赤ちゃんが生まれるまで時間がかかったような場合や、お子さんが生後肺炎などを起こしたような場合には、母体にも感染の影響が出ていることがあります。

 また、子宮外妊娠を経験したことがある方は、経験のない方に比べて、子宮外妊娠をくり返す確率が高いことも知られていますので、より注意が必要となります。

「性交経験の有無」や「パートナーの有無」も知っておかなければならない情報

 「性交経験の有無」については、一番最近の性交時期をお伺いすることもあります。性交経験の有無や時期というのは、患者さんにとって答えにくい質問だと思います。しかし、婦人科医にとっては大変重要な、聞いておかなければならない質問です。

 まず、最近数カ月全く性交がなく、いつもと同じような月経が来ているのであれば、子宮外妊娠や胞状奇胎などの異常な妊娠の可能性はほぼ排除できるのです。性交経験が全くない方の場合は、妊娠に関連した疾患はないと考えていいでしょう。
 また、婦人科特有の診察方法である「内診」は、腟(ちつ)に専用の医療器具を挿入して行いますので、性交経験の全くない方にとっては診察自体が難しくなります。この場合は、別の方法で診察を行います。

 「結婚歴や現在のパートナーの有無」も重要です。性交に関連した感染症の場合、パートナーとともに治療しないと、それぞれがもっている病原菌をお互いにうつし合ってしまい、完治しません。

 このように、「なぜこんなことを?」と思われるような質問にもすべて意味があり、それが診断や治療方法の選択に大変参考になるのです。医療者が適切な治療法を選んでいくためには、婦人科を受診した方が医療者に正確な情報を伝えることが、重要な条件となります。

次回は「婦人科での診察はこのように行われます 2」では受診する際の服装やもって行くと役立つものなど紹介します。

(編集・制作 (株)法研)

【執筆】
福本 由美子先生


済生会奈良病院・松原徳洲会病院婦人科医
1986年奈良県立医科大学卒業。同大附属病院、東大阪市立総合病院、湘南鎌倉総合病院、松原徳洲会病院の産婦人科勤務を経て、大阪中央病院泌尿器科・ウロギネセンターで産婦人科医としての経験を生かし、女性泌尿器科診療に携わる。現在は済生会奈良病院・松原徳洲会病院で婦人科医として診療を行う。医学博士。日本産科婦人科学会認定専門医、日本内視鏡外科学会技術認定医、日本性科学会認定セックス・セラピストなど。共著に「女性泌尿器科外来へ行こう」(法研)、「30歳からのわがまま出産」(二見書房)など。

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