現代女性に増えている子宮内膜症

月経痛は病気のサインかも。我慢しないで早めに受診を

女性だけでなく社会全体がもっと子宮内膜症を知ることが大切。早期治療で症状と進行を抑えることができる

ライフスタイルの変化で高まる現代女性の子宮内膜症リスク

 子宮内膜症とは、本来子宮の内側にある子宮内膜のような組織がそれ以外の場所に発生し増殖する病気です。月経で厚くなった子宮内膜がはがれ落ちるとき、内膜組織の一部が卵管を逆流して腹膜や卵巣などに飛び散ることが原因と考えられています。月経に伴って子宮以外の場所で増殖をくり返しますが、子宮口のように組織が排出される出口がないため、その場にたまって炎症や痛みを起こし、周囲の組織との癒着(ゆちゃく)の原因にもなります。

 子宮内膜症は、通常命にかかわることはないものの、日常生活に支障をきたすような強い月経痛(月経困難症)をもたらし、不妊症の原因にもなり、まれにがん化も報告されています。同じ婦人科の病気で患者数も多い子宮筋腫よりも、QOLを著しく低下させることが問題となっています。

 そんな子宮内膜症の啓発と、すべての女性が産婦人科を受診しやすい環境づくりを目的に、2012年4月1日、日本子宮内膜症啓発会議(JECIE、実行委員長百枝幹雄先生:聖路加国際病院女性総合診療部部長)が設立され、5月22日にはJECIEの設立記者会見及び設立記念セミナーが東京丸の内で開催されました。
 設立記念セミナーで講演を行ったJECIE副実行委員長の甲賀かをり先生(東京大学医学部附属病院女性診療科・産科助教)は、「東京大学分院で産婦人科手術を受けた患者のうち、子宮内膜症が確認された割合は過去40年間で約30倍に増加しています」といい、ほかにも同じようなデータが多いことから子宮内膜症は近年急激に増えていると話します。

 子宮内膜症が増えている理由は、女性のライフスタイルの変化に伴う月経回数の増加にあると考えられています。約100年前の女性は、10代後半に初経を迎え、20代はじめから30代後半まで4回5回と妊娠・出産・授乳をくり返し、その後ほどなく閉経していたため、一生のうち月経を45回から50回程度しか経験しなかったといわれています。
 これに対して現代女性は、主に栄養状態の改善などの理由で、初経年齢は10代前半と早くなる一方、閉経年齢は51~52歳と遅くなっています。さらに晩婚化や出産回数の減少などにより、一生のうち450~500回の月経を経験するといわれます。月経回数は昔より9~10倍も多くなっているのです。
 甲賀先生は、「子宮内膜症は月経をくり返すことが原因で起こるため、現代女性は子宮内膜症のリスクが高くなっています」といいます。

月経痛で医療機関を受診した人の4人に1人以上が子宮内膜症と診断された

 子宮内膜症のできやすい場所は、腹膜(おなかのなかの小腸、大腸、肝臓などの臓器を包む膜)や卵巣、子宮と直腸との間のダグラス窩(か)などで、ほとんどは骨盤内にできますが、まれに肺や横隔膜などにできることもあります。

 主な症状は、月経痛と排便痛、性交痛、そして不妊症です。月経痛は、月経時に子宮の収縮を促す発痛物質プロスタグランジンの放出が子宮内膜症では増加することや、内膜症組織の炎症などにより生じます。排便痛は子宮と大腸の癒着があるときなどに、性交痛はダグラス窩に病変があるときなどに起こります。
 また、子宮内膜症が卵巣で増殖すれば卵子の質が低下し、卵管に癒着ができると排卵しても卵子が卵管にキャッチされず、子宮に運ばれないといった理由で不妊症の原因になります。

 子宮内膜症でなくても、月経痛はほとんどの女性が経験しています。インターネットによる月経痛に関するアンケート調査によると、月経痛の頻度は、「毎回」と「ほとんど毎回」ある人が半数を超え、時々あると答えた人を合計すると8割の女性が月経痛を経験していました。月経痛の程度に関しては、3人に1人が『ひどい』月経痛を経験していると答えています。
 一方「厚生科学研究報告書2000 1万人に対するアンケート」によると、月経痛で医療機関を受診し病気が発見された割合は、子宮内膜症が約27%、子宮筋腫約17%、卵巣のう腫約11%と続き、月経痛のある4人に1人以上が子宮内膜症と診断されたと回答しています。

 この2つの調査から、我が国で月経困難症に悩む女性は800~1000万人、子宮内膜症をもっている女性は200~400万人にも上ると推計されます。「多くの女性が月経痛で悩んでいますが、それは子宮内膜症が原因であるかもしれません」と甲賀先生はいいます。

早期治療で症状軽減や進行抑制が可能。月経痛は我慢しないで受診を

 月経のたびにくり返す痛みに対して、女性たちはどうしているのでしょうか。
 前述のweb調査では、「月経痛で医療機関を受診しているか」という質問に対し、「ひどい」月経痛でも受診者は少数でした。「痛いときに薬を飲むか」に対しても飲まない人が50%、市販薬を飲む人は41%で、医療機関を受診し処方薬を飲む人はごく少数でした。日本では、「月経痛があるのは当たり前だから」と、ひどい痛みを我慢して生活している人が多いようです。

 しかしこのことは、多くの人が月経痛の原因を明らかにしないまま適切な医療行為を受けるチャンスを逃がしていることを意味します。「月経痛を我慢している人が病院にかかれば、かなりの確率で子宮内膜症が見つかるはずです。診断の遅れは治療の遅れにつながり、発見されたときには進んだ状態、手遅れの状態になることもあるのです」と甲賀先生。

 子宮内膜症は月経のたびに進行していく病気です。個人差もありますが、進行するほど痛みは強くなり、臓器の癒着が進めば不妊症のリスクも高まります。卵巣内にできるチョコレート嚢胞はかなり進行するまで無症状ですが、大きくなると破裂の恐れがあり、40代を超えるとがん化するケースもみられます。適切な診断を受けて治療を行わないと、痛みの悪化や不妊症だけでなく、破裂やがん化といった危険な状態に陥る危険性があるのです。

 子宮内膜症の治療にはホルモン薬による薬物療法と手術療法があり、最近はホルモン薬の選択肢も増えています。低用量エストロゲンプロゲスチン配合薬(いわゆる『ピル』)などのホルモン薬の服用によって、子宮内膜症の増殖を抑えて症状を軽くするだけでなく、進行を抑えることも可能です。現在妊娠を希望しているかどうかで治療法は変わりますが、早期治療により痛みや不妊症、がん化などを予防することができるのです。

 そのためには、月経痛を放置しないで受診することが大切です。甲賀先生は、「女性だけでなく男性も、また親世代や教育関係者など社会全体が子宮内膜症のことをもっと知る必要があります。月経痛を病気のサインと捉え、痛みを我慢せず早めに受診することが必要です」と呼びかけました。

(編集・制作 (株)法研)


▼人間ドック各種検診はgooヘルスケアで
女性医師が診察してくれる婦人科検診コースを探す

【取材協力】
甲賀かをり先生


東京大学医学部附属病院女性診療科・産科助教
日本子宮内膜症啓発会議実行副委員長
1996年千葉大学医学部医学科卒。2003年東京大学医学部大学院医学系研究科生殖発達加齢医学修了。三井記念病院産婦人科、国立霞が浦病院産婦人科、武蔵野赤十字病院産婦人科を経て、2004年より現職、現在に至る。06年豪州プリンスヘンリー研究所・米国イエール大学留学。医学博士。日本産科婦人科学会専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医 。専門は子宮内膜症、不妊症治療、婦人科内視鏡手術。

コラムに関連する病名が検索できます。

その他のヘルシーウーマンコラム