仕事と育児の両立-働きながら子育てする女性を支援する制度

仕事と妊娠・出産を両立させるために

家族や職場の理解と協力を得て、制度も上手に活用。ふだんよりも体をいたわりながら乗り切ろう

働きながら子どもを育てるのは大変だがメリットも多い

 少子化が社会問題となり、女性が働きながら子どもを生み・育てられるような社会制度や職場環境が望まれ対策もとられていますが、まだまだ十分な職場ばかりではありません。そのため、働き続けるために子どもを産むことをためらう女性も多いようです。無事出産して仕事に復帰した場合も、仕事と育児の両立は肉体的・精神的にハードであるのは事実でしょう。

 それでも、働きながら子どもを育てることにはさまざまなメリットがあります。経済的なことはもちろんですが、仕事によって人間関係や視野が広がり、自分を認めてもらえるなど充実感が得られ、パートナーやその他の家族と助け合って家事・育児をするようになれば家族の絆も深まります。子どもがいることで仕事の励みになるという人も多いでしょう。

 働きながら妊娠・出産・育児をするために、家族の協力は不可欠です。出産したが協力が得られず母親だけが大変な思いをするということがないように、家事や育児の分担などについて、前もってよく話し合っておくことです。

 さらに、働く女性を支援するさまざまな制度がありますが、これを上手に活用するには制度の内容をよく知っておく必要があります。そして、妊娠がわかったら早めに職場に報告して働き続ける意思があることを伝え、理解と協力が得られるように働きかけることも大切です。

妊娠中の働く女性を支援する制度がある

 働く女性が安心して妊娠・出産・育児をするために、「労働基準法」、「男女雇用機会均等法」、「育児・介護休業法」などの法律によって、次のような制度が整備されています。

●産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)と産後8週間(一定の場合6週間)の休業を取得できる
●子どもが1歳(一定の場合1歳6カ月)に達するまで、父親、母親のいずれでも育児休業を取得できる(交代でとることもできる)
●妊娠・出産や、産前産後休業の取得を理由とする解雇など不利益な取り扱いは禁止
●産前産後の健康診査や保健指導を受けるために必要な時間を確保できる
●主治医の指導を受けた場合、混雑した電車を避ける時差出勤、休憩時間の延長、つわりや切迫流産など症状に応じ勤務時間の短縮や休業ができる
(医師の指導を明確に職場に伝えるための「母性健康管理指導事項連絡カード」の活用がすすめられる)
●重いものを扱ったり危険な環境での業務など作業の負担が大きいときは、ほかの軽い業務に替ることができる
●時間外労働、休日労働、深夜労働などが免除される

 これらは、正社員、パートなどの雇用形態に関係なく、すべての女性が対象となります。職場ごとの規定や就業規則によって運用には差がありますので、どんなサポートが受けられるのか、休業取得などのための請求方法などについて、前もって確認しておくことが大切です。たとえば、勤務時間の短縮や休業、休暇などの扱いが有給か無給かなどは会社によって異なります。

 産前産後の休暇を申し入れたら退職をすすめられたなど、困ったときには各都道府県労働局雇用均等室に相談するとよいでしょう。

がんばりすぎず、体をいたわって

 妊娠・出産は体に大きな負担をかけるため、ふだんよりも体をいたわる必要があります。過労とストレスには十分注意して、妊娠前と同じように働こうとがんばりすぎないことです。疲れたりおなかが張ったら休憩をとって、体調によっては休むことも必要です。忙しくても定期健診は必ず受け、妊娠の経過や体の状態に応じた指示を守るようにするほか、次のようなことに気をつけましょう。

混雑した電車・バスは避ける
 通勤は時差出勤や混雑の少ない経路への変更がすすめられる。自転車やバイクはバランスがとりにくく危険なので避ける。

仕事中は同じ姿勢と冷えに注意
 長時間同じ姿勢でいると、血液循環が悪くなって腰痛などの原因に。ときどきストレッチをしたり歩いたりして体を動かそう。休憩時間は足を高くして休んだり、軽い散歩で体をリラックスさせて。長時間の立ち仕事はおなかが張ったり激しく疲労するので避けること。体を冷やさないように、冷房は直接当たらないようにして、カーディガンやひざかけ、レッグウォーマーなどで対策を。

食事は栄養バランスに気をつける
   塩分を控え、たんぱく質、ビタミン・ミネラルを不足させない。妊娠中の太りすぎは妊娠中毒症や難産の原因になるので食べすぎに注意。貧血予防に鉄分を含む食品をとり、便秘予防に食物繊維と水分を十分に。

嗜好品に注意
 タバコは血管を収縮させ、胎児に酸素や栄養が届きにくくなるのできっぱりやめる。アルコールも妊娠中と授乳中は控えよう。カフェインの多いコーヒー、紅茶などは1日1~2杯にとどめ、番茶や麦茶などを。

適度に運動する
 安静を指示されていなければ、ストレス対策、太りすぎ防止にぜひ適度の運動を。ウオーキングやスイミングがおすすめ。

(編集・制作 (株)法研)

【監修】
荒木 葉子先生


内科専門医・産業医・労働衛生コンサルタント
東京医科歯科大学大学院
疾患生命科学研究部女性研究者支援室特任教授
慶應義塾大学医学部卒業後、内科・血液内科専攻。カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学。報知新聞社産業医、NTT東日本東京健康管理センタ所長を経て、現在荒木労働衛生コンサルタント事務所所長。企業の労働衛生と半蔵門病院で内科診療を行う。主な著書に『臨床医が知っておきたい女性の診かたのエッセンス』(医学書院)、『働く女性たちのウェルネスブック』(慶應義塾大学出版会)など。

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