猫かわいがりは危険! ペットからの感染症

感染に気づかず治療が遅れると死に至ることも

人獣共通感染症が増えている! かわいいペットと自分の健康を守るために、正しい知識をもって

身近なペットからの感染症が増えている

 イヌやネコなどのペットを飼う人が増えています。ペットがそばにいるだけで心がなごみ血圧も下がるなど、動物との触れ合いは心にも体にもとてもいい影響が。でも、かわいいからといってキスしたり一緒に寝たり…、これはちょっと危険ですよ!

 「人獣共通感染症」とは難しいことばですが、最近マスコミなどでさかんに取り上げられているため、ご存知の方も多いでしょう。「動物由来感染症」、「ズーノーシス」ともいわれる、動物から人間にうつる病気のこと。なかでも、身近なペットからの感染症が増えています。ペットを室内で飼うことが多くなって互いに接触する機会が増えたこと、住宅の気密性が高くなって病原菌が繁殖しやすくなったこと、ペットを家族のように扱い濃厚な接触をする人が増えたことも原因と考えられています。

 しかし、ペットから病気がうつるなんてと、いたずらに怖がることはありません。どのような病気があって、どうすれば防げるのかを知って予防し、かかってしまったら早めに治療すれば、ほとんどの場合軽症ですみます。ペットとこころおきなく触れ合えるように、人獣共通感染症について十分な知識を身につけておきましょう。

こんなにある、人獣共通感染症

 人獣共通感染症は世界で300種類近くもありますが、日本でみられるのは100種類ほどです。その中で、気になる身近なペットを感染源とする主な病気を紹介しましょう。

パスツレラ症
 イヌやネコにかまれたり、ひっかかれたり、なめられて感染する。イヌの75%、ネコの100%近くが口の中に病原体を持っているため、飼い主が最も注意しなければいけない病気。傷の周りが赤く腫れて激しく痛む。鼻や口から感染し、せきなどかぜに似た症状が出て、副鼻腔炎や気管支炎になることもある。重症になると肺炎や髄膜炎を起こし死亡した例も。治療は抗生物質が効くので普通は1週間ほどで治る。

ネコひっかき病
 ネコやイヌにかまれたり、ひっかかれたり、ときにはなめられて感染する。ひっかかれた部分の皮膚が赤く腫れ、その近くのリンパ節が腫れて痛む。微熱、全身の倦怠感などが現れる。通常は2-3週間で治るが、重症になると脳症をひき起こすことも。

オウム病
 オウム、インコなどの鳥の羽毛や乾燥したフンなどを吸い込んだり、口移しでエサを与えたりして感染する。インフルエンザに似た症状が特徴で、1~3週間の潜伏期間の後突然、高熱(39℃以上)、せき、全身の倦怠感、頭痛や筋肉痛がみられる。重症になると血痰(けったん)や呼吸困難感(チアノーゼ)を起こしたり、髄膜炎を起こして死亡することも。初期のうちなら抗生物質で治るケースがほとんど。

イヌ・ネコ回虫症
 イヌやネコのフンに含まれる虫卵を口に入れることで感染する。「公園の砂場が危ない」と話題になった感染症。人の体内に入った回虫が体内を移動して内臓や目に入ることでさまざまな障害をひき起こす。子どもに多くみられ、内臓に入ると発熱、ぜんそく、肺炎など、目に入ると視力障害や視野障害が起こる。

トキソプラズマ症
 ネコのフンから感染。加熱が不十分な豚肉から感染することも。抗体をもたない妊婦が初めて感染すると、まれに胎児に影響する。胎児が感染した場合、死産や流産を招いたり、神経・運動障害をひき起こすことも。

サルモネラ症
 イヌやネコ、ミドリガメ、爬虫(はちゅう)類、鳥、ハムスター、ウサギ、サルなどの排泄物で汚染された水から感染する。激しい下痢や腹痛などの症状がでる。

皮膚糸状菌症(真菌症)
 白癬などともいい、皮膚病(糸状菌症)にかかっているイヌやネコ、ハムスターなどと接触することで感染し、発疹、かゆみ、化膿などを起こす。通常は抗真菌薬を塗ればよくなる。ペットの治療によって感染源をなくすことが重要なので、獣医師に相談する。

感染を防ぐには過剰なスキンシップを避けること

 人獣共通感染症は、ペットの病気に気づかずに感染してしまうことがほとんどです。そのため、早めに治療すれば軽症ですむものが、長引いたり重症化してしまうことも。とくに赤ちゃんや高齢者、糖尿病などの病気で抵抗力が低下している人は注意が必要です。
 傷口やリンパ節が腫れる、かぜのような症状がつづく、皮膚の異常などの症状がみられたら受診し、医師にペットを飼っていることを伝えましょう。また、以下の基本的な注意事項を十分に理解しておきましょう。

●ペットに触ったり砂遊びをした後や、フンを処理をした後は必ず石けんで手を洗う
●ペットに食べ物を自分のはしで食べさせたり、口移ししない
●ペットと人の食器を一緒に洗わない
●ペットとキスしたり、過剰な口なめはさせない
●ペットと同じふとんで寝ない。一緒にお風呂に入らない
●ネコやイヌの爪は短く切っておく
●食事中は鳥を室内に放さない
●ペットの体や飼育小屋は常に清潔に保ち、フンの始末はこまめに行う。鳥かごの掃除はマスクで鼻までおおって
●定期的に動物病院で検診を受ける
●野生動物は飼育しない

(「ジャストヘルス」法研より)

【監修】
神山恒夫氏


国立感染症研究所獣医科学部 第一室長
1946年北海道生まれ。1969年北海道大学獣医学部卒業。卒業と同時に国立予防衛生研究所(現・国立感染症研究所)に就職。現職・獣医科学部第一室長。獣医学博士。専門は原虫感染の免疫学、人獣共通感染症とその周辺。趣味はイヌに引かれての散歩、漬け物作り。定年後は晴耕雨読の生活を夢見る。晴耕は自給自足型総合家内農業を目指し、雨読は人獣共通感染症とその周辺分野の英文書籍の翻訳も行う。

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