アレルギー性鼻炎は気管支ぜん息の危険因子? 早期治療が肝心

アレルギー性鼻炎は気管支ぜん息の発症リスクを高める

アレルギー性鼻炎を治療すると、ぜん息発作の予防になり、ぜん息を併発している場合は症状が改善される

気管支喘息の患者さんの多くは、アレルギー性鼻炎を併発

 世界各地でアレルギー性鼻炎の患者さんが増加しています。青年層の50%以上に症状がみられる国もあります。アレルギー性鼻炎はしぐさや学習にさまざまな障害を引きおこし、睡眠などにも影響を及ぼします。さらに、経済的な損失も、決して低くはありません。

 欧米では、科学的な根拠に基づいた診断・治療の指標の作成が進められてきましたが、昨年、その改訂最新版である『ARIA2008』という国際的なガイドラインともいうべき解説書が発表されました。これを受けてわが国でも先般、その日本語版として『喘息と鼻炎の国際ガイドライン2008年版』が発表されています。
 このガイドラインでは、とくにアレルギー性鼻炎について注目すべき点を取り上げています。アレルギー性鼻炎の有病率が世界的に高いこと、QOL(生活の質)への影響が大きいことは前述したとおりですが、とくに気管支ぜん息との関連性が高いことが指摘されています。

 アレルギー性鼻炎が副鼻腔炎(ふくびくうえん)や結膜炎などを合併しやすいことは、以前から知られていますが、このガイドラインでは、アレルギー性鼻炎が気管支ぜん息を引きおこす危険因子であることを明記しており、アレルギー性鼻炎または気管支ぜん息の診断・治療は、両者の関連性を意識したうえで行うことが重要であるとしています。

 気管支ぜん息は、繰り返しおこる咳、呼吸困難、喘鳴(ぜんめい)を特徴とし、重症の場合には呼吸困難で死に結びつくこともあります。一方、アレルギー性鼻炎では、くしゃみ、鼻水、鼻づまりが主な症状で、結膜炎など眼の疾患も合併しやすいことが知られています。

アレルギー性鼻炎の治療が気管支ぜん息予防に

 呼吸の通る道である鼻から気管支、そして肺につながる通路(気道)は、互いに関連を有し作用し合っていることが知られています。鼻粘膜と気管支粘膜にも似た点があります。気管支ぜん息の患者さんは高率にアレルギー性鼻炎を合併することから、また、アレルギー性鼻炎の患者さんでも気管支ぜん息のある人は10~40%あることから、『ARIA2008』では強く関連した疾患として「one airway, one disease」と表現し、両者を関連づけて診断・治療するようにすすめています。

   一方、合併していない場合でもアレルギー性鼻炎を発症していることは、将来の気管支ぜん息の発症のリスクを高めることが指摘されており、アレルギー性鼻炎を治療すれば、気管支ぜん息を予防できる可能性もあります。また、すでに気管支ぜん息を併発している場合にも、アレルギー性鼻炎を治療すれば、気管支ぜん息の症状も多くの場合には改善することが示されています。

アレルギー性鼻炎は、小児期にきちんと治療しておくことが重要

 小児のアレルギー性鼻炎は、成人型気管支ぜん息へ移行しやすいので、小児期のうちにきちんと治療しておくことが大切です。
 千葉大学医学部附属病院で、小児のアレルギー性鼻炎(花粉症など季節性のものではなく、通年性の鼻炎)の患者さんを対象に調べた結果があります。

 患者さんの数が増加し続けるアレルギー性鼻炎ですが、15年以上の長期経過を追っても自然改善は少なく、とくに小児ではほとんど認められず、多くの小児は改善がないまま成人になっています。また、小児のアレルギー性鼻炎はぜん息の合併も多いためきちんとした治療が必要です。

 治療手段としては、さまざまな開発の取り組みが行われているワクチンや抗体療法などもありますが、実際の有効性が確認されて広く使用可能となるまでには、最低でも10年は必要です。

 現状での対応としては、抗原回避、抗原特異的免疫療法(減感作療法)、薬物療法があります。薬物治療は広く行われていますが、さまざまな特徴をもった薬剤が登場しており、症状に合わせて投与することで、副作用を減らし有効な治療ができることが明らかになっています。また、抗原特異的免疫療法は、根本治療になる可能性、治療終了後も長期にわたって効果が持続するといった大きな利点があります。

 お子さんのくしゃみ、鼻水、鼻づまりが続いたら、かぜだと思って放置せず、アレルギー性鼻炎を疑って一度耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。

(編集・制作 (株)法研)

【取材協力】
岡本 美孝先生


千葉大学大学院医学研究院 耳鼻咽喉科・頭頸部腫瘍学教授
1984年秋田大学大学院修了。1985年米国ニューヨーク州立大学バッファロー校留学。その後秋田大学医学部耳鼻咽喉科講師、山梨医科大学耳鼻咽喉科教授を経て、2002年より現職。日本鼻科学会理事、日本アレルギー学会監事などを務める。

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